ついて行ってもいいんですか?
「ロクくんってあれから中学校の同級生とは会ったりしてるの?」
「いいえ、会ってませんね。あ、学校が同じ人とは会いますけど、どうかしました?」
「え、ううん、ほらロクくんってテレビ中継とか写ってたじゃない?みんな知ってるのかなって思って」
「先生もですからね、それ」
「……あ、そうだった」
季節が冬から春になろうというある日曜日。
ロクくんと一緒にモーニングに出かけていて私はふと思い出し聞いてみた。
「ゲームをしてる人だったら知ってるかもしれませんが、あまり気がつかないんじゃないですか」
「ああ、中学校の時のロクくんって目立たない感じだったものね」
「確かそうですね、今もさほど変わってませんよ」
そうかな?正直言って背も高くてシュッとしててイケメンだし……意外とモテるような気がするんだけど。
「結構モテると思うんだけどなぁ」
「そこは否定しませんが、それなりですよ」
「モテるんだっ!」
「心配しなくても全部断ってますから」
あ、当たり前ですよね?断ってますよね?ね?
「先生と違ってふらふらしたりしませんから」
「うぐっ……古傷を抉るような……」
「塩塗ってあげましょうか?」
「ごめんなさいっ!もうしませんからっ!」
満面の笑みで言われると堪えますから、許してください、忘れてください。
「中学校の同級生が私とロクくんが付き合ってるって知ったらびっくりするでしょうね」
「それはそうでしょう、夏田君や島津君あたりはがっかりするでしょうね」
「なんで?」
「あれ、2人共先生のことが好きでしたから。知らなかったんですか?」
夏田君?島津君?
……知らん。
「もしかして先生、顔すら覚えてないでしょう?」
「は?そ、そんなことないさ〜」
「……こないだの同窓会に参加してなかったから仕方ないですけど」
「へ〜ふ〜ん」
「先生って結構人気あったんですよ、気づいてなかったんですか?」
「そ、そうなんだ?うん、全然知らないや」
ロクくんが言うには生徒の中で教師の人気投票みたいなのがあって私は上位の常連だったらしい。
知らなかった……そんなのがあったんだ……というか今もあるんじゃないの?それって。
「あると思いますよ、僕達だって先輩から教えてもらいましたし卒業するときには後輩に伝えましたから」
「知らないところで色々あるんだね……中学校、こわっ!」
でも人気があるって聞いたらちょっとは気分がいいものだよね。
まぁ30超えてる今はどうかわからないし、ロクくんがいればそれでいいからどっちでもかまわないんだけど。
「あ、そういえばロクくん、こないだのテストはどうだったの?」
「ぼちぼちでしたよ、ええ、ホントにお陰様で」
ジト目で言われると少し、ほんのすこ〜し罪悪感的なものが湧いてきたりするじゃない。
思いのほか良かったらしく一応ロクくんが受けようと思ってる大学の合格ラインには達しているみたい。
因みにその大学ってどこ?って聞いたらちょっと逆立ちしても無理そうな名前が返ってきた。
ぼちぼちどころか、めっちゃ頭いいです。
え?ってことは大学に行くとなると私はどうなるんだろ?通える距離じゃないし……遠距離恋愛になるのかな?
「あの〜ロクくん?」
「はい、先生のことでしたらちゃんと考えてますから御心配なく」
「……声に出てた?」
「はい、7割くらい出てたと思います」
……意識してないとダダ漏れになってるみたい。
あ、でも私のこと考えてくれてるってことはどういうことなんだろ?
一緒について行ってもいいのかな?向こうに転勤とか出来るんだろうか?
……もしかして学生結婚とか?
いやぁ、ないよね。いくらなんでもねぇ?
……ロクくんと結婚かぁ〜想像出来ないなぁ、まだ。
いずれはと思うけど、まだ高校生だしね……大学入って、さぁ結婚みたいなのもちょっと違う感じだし。
「そうですね、さすがに結婚はどうかと思いますね」
だよね〜うん、うん、でもついて行ってもいいならついて付いて行こうかなぁ。
仕事探さないとだけど……
「そうですね、僕としては付いてきてくれると嬉しいですよ」
え?またまたぁ……ホントに?
行く行く!付いてく!
「ところで先生?」
「うん?何かな?」
「7割どころか10割になってましたけど大丈夫ですか?」
「…………大丈夫」
普通に話したほうがいいよね、これって。
帰りの車の中でそう反省した私でした。
ロクくんを送っていった帰り道、これからのことについて何となく色々と考えてみる。
もうすぐ春が来てロクくんは3年生になるわけで受験シーズンに入るんだよね。
私は特に変わりなくだけどロクくんの邪魔にならないようにしないといけないかな。
うん、毎日行くんじゃなくて2日に一回くらいにしたほうがいいかな?
……週休2日くらいで。
……聞いてみてからにしようかな。うん。
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