ホントに世界一なんですか?


「うわぁああぁぁぁ〜!!!」

「ひゃっ!」

昨日にも増して大量の大歓声が私に向けられる。


いやいや、ただの一般市民ですよ?

そもそもゲーマーでもないんだからね?


「はい、では今日もよろしくお願いします。本日も解説はプロゲーマーのロクさん、ロクカノさんです」


あれよあれよと言う間に何故かロクくんの隣に座らされている私。

全く関係ない素人が解説させられる図。


「えっと?何これ?」

「さあ?まぁ諦めてください」

会場では昨日とはまた違うゲームの大会が行われていて盛り上がっている。


どうやらロクくんはこのゲームもしているみたいで実況の人にふられて解説したりしている。


「今のところどうでしたか?ロクカノさん?」

「へ?いや、あの、はい?」

たまに私に話を振ってくる実況さん。

その度にスクリーンにデカデカと写る私。


ロクくんはそんな私に、適当に答えとけばいいんですよ、と言うんだけど……

でも慣れとは恐ろしいもので夕方くらいになると私も正に適当に返事をしていた。


真顔で言ってやったよ。


「ちょっと甘かったですね」


な〜んて。



「先生の解説面白いって評判ですよ」

ホテルの部屋に戻ってきてからロクくんがそんなことを言いつつスマホを見せてくれる。


大会の公式サイトの書き込み掲示板には……

ロクカノマジおもしれぇ、誰あの面白い解説とか、ふ、ファンになりましたハアハアとか。

中には海外からの書き込みとかもちらほら見受けられたり。

私だけのスレッドが立っていたりして……


「え〜っと?はい?」

「一躍有名人ですね、先生」

「い、いや、ちょっと待って?何でこんなことになってるの?は?」

「こういうのって何かバズるかわからないですからね。きっと先生の天然が受けたんじゃないですか?」


それ、褒めてるのかどうかイマイチわかんないんだけど?

「いやぁ明日も楽しみですね」

「もしかして……明日もするわけ?」

「はい、お願いしますね」

満面の笑みで答えるロクくん。


くそぅ、そんな顔されたら断れないじゃないのよぅ。



そして迎えた最終日。

大会の優勝者とロクくんのエキシビションマッチが今行われている。


会場のボルテージは最高潮で大歓声だ。


「うわぁすごい……」

3回戦って2回先に勝った方が勝ちなんだけど1回目はロクくんの圧勝だった。

「すごいですよね、彼まだ高校生ですものね」

声を掛けてきたのは昨日実況をしていた人だ。

「初めて見ましたけどすごいんですね、ロクくん」

「もちろんですよ、何と言っても世界チャンピオンですからね。彼は」

「世界チャンピオン?」

「あれ、聞いてないんですか?現在3連覇中の正真正銘の世界の頂点ですよ」


うわぁあぁぁぁぁ〜!!!


そんな話をしていると2回目もあっさりとロクくんが勝ったみたいだけどせっかくなので3回目もするみたいだ。


って言うか3連覇とか、世界チャンピオンとか何それ?

そしてスクリーンの中のロクくんを見つめて改めてカッコいいと思う私。

普段のちょっと斜に構えたロクくんもいいんだけどこうして見る真剣な表情のロクくんもまた……


えへへ〜〜私の彼氏さんはカッコいいなあ。




「ロクくん!カッコよかったよ!」

「ははは、ありがとうございます」

無事に大会が終了し控え室に戻ってきたロクくんに抱きつき頬ずりして讃える。

あの後もロクくんの勝利で3連勝して大会を締めた。


「って言うかロクくんて世界チャンピオンなの?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「聞いてないしっ」

ぷくっと膨れる私の頬をつついて、まぁそんな感じです。といつものロクくん。


その辺りのことはあまり話してくれないのでその内に聞いてみようと思う。

スタッフさんにやたらと愛想よく見送られて会場を後にする。

ゲームの大会って聞いていたからどんなんだろうと思っていたけど驚くほど盛り上がってほんとにびっくりした3日間だった。


ホテルに帰ってくるとロクくんは疲れていたのかソファにもたれて眠ってしまった。


ジーっとこうして見ていると普通の高校生なんだけどなぁ。

規則正しい寝息をたてて眠っているロクくん撫でてみたり撫でてみたり……ちょっとキスしたり。

ふふっ可愛いなぁ。


隣に座りそんなロクくんを見ながら私もいつしかウトウトと眠ってしまっていた。



「ん……うん……」

まだ薄暗い中、身体がふわっと浮いたような感じがして目を覚ます。

「あ、起こしちゃいましたか」

「あ、ロクくん……おはよ」

「おはようございます、と言ってもまだ夜中ですけどね」

「え、ん?わっ!」

さっきのふわっとして感じはロクくんにお姫様抱っこをされていたからだ。

「ソファで寝たら風邪引きそうですからね」

そう言ってベッドにそっと私を降ろすロクくん。

私はそのまま寝転がって両手を広げてロクくんを招きいれる。


「ロクく〜ん。ん〜ちゅ〜」

「ふふっホントに先生は……可愛いですね」

とがらせた唇に唇を重ねて抱きしめてくれる。


へへへっやっぱり優しいんだ。私の彼氏さんは。


しばらく抱き合いお互いを確かめ合ってから私達は再び微睡みの中に沈んでいった。













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