第7話 始まった異変・決着
ガラガラと音をたて、大きな揺れと土煙を巻き上げながら洞窟が崩れていく。
ゴンッ――
暫くして一際大きな音が辺りに響くと洞窟は完全に崩壊した。
最初からこうすれば良かったんだ、と使命を果たせたことに安堵する。
それも束の間、人を殺したことに対する恐怖が襲ってきた。全身の力が抜けそうになるが杖で体を支え必至に立つ。
(まだ終わりじゃないのよ)
ガクガクと震える足を村の方へ向けた。
だから気付かなかった。
土煙の中から突っ込んでくる一つの影に。
「歯ァ喰い縛れよ、お前」
「え――」
光里が振り返るより早く幸村が拳を渾身の力で振り抜く。
まともに喰らった光里は吹っ飛ぶ。そのまま瓦礫にぶつかり、意識を手放した。
◇
アランが光里の首筋に手をあてている。
「大丈夫、生きてるよ。少し気絶してるだけだ」
良かった。
必死で頭に血が昇っていたとは言え、女を力一杯ぶん殴ってしまったことには多少罪悪感はあったのだ。
その上、ピクリとも動かなくなったときにはずいぶん焦った。
「それにしても、犯人がこんな普通の女の子だったなんてね」
「そうだな」
アランの言う通り倒れているのは自分と同じか年下くらいの何の変哲もない女子だった。強いていうなら髪が茶色であることくらいだが、それも自分の感覚ならと言う話でこの世界では別に普通だ。
「まあ、殺されかけたことには変わりないんだけどな」
「怖かったね、僕なんで無傷なんだろ...」
アランが崩壊した洞窟を見ながらつぶやく。
「で、こいつどうするんだ?」
「放っておくわけにもいかないでしょ」
「だよなあ」
こんなとこで死なれては目覚めが悪い。
それにこいつには聞きたいことだらけだ。最初から選択肢は一つしかない。
今日はこればっかだと思いながら女を背負う。
「アラン、それ落とすなよ」
「そんなことしたら僕が村の敵だよ」
アランの手には魔法石がしっかり抱えられている。失ったものは俺の鍬だけだった。
村に帰りながら隣の幸村を見て思う。
あの崩壊の中、彼はどうやって無事に生還できたのだろうか。それも自分を背負って。
頭を下げた状態では何が起こっているのかさっぱりわからなかったが、自分や村を救ってくれたことに変わりはない。
鍬を持ち、畑を耕している所しか見たことがないがそれでもやはり、彼は勇者なのだろう。
少し遠くにいってしまった気がする友人を見て、誇らしくありなんだか寂しいともアランは感じた。
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