蕩けましたけどいいですか?


「ロクくん!」

「お疲れ様です、先生」

「お疲れ様じゃないよっ!なんであんなにバシバシと映るわけ!」

「楽しかったでしょう?」

「全国的にアホ面を晒しちゃったじゃないのよ〜」


 大会初日が終了して今は控室に戻ってきているんだけど、まぁ兎に角やたらとカメラが私の方にやってきてスクリーンに何度映されたことか……


「大丈夫ですって、先生は可愛いんですから」

「か、可愛い……そう?」

「はい、可愛いですよ。あ、あと全国じゃなくてネットなので全世界ですね」

「……は?」

 ロクくんは煎餅をぱりっと食べながらとんでもないことを言う。


 全世界?


「ええ〜〜っ!!!」

「世界デビューですね、先生。あ、煎餅食べます?」

「いらんわっ!!!」

 何をとんでもないことを……さらっと言うんだから。

 危うくちゃぶ台があったらひっくり返すとこだったわよ!

「まぁまぁ、そう言わないでくださいよ。別に悪気がったわけじゃないんですから」

「悪気があったら暴れてるわよぅ〜」

 よしよしと撫でてくれるのはいいんだけど……そんなに沢山の人が見てるわけでもないと思うし……大丈夫よね。


 スタッフさんたちに見送られて会場を後にするロクくんと私。

 スタッフさんが来たときより愛想が良くて「明日もお願いします」なんて言われたり。

 何をお願いするんだよぅ〜。



 というわけで、へろへろになり帰ってきましたホテルの一室。

 ロクくんにし流れかかり癒され中の私。

 ご苦労様と労わってはくれるものの、相変わらず襲ってはくれないロクくん。

 まぁ、こないだみたいに迫られたらそれはそれでちょっとあたふたドギマギしちゃうんだけど……


 この日はレストランじゃなくて部屋での晩御飯だった。

 所謂ルームサービス的なやつで、中々に豪華な食事を堪能してロクくんを誘って例のやたらと落ち着かないお風呂に一緒に入る。

 だって広すぎてひとりで入ると寂しいんだもん。


「ふうぅ〜っ、広いお風呂へサイコーだねぇ」

 後ろからロクくんに抱きしめてもらいつつゆっくりと浴槽に浸かる。

 ロクくんは私の肩に顔を乗せて気持ち良さげに目を閉じている。


 間近で改めて見るとやっぱりかっこいいと思う。

 ううん、かっこいいというか綺麗な感じだ。女顔だしまつ毛も長くてお風呂で少し火照った感じがまた、堪らない。


「ロクく〜ん!!しゅきぃ〜っ!」

「うわっ!ちょ、ちょっ!先生!」

 我慢出来ずにクルッと回転して抱きつく私。


 うへへへ〜すべすべのロクくんの身体〜。


「びっくりするじゃないですか」

「だってぇ〜ねえ?そりゃ……抱きつきたくもなるでしょうよ?」

 ムニムニッとロクくんに胸を押し当てて上目遣いで見てみる。


 ほれほれ、どう?


「先生……」

「何?したくなった?」

「……案外胸無いんですよね」

「ぐはっ!」

 ロクくん……それは言わないで……。

 ええ、そうですよ、どうせちっぱいですよ!

 寄せてもあげても大して変わらないですよ〜。


「だ、大丈夫だから!ロクくんが育ててくれたらおっきくなるから!」

 ばっしゃあとお湯を撒き散らして立ち上がって宣言する私。

「いや、別に小さくてもいいと思いますけど」

「そう?」

「はい。というか……目の前で仁王立ちされると……目のやり場に困りますが」


 へ?


「きゃあああぁぁ〜〜!!」

 はわわわ、私ったらロクくんの前で何てことを!

 泣きべそをかきながら、ぶくぶくっと湯船に浸かる私。


「見た?見れた?見られた?」

「言ってる意味がわかりませんよ、先生」

「だ、だって……み、見たでしょ?」

「今更だと思いますけど?」

「見せるのと見られるのは違うのよっ!」

「はあ、そんなものですか」

「ふえぇぇ〜お嫁に行けない〜」

「行って帰って来たじゃないですか」

「ぐさっ……」

 ロクくんってフツーに酷いこと言うんだよね……


「はいはい、そんなに拗ねたら可愛い顔が台無しですよ」

「……拗ねさせたのは誰よ?」

「自爆だと思いますが?」


 ぐずっぐずっな私をそっと抱き寄せて、よしよしとしてくれるロクくん。


 酷いんだか優しいんだかわからないんだよね……私の彼氏さんは。


 それでも私はロクくんの胸に抱かれて幸せな気分になった。うん、我ながら単純だとは思うんだけど……結果オーライということで、よしとしとこう。



 お風呂から上がって部屋のソファに座るロクくんに膝枕をしてもらう。

 ごろごろ〜。

 私の頭を撫でてくれながらロクくんはスマホで明日の日程を確認している。


「ねえ、ロクくん。明日もテレビ来るの?」

「いえ、明日は来ないですよ。明後日のエキシビションは来ますけど」

「え?来ないの?」

「はい、明日は違うゲームの関西大会の予選ですからね。流石に予選まで写しには来ないですよ」

「そっかぁ〜よかった」

 私はほっと胸をなでおろす。

 だっていくらなんでも緊張するじゃない?


 ロクくんは平然としてるけど私は一般庶民だからね?

 慣れたら何ともないですよ、と笑うロクくん。

 いやいや、慣れないからっ!


「先生ってほんと面白いですね」

「へ?何が?」

 仰向けになり下からロクくんの顔に伸ばしていた私の手を取ってくすりと笑う。

「いや、だってハダカエプロンや下着にエプロンは平気だし一緒にお風呂に入っても大丈夫なのに変なところで恥ずかしがったりするんですよね」

「そ、そりゃそうよ!彼氏の前であんな……あはは、恥ずかしいょ〜」


「まあ、そんなところも可愛いんですよ」

「〜〜っ」

 真顔で言われると余計に恥ずかしい。

 わぁっ顔が熱いよぅ〜ってロクくん?ロクくんの顔がち、近くて……


「ぅん……ふっ……んんっ」

 身体の芯が、ジンってする甘い甘いキスの味。

 触れる舌と舌が絡みあって……


「ロクくんのキス……エッチだよ」

「そうですか?」

「うん」

 トロトロに蕩けますけど?


 あの〜色々と我慢出来なくなりそう……




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