第3話 始まった異変Ⅰ
まだ日が完全に上ってないというのに外がずいぶん騒がしい。
外に出てみると、いつもの和やかさはどこにも見られず大人たちがあちこち走り回っている。
何が起こってるのか分からず呆けていたらいつもの声が聞こえた。
「幸村!」
「アラン!一体何が起こってるんだ?」
息を切らしながら走ってきたアランに説明を求める。
「魔物除けの魔法石が次々破壊されてるらしいんだ!」
この村の周りには魔物除けの魔法石が設置されている。そのおかげでこの小さな村でも安全に暮らせているのだ。
それが破壊されるということは村が魔物の脅威に晒されるということだ。
「この辺にそんな知能を持った魔物がいたのか...」
「わからない。少なくとも僕が村にいて一番の危機だ」
アランですらこの事態を上手く把握できていないようだった。
「とりあえず動ける人は襲撃に備えて準備している。僕たちは魔法石の確認に行こう」
「確認?魔法石の現状は動かしてるオババが把握してるんじゃなかったのか?」
「ファイントさんから頼まれたんだ。ただの故障かもしれないし魔物の仕業なら痕跡が残ってるかもしれないからね」
なるほど。
それに魔物と遭遇するかもしれないなら老人や子どもじゃなく俺たちが行くべきだ。
「ってことはシャトルはもう?」
「うん。確認に行ってるのは彼女だけじゃない。僕たちも急ごう!」
魔物と戦うかもしれないなんて何時ぶりだろう。
不安が大きくなっているのを感じながら準備をしていく。魔物に遭遇するかもしれないなら自衛の手段は必要だ。
そこで気付く。というか嫌な予感はしていたんだ。
俺の剣は剣じゃなくなっているんだった。
かと言って調理に使う包丁を持って行くわけにもいかないだろう。
「幸村!なにやってんだよ!」
珍しく強めの口調で急かされる。
仕方ない、ないよりはマシか。と愛用の道具を手に取った。
◇
「
杖から雷光が迸り魔法石を砕く。
もう何個目になるだろうか。流石に疲労感が誤魔化しきれなくなってきた。
良くできたシステムだと思う。
そこまで詳しくない自分が感じるのだから見る人が見れば驚くかもしれない。
いくら壊しても魔除けの効果が完全に消える気配がない。恐らく核となる魔法石を壊さない限り消えないのだろう。
しかしその核がどこにあるかわからない。意味がないと思いいつつも、一縷の望みにかけて片っ端から壊しているがそれも限界が近い。
もし、このまま核を見つけることが出来ずに魔物による村の壊滅が出来ないとなれば――
その時は私がこの手で......
無意識に、しかしはっきりわかるほどにその手は震えていた。
◇
走る。とにかく走る。
農作業のおかげで体力がついてたのが幸いした。
アランは少しきつそうだが緊急事態に弱音を吐くような奴ではない。それよりさっきから若干呆れたような目で見られてることの方が気になる。
「たまに何考えてるのかよくわからないことはあったけどさ」
ついに耐えられなくなったのかアランが口を開く。
「鍬って君」
しょうがないだろ、これしかなかったんだよ。一応加護付きだし。
まあ何言っても意味がないように思えてので、こっちが思ったことも言ってやった。
「お前だってほぼ丸腰じゃないか。そんな短剣一つで大丈夫なのか?」
アランが腰につけている短剣は綺麗な装飾が施されてはいるものの、お世辞にも強いとは言い難いアランが魔物から身を守るには不十分だと感じる。
「家にこれしかなかったんだよ。それに他にも目くらまし程度にはなりそうなものも持ってきてるし、君よりよっぽど常識的だよ」
言いたい放題言いやがって。
アランと言い合いしても敵いっこないので必殺の一言をお見舞いしてやる。
「俺がいた世界では武器だったんだよ!」
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