海辺でデートをしませんか?



 明けて翌日。


「う〜ん、体が……動かないよぅ……」

「先生、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですかじゃない……ロクくんのせいだからね〜」

「何かしましたか?僕」

「何かしましたよぅ〜あんなことやこんなことまで……」


 昨日の夜、エッチはしなかったんだけど……いや、やめとこ……思い出すだけで結構恥ずかしいや。

 ロクくんてまだ高校生なんだよね?ちょっと経験値高すぎないかな?


 世の中には30歳過ぎて『賢者』になる人もいるっていうのに……

「ロクくん……経験値高過ぎです……」

「そうですか?人並みにですよ、人並みに」

「ロクくんの基準がわからないよぅ〜」

 ベッドに腰掛けてよしよしと撫でてくれるのは嬉しいんだけど……なんか複雑。

「まだ朝ですしお昼からにしますか?」

「うん、そうする」

 足腰がひぃひぃ言ってる感じがして、さぁ今から遊びにってわけにもいかない。


「じゃあお昼までゆっくり寝ててくだ……何ですか?この手は?」

「一緒に寝よ?」

「……いいですけど先生のことですから、きっと余計に酷くなりますよ?」

「何もしないからっ!」

 じっと私の目を見つめるロクくん。


 うん、何もしないよ?たぶん……


 ぎゅーってして、チューってして、うへへ〜ってくらいだよ?


「目が泳いでますよ、先生」

「え?ええっ?」

 そう言いつつも私の隣に寝転んで腕枕なんかしてくれたりして……えへっごろごろごろ。

 ふかふかのベッドに寝転がって彼氏さんとイチャイチャするなんて……何という贅沢。


 間近で見るロクくんの顔はやっぱりイケメンで。


「ロクくん、チューって」


 ちゅっ。


「えへへ〜、ちゅうされちゃった」

「散々してますけどね」

「それはそれ、これはこれね」

「そんなもんですか?」

「そんなもんですぅ」

 ベッドの上でお昼過ぎまでごろごろとしていると足腰も随分と楽になりようやくお出かけが出来そうになった。


「よしっ!準備おっけー」

「じゃあ出かけますか」

 ロクくんと連れ立ってホテルを出る。

 ロクくんは来た時と変わらず黒のコート姿、私はミニスカートにブーツにコート。

 ちょっと足がすーすーするけどここは譲れないところなんだよね。


「港町だけあって潮の香りがするんだね」

「そうですね、海がすぐそこですからね。行ってみますか?」

「うん」

 ホテルを出て少し歩くと潮の香りが更に増してくる。

「うわぁ〜綺麗」

 海沿いにぐるっと遊歩道があり港のほうまで続いている。

 丁度くるときに見た観覧車が遠くに見える。

 遊歩道を手を繋いでゆっくりと歩く。

 冬場だけどお日様の光で少し暖かくて、歩いている人も結構いる。


「あっちに行くと港の方ですね」

「向こうは?」

「向こうは商業施設です、つい何ヶ月か前にリニューアルしたんじゃなかったかな」

「見に行こうよ!」

 ロクくんの手を引いて綺麗の海を見ながら歩いていく。

「ふふっデートらしいデートって初めてだね」

「そうですね」

「ぶぅっ、もうちょっと嬉しそうな顔出来ないの?」

「これでも嬉しそうにしてるつもりですが」

 相変わらずのクールっぷりというか、あまり表情に出さないからわからないけど嬉しいって言うんだからよしとしとこう。


 海を一望出来るように建てられたお店の数々とオープンカフェやレストランがたくさんある。

 冬休みだしクリスマス前だということもありかなりの賑わいを見せていた。

 色とりどりに飾られたお店のショーウィンドウを見て回るだけでも楽しくなってくる。


 ロクくんに腕を絡めてぴったりと引っ付いてお店を見て回る。

 2階部分に上がってみるとお洒落な服屋さんやジュエリーショップが並んでいてカップルで賑わっていた。


「あ〜ロクくん、ロクくん!ほら可愛くない?」

「はい、可愛いですよ」

「ロクくん、ロクくん!これは?」

「可愛いと思います」

 服屋さんであれこれと服を手にとってみせるけど、ロクくんの反応がいつも通りすぎてつまんない。


「ロクくん!もっと……こう、なんていうか、リアクションないの?」

「リアクション……ですか?」

「そう!いっつも反応が薄いんだよ」

「そう言われましても……」

 ロクくんが困ったように頭をかいてる。


 うふふっ、ロクくんのこういうところが可愛いんだよね〜。

「まぁそこもロクくんのいいところなんだけどね」

 服屋さんの隣にあるジュエリーショップのショーケースを覗きながらそう言ってロクくんを引き寄せる。


「ロクくん、こっちとこっちどっちが似合うと思う?」

「そうですね……こっちですか」

「ほほぅ、ロクくんはこういうのが趣味なんだね?」

「趣味って……聞いたのは先生じゃないですか」

 ロクくんが指したのは赤い色をしたピアス。


「よしっ!今日の勝負は赤でいこう!」

「何の勝負ですか……何の」

「何って?今日の夜にロクくんに可愛がってもら……もがもが〜」

 張り切って宣言しようとして口をふさがれる。

「こんなとこで大声で言わないで下さい」


 こくこく。


「わかりましたか?」


 こくこく。ぺろぺろ。うしし。


「わ!舐めないでくださいっ!」

 塞いだ手をペロリとして無事脱出。

「くっ、この変態先生が」

「えへへ〜」


 2人でゆっくりとお店を日が暮れるまで見て恋人達が溢れるカフェでお茶をして、手を繋いで海沿いの遊歩道を歩く。

 海の上に浮かぶ大きな月が辺りを照らしていて、隣を歩くロクくんはカッコよくて。


「ロ〜クく〜ん」

 ぴったりと引っ付いてロクくんを感じる。

 はいはい、といつもと同じロクくんだけど私にとっては今日のロクくんは昨日のロクくんと一緒じゃなくて、もっと好きになったロクくんなのです。


 この日の夜ははしゃぎ過ぎたこともあり部屋に帰ってお風呂から上がる頃には眠気に勝てず寝てしまった。



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