第5話 始まった異変Ⅲ
アランが案内してくれたのは小さな洞窟だった。
振り返るとオババの家が小さく見ることが出来た。あの辺りは道場や村長の家などがあり村でも重要な場所だ。その裏に位置してることから自然とここの役割の大きさがわかる。遠目に見える分には村に大きな混乱が起こっている様子はまだなくほっとする。
「よくこんなとこ知ってたな」
「小さい頃探検してた時に見つけたのを思い出したんだ。ここに連れてきてもらったことはないよ」
こいつも探検みたいなことやってた時期があったのか。と緊張感なく考えてしまった。
「あとで怒られるかもしれないけど何かあってからでは遅いからね。何もなかったら戻って報告すればいい」
ほら、あれだよ。とアランが指さした先に祠らしきものがあった。
確かに核と呼ばれるだけあって外にあった魔法石とは段違いだった。大きさはバスケットボールくらいだが、魔力に疎い俺にもひしひしと力が伝わってくる。薄暗い洞窟のなかで紫色の光を放つ魔法石は美しく思わず見とれてしまった。
「よかった。特に損傷はないみたいだ」
「よし、早いとこ戻ろう。戻りが遅いといらない心配かけるかもしれないしな」
「見つけた」
「誰だ!?」
二人しかいないはずの洞窟内に響いた三人目の声に驚き、振り返る。
そこには白いローブに身を包み魔法を放つための杖を持っている人が立っていた。フードを被っているため顔はわからないがどう見ても村の人間じゃない。
タイミングを考えてると俺たちの後をつけてたと考えるのが妥当だ。
「なあ、これ俺たちのせいか?」
「そうかもね、藪蛇ってやつだ。怒られるの確定になっちゃったね。ははは」
まったく顔が笑ってないぞアラン。
目の前には魔法石を壊して回ってた奴がいるんだからしょうがないだろう。俺だってこんなに涼しいのに汗が止まらない。
話し合いで解決とか無理かな、と現実逃避していると――
足元に閃光が走った。
「退きなさい。次は外さないわよ」
こいつ女なのか...
声でそう判断したが今はそんなこと重要じゃない。どうやってこの場を切り抜ければいいか考えなくちゃいけない。
「退くわけないだろ。君こそこれがどういうものかわかってるのか?」
「当たり前でしょ。じゃなきゃこんなとこ来ないわ」
どうやら話し合いによる解決という道は完全に閉ざされてしまったらしい。
かと言ってしっぽを巻いて逃げるわけにはいかない。二人でうなずき合い、俺は鍬アランは短剣を構える。
「...退く気はないのね」
言い終わるや否や奴の杖に光が集まる。
「
魔法は俺の足元に放たれ地面が爆ぜる。
今回は外れてくれたが、突っ立っていてはいずれ当たってしまう。動きながら隙を見つけるしかない。
次々に雷の魔法が放たれるが体を捻って何とか躱す。
躱せないと思った攻撃も何故かいづれも足元や体のギリギリをかすめていき当たることはなかった。
遊ばれているのか?
しかし敵からはそんな余裕は感じられない。動くものに当てるのが下手なのだろうか。そうなれば好都合だ。
少し余裕が出来た俺はアランが言っていたことを思い出した。
「アラン!お前短剣のほかに何か持ってきてるって言ってなかったか?」
目くらまし程度にはなると言っていた。もしかしたらこの攻められっぱなしの状況を打開できるかもしれない。
「ダメだ、人に向かって使っていいもんじゃない!それにこんなとこで使ったら、僕たちもどうなるかわかんないよ!」
どんなもの持ってきたんだこいつ...
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