それってアリですか?



 そしてあっという間に体育祭当日。

 例年通り妙に盛り上がる我が中学校の体育祭。


 開催日が日曜日ということもあり近所の中学校の生徒や卒業生、保護者等かなりの賑わいを見せている。


 今年の私は担任のクラスがないのでほかの先生方のサポートに回っているんだけど……

 ロクくん達が来ていると思うんだけど、どこにいるんだろう?

 ロクくんとすっかりお馴染みになった田中&檜山コンビとそれぞれの彼女も来ているはず。


 はあ……あの会長さんも来てるんだよね。


 ……いやいや、普段はあ〜じゃないって言ってたし多分大丈夫なはず、多分。


 教員用のテントから辺りを見渡してみるけどそれらしい人影は見当たらない。

 開会式が終わりプログラムが始まる時間になり一年生の演技がスタートする。


 流石に朝一番のこの時間からは来ないんだろうか?

 お昼からかなぁと思い私も先生方の手伝いをするためにテントを後にする。


 午前中の演技もあらかた終わり午前最後は観覧者さんの飛び入り100m走なんだけど……


 えっと……あれは……


 100m走の発走地点にはロクくんと田中君、会長さんと……某熊本県のゆるキャラが……


「な、何故くま◯んが?」

 私の動揺を他所に観客の皆さんも生徒も大盛り上がり。

 く◯もんも手を振りそれに応えているし、その隣ではロクくんと田中君が天を仰いでいる。


 そうこうしていると係の先生がスタート位置につき100m走が始まる。


 最初に飛び出したのは如何にも陸上部って感じの男の子、続いてまさかの生徒会長に田中君とくまも◯、ロクくんはあまり走る気がないようでほぼ駆け足だ。


 残り50mで先頭にスーツ姿のおじさんと生徒会長、そしてくまも◯が並んで最期の直線へ。


 ってなんで着ぐるみなのに速いのよっ!


 ラストスパート!


 おじさん、生徒会長にく◯もんが並んだところでゴール!

 田中君とロクくんはのんびりと歩いて今ゴールしたところ。


 場内大歓声の中……勝ったのは……まさかのくま◯ん!

 あ、くま◯んがウイニングランを……


 ……予想だけどアレの中の人ってきっと田中君の彼女さんだよね?



「あはは、どうでしたか?先生」

 100m走が終わった後ロクくん達が教員用のテントにやってきた。

「相川さん、こんにちは」「こんにちは」

「先日ぶりですね、相川先生。ご機嫌よう」

 生徒会長さんは今日は普通みたいで、しっかりと檜山君と手を繋いでいる。

 透き通るような白い肌とスラリとした脚をショートパンツから惜しげもなく見せつけている。


 ……べ、別に悔しくないからね。

 ほ、ホントだよ、うん。


「みんな、こんにちは」

「楽しんでもらえましたかな?」

「ええ、それはもうすごく。えっと……中の人?」

「あ、すみません。よっ、ほっ、はっ」

 えいっと気合いを入れた可愛い声を上げて、すぽんと頭を外した中から出てきたのは……ショートカットの女の子だった。


「はじめまして、私、仁科 七瀬と言います。こっちの田中君の彼女をさせて頂いています」

「あ、これはご丁寧に。相川 杏香です。ロクくんがいつもお世話になっております」

 ロクくんが残念な人って言っていたけど、至って普通だと……思うんだけど。


「七瀬が着ぐるみで来るってきかないものだから遅くなりまして」

「え〜だってせっかくの体育祭だよ?目立たないと!」

「あなたが目立つ必要はなくってよ」

「ふん、会長も目立ちたいくせに!そんな露出多目の恰好で」

「わ、私は海斗が喜ぶから……ね、ねえ?」

「お、おう」

 デレる会長にイチャつく彼氏、我関せずな人に着ぐるみの彼女……大丈夫なのかな?この学校は。


「先生はずっとここにいるんですか?」

「う〜ん、一応は他の先生方の手伝いをしないといけないからちょっと出歩けないかな」

「そうですか……昼からの自由参加もまた出ると思いますから見てて下さいね。主にあいつらを」

「ふふっ楽しみだね」

 じゃあまた、と言って仲良く去っていくロクくん達。

 あ〜あ、いいなぁ、私も着いていっちゃおうかな。


 と思っていると、ロクくんが何かを思い出したようにこちらへ駆け戻ってくる。


「あれ?ロクくん忘れもの?」

「はい、ちょっと」


 …………!!


 周りからは見えない様にロクくんはサッと……唇にキスをしてポンポンと頭を撫でて笑い、それじゃあまたと走っていった。


 ……くう〜っ!私の彼氏さんはどこまで最高なんだよぅ!

 これだけ大勢の前でそれはいくらなんでも……ドキドキが止まらなくなるじゃないかっ!


 パイプ椅子に腰掛けて赤くなっているであろう顔を伏せて余韻に浸る私だった。









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