幕間
「――お荷物は以上になります、ニューワールド・エクスプレスのまたのご利用をお待ちしてます」
手には小さめのダンボール。差出人は不明。精密機器と取り扱い注意と書かれたシールが貼られている。
机の上からカッターナイフを取り出してガムテープを切っていく。
中身は爆弾ではなかった。その事実に安堵しながら梱包材を取っていく。
衝撃吸収材で厳重に包まれていたのはまた箱。その箱のロックを解除し、開けるとそこには透明な素材で構成された直径三センチメートル、高さ四センチメートルほどの円柱が黒い
その円柱の中には一辺二センチメートルの透明な立方体が封入されているのが見えた。
この円柱の中に入っている角砂糖レベルの大きさで数
――とはいえ、このHMCは最近になってようやく実用化した物。
当然、一般に普及しているとは言い難く、当然これを読み書きする装置はそう多くはない。規格も制定され始めたばかり。というより、そもそもCDやブルーレイディスクがあるというのにわざわざ正方形である必要があるのかという議論がある始末だ。
そういうこともあってVAFも自動車等もSSDを、大容量データの保存には比較的安価なHDDを使い続けているのが実情だった。
要するにHMCという記憶媒体は、今の所、一部の物好きしか使わないであろう記録媒体だということだ。
「ま、あの機体にはには入れてるんだけどねHMC」
そうぼやきながら僕は自作した
――えっ? VAFにそんなニッチな記憶媒体をなんで入れたのかって?
ほら、引き出しは開けやすいほうが色々便利でしょ? つまりはソウイウコト。
だから、別に興味本位で組み込んだわけでもなく、ロマン重点で組み込んだわけじゃない。そう! これは未来への投資なんだ!
――閑話休題。
HMCが封入された円筒を穴の中に差し込むと、カチリとはまった感触が手に伝わった。
慎重に円筒を外し、キズなどがないかチェックした後、フタを閉じて読み込みを行う。
HMCには圧縮されたファイルが記録されていた。
解凍。そしてセキュリティソフトでマルウェアの類がないか念入りにチェック。
「しかし、えらいデータ量だなおい……」
拡張子を見るに、どうやらファイルの中身の大半は3Dプリンター用のデータとそのドライバのようだった。
ビューワーで確認したが用途がわからない。せいぜいわかったのはVAFのコックピット側面――胴部から後ろに突き出した部分――にあるハードポイントに固定して使うということと、不可成結晶体を結構使うということぐらい。
iシステムを補助、拡張する? そもそもiシステムってなんなんだ?
実際にプリントアウトして使えばわかるのだろうが……
「……ん? Read me_2? どれどれ……」
2つ目の説明書――というより手紙だった――を読んだカズハはそれをプリントアウトする決心を固め、実行に移したのであった。
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