お風呂でイチャイチャしませんか?


 ちゃぷん。


 ちゃぷん。



「お風呂……広いね」

「そうですね、確かに無駄に広いですね」


 ホテルのお風呂でロクくんと一緒に湯船に浸かってお風呂場を見渡してみる。


「これってひとりで泊まってもこのお風呂なんだよね?」

「多分そうじゃないですか、去年はひとりでしたから下の方の部屋に泊まりましたから知りませんでした」


 いつかのように湯船でロクくんに後ろから抱きしめてもらっているけど、足を伸ばしてもまだ余りがあるくらいに広い浴槽。


 10人くらいが入っても充分すぎるような広いお風呂。


「落ち着かないね〜」

「充分に落ち着いてると思いますよ」

 ロクくんにもたれて足をパシャパシャとしてみる。


 えへへっ、なんだかこういうのって幸せだなぁ。


「ロクくんは……色々と落ち着いてるね」

「……落ち着けてるんですよ、ほら、言うじゃないですか。頭の中で数式を並べてみるとかって?」

「そこまでしなくてもいいんじゃない?」

「それはそうですけど……」

「ガォーってしてくれていいんだよ?」

「しませんよ、そんなこと」

 クルッと湯船の中で回ってロクくんと向かい合う形で抱きつく。


 ロクくんの肌はすべすべしていて女の子みたいで気持ちがいい。


「えっと……先生?」

「えへへ〜っ、ロクく〜ん。すき〜」

「ありがとうございます……ってどこを弄ってるんですか!」


 え?だって……ねえ?

 そりゃ〜もう〜ねえ?


 うへへへ〜さわさわ。


「ロクくんも……男の子だね」

「それは……当たり前じゃないですか」

 うんうん、ちゃんと男の子だ。

 えへへ〜。


「先生に任せておきなさいっ!」

「それはそれで非常に不安なんですが……」

「なんでよっ!」

「胸に手を当ててよく考えてください」

「胸に……こう?」

 寄せて〜上げる〜っと。


「アホなんですか?先生は」

「し、失礼な!リラックスさせてあげようと思ってよ!」


 思い当たることが多過ぎてどれのことかわからないし。

「お風呂でこんなことしてたらまたのぼせますよ?」

「うぐっ、く、だ、大丈夫だもん」

「はいはい、上がりましょうよ」

「ええ〜っ?もっとイチャイチャする〜」

 パシャパシャと湯船をたたく。

「子供ですか……」

「身体は大人だよ!えっへん!」

 と、そんな私を放ってロクくんはさっさと上がってしまった。


 せっかくいい雰囲気だったのに……

 でも、まぁいいか。1週間もあるんだし焦らなくても大丈夫だよね。


 クリスマスだって一緒にいてくれるために空けてくれてたし、うんうん。出来た彼氏だなぁ。


「のぼせますよ〜」

「はぁ〜い、もう上がるから〜」


 お風呂から上がるとロクくんは短パンにTシャツのラフな格好で寛いでいた。

 暖房が入っているからそれくらいでちょうどいい具合。

「中々上がってこないから心配し……あの?先生?服着ない人ですか?」

「え?だってどうせ脱ぐでしょ?あ!もしかして脱がせたい人なの?ロクくんは」

「はあ……」

「何よぅ!その盛大なため息は!」

 お風呂上がりはセクシーなランジェリーにしてみたのにロクくんがまさか脱がしたい人だったなんて……


「そういうのはまた今度でいいですから」

「ええ〜!またおあずけ〜?」

「おあずけってわけじゃないですけど、僕としては……まぁ、その、一緒にいるだけでも充分なわけでして……」

「したくならないの?」

「ストレートですね、先生は」

 ロクくんの隣に座って、膝にのの字を書きながら聞いてみる。

 人並みにって言ってたけど、ロクくんてあんまりガツガツしてないからちょっと心配になる。


 このくらいの男の子の頭の中って、エッチなことでいっぱいなんじゃないのかな?


「先生と……したくなったらちゃんと言いますから」

「そう?じゃあ私もロクくんとしたくなったらちゃんと言うね」

「先生はいつも言ってるようなものでしょ?」

「てへっ」

「てへっじゃないですよ」

 お風呂上がりのロクくんはいい香りがして……先生はムラムラしてきちゃいますよ〜。


 ロクくんの肩に頭を乗せて、くんかくんかと匂いを嗅いでぐりぐりと顔を押し付けてみる。

 ぽんぽんて撫でてくれる手が気持ちよくて……やっぱり先生はムラムラしちゃいます。


「あのね、ロクくん……私……」

 ロクくんの首に手をかけて潤んだ目で見つめる。

 だって……好きなんだもん。

 ぎゅってして欲しいんだもん。

「ロクく……わっ?ロクくん?」

 しなだれかかる私を、ひょいとお姫様抱っこをしてベッドへと向かうロクくん。


 え?え?ロクくん?


「さっきの今でしたくなったわけじゃないですよ」

「そ、そうなの?」

「はい、でも……一緒に寝るくらいはいいですよね」

 ベッドに私を優しく横たえて、パチンと電気を消したロクくん。


 窓から入る月明かりは意外と明るくて、まじまじとロクくんに見られているとちょっと恥ずかしくて。


「あんまりじっと見ないでぇ」

「僕に見てほしいからそんな格好なんじゃないんですか?」

「それは……そうだけど……あ〜っ、もぅっ恥ずかしいっ」

 シーツを引っ張ってくるくるっと巻き付け丸くなる私。

「先生って攻められるのは苦手なんですね」

「ロクくんがSなのよ〜っ」

 シーツを引き剥がしつついつもと変わらない笑顔のロクくん。

「はい、よく言われます」

「ひゃあっ!ちょ、ちょ、ちょっと待って!きゃっ!」

「ふふっ綺麗ですよ、先生」

 シーツをどけて上からじっと私を見つめるロクくん。


 ああっ……ダメだって。

 口では襲って〜なんて言ってるけど、こういうのはダメなんだって!


「ロクくんのえっちぃ〜!」


 この後、私はロクくんに散々いじめられてぐったりして眠りについた。

 何がどういじめられたかは言えないけど……もうお嫁に行けないよぅ。


 責任とってよね?ロクくん!







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