またやっちゃいましたけど大丈夫ですか?



 そしてやって来ました、予選一回戦。


 100人それぞれ4人づつ、25チームに分かれて広大なマップ上で戦うこのゲーム。

 世界大会とかもある私でも知っている超有名なゲームだ。

 ロクくんに説明されたヘッドギアをつけてみると……

「おおっ!す、すごいっ!」

 そこはまさに異世界、見渡す限りの草原に山や森があり辺りには参加者と思われるプレイヤーが大勢いる。


「先生、どうですか?具合は?」

 声を掛けられて見てみれば多分ロクくんだと思うプレイヤーが。

「ロクくんだよね?」

「はい、そうです」

 いつものロクくんではなくゲームの中でのロクくん。

 綺麗な銀髪だけど顔立ちは大体ロクくんに似通っていてサングラスをかけている。


 おおっ!ゲームの中でもイケメンだぁ!

「ロクくん……カッコいい……」

「そうですか?先生も……まぁその、可愛いですよ」

 えへへ〜褒められちゃった。

「ちょっと盛りすぎな感がありますけど」

「ん?何か言った?」

「いえ、何にも」


「よし、じゃあやるか!」

「「おぅっ!」」

「う、うん」


 こうして大会予選が始まったんだけど……


 結果的にはロクくん達の圧勝だった。

 一回戦から順当に勝ち上がっていき準決勝で少しだかけ苦戦したけど決勝も危なげなくあっさりと勝ってしまった。


 なんだけど……



「おいっ聞いたか?あの世界ランクのチームの新人の話」

「ああ、聞いた聞いた」

「噂じゃ秘密兵器らしいぞ、予選じゃ一回も戦わなかったそうだぜ」

「予選程度じゃまだまだ出る必要がないってことなのか?」

「そりゃそうだろ?他の3人が世界ランク1位とトップテンが2人だぜ、聞いたところによると余裕で世界ランクに入れるくらいらしいぞ」

「マジかよ……よくそんなヤツが今まで無名だったな」

「だから秘密兵器なんじゃないのか?」

「もしかして団体戦に特化してるのかも……」

「何にせよ要チェックだな……」

「きっとあの妙な動きにも意味があるはず」

(本当はわたわたしてただけ)

「あの戦場のど真ん中で微動だにしないのも気になるよな」

(どうしていいかわからずにフリーズしただけ)


 いやいや、皆さん何をおっしゃっているのかさっぱりわからないんですけど?

 世界ランク?はあ?何それ?


 ちょっとロクくんっ!笑ってないで何とかしてよっ!


 ああっほらまたスクリーンに映っちゃうし!


 え?手を振ってください?

 こ、こう?


「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 ひゃっ!またこのパターン?

 前回同様に場内からの大歓声が。


 ロクくん達3人はお腹をかかえて爆笑しているし……あっ!よく見たらカメラの人って大阪の時の人だしっ!

 もう!どうにかしてよ〜ロクく〜ん!



「いやぁ笑わせてもらいました」

「相川さんてあ〜いうキャラだったんですね、以外でした」

「人は見かけによらないって言うからね」

「田中君も檜山君も先生はいつもあんな感じだから」

「あのね、ロクくん?要らないことは言わなくていいから」

「それにしても案外楽な大会でしたね」

「そうだな、これで優勝したら賞金が出るって美味しいよな」

「まぁ今回はスポンサーが大企業でしたし中継やネットテレビが入ってたから増額したらしいですよ」

「とりあえずは決勝トーナメントで優勝してからだね」

「そう言えば民放でも放送されるんでしたか?」

「え?そうなの?」

「はい、先生、改めて全国的に有名になりますね。手なんか振っちゃってましたし」


 しまった……つい調子に乗ってしまった。

 民放とかありえないでしょ?


「ま、とりあえずはまた夏の大会まで時間もあることだし楽しみに待つことにしますか」

「ああ、そうだな。それまでに秘密兵器さんを特訓しといてくるよな、ロク」


 え〜っと、それは夏の大会とやらにも私が出ることが決定なのね?


 拒否権は……ない?のね。


 ええ、わかりましたよ、わかりましたとも。

 こうなったら開き直ってやったろうじゃありませんか!


「先生が妙にヤル気になったことですし帰りますか」


 こうしてあっという間の1日が終わった。

 因みにお弁当は休み時間に食べたんだけど大会が終わってからお腹が空いたという田中君に連れられて行った食堂は確かな微妙な味だったことを付け加えておく。


 次回もお弁当は必須だ。




「お疲れ様でした、先生」

「疲れたよ〜ロクくん〜」

 2人が帰った後一緒にお風呂に入り湯船の中でロクくんにしな垂れかかり成分を補給する私。

 ゲームの中のロクくんもカッコ良かったけどやっぱり生のロクくんが一番だね。


 うん、ナマね。


「ふうぅっ、生き返るね〜」

「結構はしゃいでいましたからね、先生は」

「そ、そうかな?そうでもないと思うけど」

「そうですか?ノリノリでカメラに向かっていたと思いますが」

「……気のせいです」


 だってカメラ向けられたらちょっとテンション上がるじゃない?

 普段そんな経験ないんだから楽しくなっちゃうし……ああっ、でも民放は不味かったかなぁ?学校の方にバレたら何て言われるか……


「民放はカットしてもらう様に話をしておきましたから大丈夫ですよ。ネットは知りませんけどね」

「……ネットはそのままな訳ね」

「カメラマンさんがヤル気だったので放っておきましたけど」


 ああ、あのカメラマンさんね。あの人のお陰でやたらとスクリーンに映されたんだけど、完全に楽しんでたわよね?あのカメラマン。



「でも楽しかったでしょ?」

「うん、確かに楽しかった……かな」

 お風呂から上がって部屋で寛いでいるとロクくんが思い出したように聞いてきた。

 実際結構楽しかったしなかなか出来ない体験をさせてもらったと思う。

「次は夏休みですからちょっとはゆっくりと出来ると思いますよ」

「夏休みかぁ……ってロクくん受験生だよね!?」

「それはそれ、これはこれですから大丈夫です」


 ロクくんのことだから大丈夫だとは思うけど遊びすぎて失敗しないでよね?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る