来年も一緒にいてくれますか?


 クリスマスが明けて世間はすっかりお正月気分。

 学校の方も年末年始はお休みなので大晦日前の30日から私はロクくんのお部屋に泊まりで遊びに来ている。


「ロクく〜ん!遊んでよ〜」


「…………」


 はい、ありがとうございます!放置プレイ頂きました。


 ロクくんはといえば昨日から延々とゲームをしている。そうホントに延々とだ。

 ガッツリとヘッドフォンをして世界に入り込んでいるらしく全く相手をしてくれない。

 真剣な顔のロクくんの横顔もかっこよくていいんだけど……流石に丸一日放置プレイされるとちょっと退屈だ。


 そんな31日の昼下がり、ようやくロクくんが満足そうな笑みを浮かべてヘッドフォンを外した。


「やっと終わったの〜ロクく〜ん!ヒマ〜ヒマ〜」

「あ、先生お疲れ様です」

「……いやいや、昨日からいたからね」

「え?」

「……マジで放置プレイかよっ!」

「ははは、冗談ですよ。冗談」

 乾いた笑いで誤魔化すロクくん。


 はぁ……クリスマスの大会でわかってはいたけどホントに集中すると周りが見えないというか世界に入っちゃうとか。

 ヘッドフォンをゲーム機において肩をほぐし大きなあくびをするロクくん。

「ちょっと寝る?」

「はい、少しいいですか?」

 あれだけ延々とゲームをしていたんだから眠いだろう。

 また放置プレイの続きかと思うとちょっと残念だけど….…


「ふわっ!」

「じゃあちょっとだけ寝させてくださいね」

「にゃっ!ろ、ロク……」

 座って見ていた私を抱きしめるように倒れ込んだロクくんは返事も待たずにすぅすぅと寝息をたてていた。


 そっと抱きしめたまま床に転がると寒かったのか、ぎゅっと私を抱きしめる。


「うふふふ、これは……これでアリかも」

 あまり普段見ることのない無防備なロクくんの寝顔を間近で見ながら……キスをひとつ、ふたつ。


 ちゅっ、ちゅっ。


 うへへ〜ちゅっちゅっちゅっ〜。


 ……痴女みたいじゃん……これ。

 でも、ねえ?だってねえ?寂しかったんだもん。


 夜になってロクくんが目を覚ますまで私はあまりのヒマさと寂しかったこともありこれでもかとキスをしまくった。

「さぁて、ロクくん!どこに行こうか?」

「え?今から出かけるつもりなんですか?」

「もちろんだよぅ!だってヒマだったんだからね!も〜ヒマでヒマで!」

「はぁ、先生はヒマだとキスをする人なんですね」

「うぇっ?ど、どうしてそれをっ!」

「あのですね?寝てるのに口塞がれたら起きますって」

「あ、起きてた?」

「普通起きるでしょ?息できないし舌まで入れられたら」

 ポコンとゲンコツを頂きちょっと恥ずかしくなる私。

 仕方ない先生ですねと、改めてキスをしてくれるロクくん。


 うふっ、これこれ!


 自分からじゃなくてロクくんにしてもらうキスの味はまた格別で……ふにゃふにゃになってしまいそうで。


「じゃあ晩御飯でも食べに行きますか?」

「うん!イク〜!」

「……先生が言うと卑猥に聞こえるのは何故でしょうかね」

「気のせいよっ!」

 いそいそと着替えてロクくんの腕に絡みついて繁華街へと繰り出すと大晦日ということもありかなりの賑わいだった。

 飲食店も待ちが出ているようで店の前でた待っている人々が大勢いる。


「どこもいっぱいですね」

「そうね〜ラブホテルもいっぱいよね〜」

「先生の頭の中もお花でいっぱいですね」

「綺麗な花には棘があるのよ」

「自分で刺さっといてください」

 そんな日常会話をしながら繁華街を歩くけど、どこも満員で仕方なくコンビニでお弁当を買って帰ることにする。

 一日中ゴロゴロしていて身体が痛くて今から帰って作る気力がないので風情もないけどまあいいかと。


「年越しそばぐらいは買って帰りますか」

「そうね、お蕎麦を食べてからじゃないと姫初めはね〜にゃん!」

「はぁ……ホントにブレないですね。先生は」

 本日2回目のゲンコツを頂きつつしっかりと腕をとってひっつく私。


 24時間営業のスーパーで蕎麦を買って肩を寄せ合って帰路につく。天気予報では今夜くらいからかなり冷え込むらしく吐く息は真っ白で……


「早く帰ってお風呂に入ろうね〜」

「そうですね、流石にこれはちょっと寒すぎますね」

「おっ?珍しく同意してくれたよ?」

「ひとりで入ってください」

「やだ〜!一緒に入る〜」

「ホントに……全く……子供ですか?」

「……!!ロクくん……そ〜いうプレイが好きなの?」


 はぁ、盛大なため息をつくけどそれでもロクくんは私を抱き抱えるようにして部屋まで帰ってくれた。



「はあぁ〜生き返るね〜」

「おっさんですか……」

「そうは言ってもね?温かいお風呂に大好きな人と一緒に入って……ぎゅっとされてるんだよ。生き返るでしょ?」

 抱きしめてくれるロクくんにもたれて、ほうっと一息つく。

 しばらく2人とも無言で静かな時間が流れていく。

 耳元にかかるロクくんの息が少しくすぐったく、密着した身体から鼓動が聞こえてきて幸せで。


「上がりますか?」

「うん」


 お風呂から上がって冷たいお茶を飲んでテレビをつけるとどのチャンネルも年越のカウントダウンをやっていた。

「あっ、あと5分くらいなんだね」

「そうみたいですね」

 テレビを見ていると5分くらいはあっという間で、カウントダウンが始まる。


 5、4、3、2、1……


「明けましておめでとうございます、ロクくん」

「明けましておめでとうございます、先生」

 ふふっと顔を見合わせて笑う。

「年越しちゃったそば食べようか?」

「ははは、そうですね」


 去年はひとりぼっちの新年だったけど今年は大好きな人と一緒に迎えることが出来た。


 うん、今年はいい年でありますよ〜に。






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