第4話 始まった異変Ⅱ
緊張のせいか、いつもより口数が多くなっていた気がする。
それでも走るのは止めずなんとか目的の場所に着き、辺りの魔法石を確認していく。
「ダメだね。綺麗に破壊されてたよ」
「こっちもだ。2,3ヶ所見てきたけど全部」
この様子じゃ破壊されてないものを見つけるのは恐らく無理だろう。
急いでファイントさんに知らせて自分たちも魔物の襲撃に備えなければいけない。いざ戦うとなれば前線にでるのは自分たちなのでそこの話し合いもしたい。したいのだが――
そんなこと俺より分かってるはずのアランが動かない。
「おい、どうしたんだよ。正真正銘の非常事態ってわかったんだから戻ろうぜ」
「幸村、なんかおかしくない?」
急に何言いだすんだ、おかしいから様子見に来たんだ。緊張でどうにかなったんだろうか。
顔には出てただろうがアランはお構いなしに続ける。
「魔物がやったんにしては丁寧すぎると思わないかい?一個一個順番に壊していってる感じがするんだ」
言われてみればそうだが、起こっていることに変わりはない。
「魔法石の存在に気付くほど知能が高い魔物なら不思議じゃないと思うが」
「そこだよ!そんなに高位の魔物ならこんなに片っ端から破壊しなくても強引に襲ってくることができるはずだ。でも村はまだ襲われてない」
アランの口からどんどん考えが漏れてくる。
俺にはそれが考えすぎだと言い切る材料もないし、アランの言葉には妙に説得力がある。
「そもそも、そんな魔物が出たら都市から注意喚起の知らせが届くはず。それにこの行動はまるで、村を襲うことが目的じゃなく魔法石を破壊することだけが目的」
「ちょ、ちょっと待て」
一応声は届いたらしく顔をあげてこちらを見てくれた。
思考を遮って悪いが、俺を置いて行きすぎだ。
アランの考えを聞いて自分なりに整理してみたが突拍子もない結論になってしまったので確認も込めて言葉にしてみる。
「お前もしかして魔法石を壊して回ってるのは魔物じゃなく――」
「人って言いたいのか?」
無言で頷かれてしまった。
「マジかよ...何のために」
「そこまではまだわからないけど」
得体のしれない魔物より人にこれほど恐怖するとは思いもしなかった。自分と同じはずの人が自分ではわけのわからないことをやっているかもしれない事実に呆然とする。
「何にせよ犯人は魔除けの結界の仕組みを知ってる可能性が高い。幸村、祠に向かおう!」
ショックでよく聞き取れなかった。申し訳ないと思いつつ聞き返す。
「どこに行くって?」
「祠だよ。そこにある核の魔法石さえ壊されなければ結界の再生は容易なんだ、知ってるでしょ?」
初耳だよ。
よく考えればむき出しの魔法石だけってのは不用心だから、そういった措置が取られるのは当たり前か。
「核探すために順番に破壊してったのか」
俺の言葉を聞いてなのかはわからないがアランがハッとする。しかしすぐ苦い表情に変わった。
「そうか、犯人の狙いはやっぱり村を襲うことだ。結界を壊して野良の魔物に襲わせてね」
頭が痛くなってくる。
「何で、とかはどうでもいいか。急ぐぞ!」
「ああ、ついて来て!」
俺はこの村に救われた。
今度は俺が村を救う番だ。
◇
辺りは静寂に包まれいて、耳に届くのは時折吹く風の音と自分の呼吸だけだ。
魔法石を破壊していた
順番に魔法石を破壊するのは止めて核探しに切り替えたが、どうにも見つからない。あきらめて自ら村を襲う選択をするも最後の決心がつかないでいた。
自分の震えるを手を見ながら思う。
(どうしてこんなに怖いの?)
あの方のためなら何でもすると誓ったのにできない自分が嫌になる。
(顔も名前も知らないんならどうにでもできると思ってたのに...)
泣きそうになっていると足音が聞こえてきた。
息を殺し音の方を見ると、緑髪の男と鍬を持った男が走ってどこかに向かっている。
何で鍬?とも思ったがすぐに他の疑問が浮かんでくる。
(どこに向かってるのかしら?)
この辺に他の集落はないから襲おうとしていた村の人だろうが、向かっているのは村の方角ではない。
もしかして、と思い光里は杖をきつく握り直し立ち上がった。
二人の後を追いかけるために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます