デザートにいかがですか?


 結局、せっかくお泊りしたのに寝ちゃったこともありエッチはお預けになってしまった。


 私はいつでもウェルカムなので襲ってくれても良かったんだけどロクくんはそんなつもりはなかったみたいで。


「今度はちゃんと活躍させてあげるからね」

 物干しにかけた勝負下着にそう宣言する。


 はあ……むなしい。


 でも収穫もあった、一緒にお風呂にも入ったし何より……ロクくんとのキスが気持ちよすぎる。

 アレだけで蕩けてしまいそうになる。


 ううん、実際蕩けてたけど。


 両手で身体を抱きしめてぶるっと震えてその感覚を思い出しただけでちょっと危ない感じになってしまうくらいだ。


「よし!今度のおやすみこそはちゃんと抱いてもらおっと」

 知らない人が聞いたら引きそうな言葉をベランダで叫び私は今日も元気に仕事に出かけることにした。


 学校は来週から期末試験が始まりそれが終われば冬休みがやってくる。

 3年生にとっては受験やらなんやらとゆっくりする間もない一月だろうと思う。

 クリスマスや年末年始といったイベントが盛りだくさんなのにもかかわらず、勿体ない話だ。


 部活の顧問や生徒会などに関係している先生方は冬休み中も大体学校に来ているが、私みたいな宙ぶらりんはそこそこのまとまった休みが貰えている。

 そういえばロクくんは冬休みどうするんだろう?

 まだ2年で受験はまだ先だし部活もしてない、バイトはしてみたいだけどそんなに入ってる感じもしないし。


 あれ?じゃあロクくんってどうやって生活してるんだろ?

 ご両親は他界してるし伯母さんには迷惑かけたくないって言ってたし。


 ……もしかして……パトロン的なオバさんがいるとか?

 まさか身体を……


 気になる!

 これは確かめないと!




「アホなんですか?先生は?」

「だ、だって!おかしいじゃないっ!ロクくんバイトもあんまりしてないみたいだし!」

「あのですね?先生の発想がおかしいですって」

 仕事が終わって速攻ロクくんの家に押しかけた私は、思いついたことについて問いただしていた。

「じゃあ!どーなってるのよっ!」


 半べそをかいて尋ねる私にロクくんは一枚のカードを差し出した。

「何これ?……えっと?何?」

「先生、英語苦手なんですね?」

 カードには英語で何やら書かれているんだけどキャッシュカードとかではないみたい。


「僕はですね、e-Sportsのチームに所属してるんです」

「e-Sports?」

「はい、e-Sportsっていうのは……面倒なのでネットで調べてください」

「雑っ!!」

 ロクくんの話では、そのe-Sports──ゲームの競技のことらしく国内だけでなく世界大会や下手したらオリンピックの競技にもなるくらいらしい──のチームに所属していてそこからお給料的なものをもらっていると。


「そんなので生活していけてるの?」

 私にはよくわからないけどちゃんと生活出来るくらいの収入があるんだろうか?

「全然大丈夫ですよ、何なら通帳見ますか?」

 ロクくんは某銀行の通帳をひょいと手渡してくれた。

「……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん……は?」

「大丈夫でしょう?」


 ロクくんの通帳には見たことない桁の数字が並んでいた。

「何これ?」

「通帳です」

「や、そうじゃなくて!何なのこの残高はっ!」

「何なのと言われても……大会の賞金とか色々ですね」


 特に偉そぶるわけでもなくいつも通りのロクくんは、だから全然大丈夫ですよと言って私の頭を撫でてくれた。

「ふへへへっ」

 首をすくめて撫でられる私は、変な妄想が現実じゃなかったことの安堵と……これって玉の輿じゃ?っていうリアルな現実を考えてニヤついていた。


「先生、今何か良からぬこと考えませんでした?」

「は?な、な、何を言ってるのかなぁ?」

 はぁとため息をついたロクくんは、お腹空きましたと晩御飯の催促をはじめる。


「変に気を使わせて申し訳ないです」

 キッチンへと向かう私にそう言葉を投げかけるロクくん。

「ううん、私こそ変に勘ぐってごめんね」

 キッチンでゴソゴソと服を脱ぎながら返事をする。

「……先生ってほんとブレませんね」

「えへへ〜褒めて褒めて〜」

「褒めてないです」

 今日はパープルのシースルーの上下、エプロンからチラチラと見えるこの感じが、エロいよね。



 美味しそうに晩御飯を食べてくれるロクくんにちょっと聞いてみたいことがある。

「ロクくんって性欲あんまないの?」

「いきなり何を言うんですか」

「だって、ほらこんなエッチな格好してたら普通は、ガォーってならない?」

 テーブル越しにエプロンをパタパタとしてみせる。

「人並みにはあるとは思いますけど」

「デザートに食べてくれていんだよ?」

 私としてはいつ襲ってくれても平気だし、寧ろ早く襲ってほしい。


「……考えときます」

「あ〜あ〜、こないだの続きしたいなぁ〜」

「あれは先生が寝ちゃうからですよ」

「もし寝てなかったらしてた?」

「まぁ、そのつもりでしたからね」

「よしっ!じゃあ今から続きを〜きゃんっ!」


「ホントに学習しないんですね」

「いたたたっ、もうっ!」

 飛びついた私にゲンコツを見舞ったロクくんを恨めしげに睨む。

「アホになるでしょうがっ!」

「前にも言いましたが、それ以上なりませんって」

「くっ、わ、わからないわよ〜?パンツ後前反対に履くかも」

「勝手に履いてください」

「ええっ!これ後前逆だと前がシースルーで見えちゃいけないところが……ひにゃっ」


 ぷにっと頬っぺたをつねられる。

 ぎゅっと優しく。


「相変わらずの変態さんなんですね」

「ひゃってりょくきゅんぎゃひゅきひゃんひゃふぉん」


 ひとしきり頬っぺたをぷにっぷにっとされた私は、そのあともあれやこれやとロクくんに迫ったんだけど軽くあしらわれておしまいだった。


 デザート……美味しいんだよ?



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