予感が当たりませんか?
そして翌日。
当然のことならが寝坊した私はせっせとお弁当作りに勤しんでいた。
普段ならエッチィ下着にエプロンなのだが流石に今日はロクくんの友達も来るので普通に服を着ている。
せっかく新作下着が鞄の中で出番を待っているのにもかかわらず……だ。
今日の夜はちゃんと出番を用意してあげるからね、と心に誓いせっせと料理をする私。
そしてロクくんはといえば、テレビの前に座り最終チェックに余念がない。
私が起きた時にはもう世界に入り込んでいたからきっと昨日の夜中からしているんじゃないだろうか。
小一時間ほどでお弁当を作り終えた私はロクくんの隣にちょこんと座って画面を眺めていた。
ロクくんはヘッドギアをつけて腕を組んで座ったまま。
VRゲーム?だっけ、まるでその場にいるかのような臨場感が楽しめるらしくここ数年で急成長を遂げたゲームらしい。よくわからないけど。
しばらく眺めいると徐にロクくんがヘッドギアを外して肩をコキコキ鳴らして一息つく。
「えっと、お疲れ様?」
「あ、先生おはようございます。もうそんな時間でしたか」
「おはよ、ロクくん。もうお弁当も作って準備おっけーだよ」
テーブルに置かれたお弁当を見てロクくんは珍しく嬉しそうな顔をして頭を撫でてくれる。
「会場の食堂は……何と言いますか、ちょっと美味しくないんですよ」
「あはは、だからお弁当なんだね」
「はい、田中君も檜山君もきっと大喜びですね」
「2人は彼女はいないの?」
「いえ、2人共いますけど……まぁ何と言うか……残念な人たちでして」
その辺りは後で本人に聞いてくださいとロクくんは苦笑い。
そもそも本来なら大会には田中君の彼女さんが出るはずだったらしいんだけど都合が悪くなったらしい。
檜山君の彼女さんも同様だそうだ。
「ど素人の私でいいのかな?」
「はい、大丈夫ですよ。先生はいてくれるだけで充分です」
「戦力外だものね」
「ん?違いますよ、抑止力です、抑止力」
「抑止力?」
「はい、僕達3人はちょっと有名ですし田中君と檜山君の彼女もそれなりに名前が売れてますけど先生は初参加じゃないですか」
「うん、で何で抑止力なの?」
「そんな僕達3人のところに見たことない先生が入ったら周りは絶対に警戒すると思うんですよ。何かあるんじゃないかって」
ああ、なるほどね。周りが勝手に勘違いして警戒するからロクくん達はやりやすくなるわけだ。
「かなり出来る奴なんじゃないかってね」
「それって狙われたりしないの?」
「その辺りは僕達で考えてますから先生は……そうですねぇ、あたふたしててくれればいいです」
あたふたって何?
「つまりいつも通りでいいってことですよ」
「そんなにいっつもあたふたしてないもん」
よしよし撫でてくれるロクくんの意味ありげな笑いがちょっとイヤですぅ。
ふてくされた私にロクくんがヘッドギアを渡してとりあえずキャラクターを作って下さいって言う。
えっとこれ被るの?
よいしょっと。
わっ!何か言ってる、えっと……ふむふむ、なるほど。
へぇ〜考えただけで大まかなところは出来るんだ?
よしっじゃあ……これをこんな感じで……あ、もうちょっとあるほうがいいかな?
……ちょっと盛りすぎたかしら?
いやいや、ゲームの中だし別にいいよね、ちょっとこうグラマラスな感じで……
「どうです?出来ましたか?」
「う〜ん、ちょっと待ってね、中々上手くいかなくて」
作成すること30分。ようやくゲーム内での私の分身が完成した。
「うん、出来たよ。でこれをどうするの?」
「後は僕の方でしますから、お楽しみにです」
「……何か嫌な予感しかしないんだけど」
「ははは、気のせいです、気のせい」
そうこうしていると玄関のチャイムが鳴り2人が来たみたい。
「はいは〜い」
「おはようございます、今日は宜しくお願いします」
「あ、おはようです、もしかして昨日からお泊りですか?」
「おはよ、うん。昨日から来てるよ」
「くそぅ、ロクだけイチャイチャしやがって」
「まあまあ、田中だって人のこと言えないだろ?」
朝から賑やかな2人をとりあえず部屋に入ってもらい準備をする。
お弁当をみて檜山君が私を拝んだり洗面所に置いていた下着をみた田中君が発狂したりとバタバタしつつも予定の時間には出発出来た。
道中、2人の彼女さんについて聞いてみたところ田中君の彼女さんは年上の大学生だそうで檜山君の彼女さんはなんと学校の生徒会長なんだって。
生徒会長と副会長のカップルって何のドラマだよって思ったのは私だけじゃないはずだ。
2人きりの生徒会室であんなことやこんなことを……ムフフな感じなんだろうなぁ。
でも残念な人って言ってたけど何が残念なんだろ?
そんな話に花を咲かせつつ車で1時間、今日の大会の開催地である某ドームに到着する。
「ここでするんだ……」
「はい、結構人数が集まるから今回からこのドームでするらしいです」
到着してみると確かに駐車場はほぼ満車だしドーム内もとんでもない人だった。
プレイヤー以外にも見に来ている人や例によってネットテレビも来ているらしく……
「また写るの?」
「多分」
「はぁ……でも前みたいなことはないよね?今回は参加してるわけだし」
「さて、どうでしょうか?ま、気楽にいきましょう」
「そうそう、相川さんは可愛いですからテレビ映えすると思いますし」
中央にあつらえられたステージではすでに予選が始まっていて巨大なスクリーンにはその様子が映し出され場内から歓声が上がっている。
また、あのデカイスクリーンだよ……
いやな予感しかしないって、ホント。
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