第446話


「で、人型リリンの『おしりぺんぺん』を受けた感想は?」

〈いまの方が……。星になるかと思ったわい〉

「オ~ホホホ」


リリンが高笑いする。そんなリリンに妖精たちが《 女王様~ 》と崇めている。『リリン教』でも……


《 教祖様ぁぁぁ~ 》

「ん?」


声がした先をみると、そこには妖精たちの一部がピピンを崇めていた。


「図がたかい。控えおろう」

《 ハハー 》


……ピピンもノってたわ。っていうより、ピピンが教祖様ってことは……


「白虎……」

「はい」

「妖精たちは『スライム教』にでも入信したの?」

「いいえ」


白虎は、それはそれは笑顔で言い切った。


「『エミリア教』です」


……私は言葉をなくしただけですんだが、『鉄壁の防衛ディフェンス』の人たちが自分たちの椅子から転げ落ちた。それでもダイバとアルマンさん、コルデさんはなぜか納得したように頷く。


「白虎ちゃん、それならエミリアちゃんの立ち位置は?」

「御神体です」

〈そいつはちげえねえ〉


そう言った火龍の言葉にみんなも大爆笑した。



私とミリィさん、アゴールとフィムはティーブレイク。

エリーさんは、バラクルの人たちや『鉄壁の防衛ディフェンス』の皆さんと一緒に竜人に関して話し合っている。竜人の生活のこと、竜人の特徴、そして……先祖返りや両性具有のこと。


「え⁉︎ 成人と同時に両性具有ではなくなるのですか!」

「ああ、ダイバたちも勘違いしていたけどな。成人になると望んでいた性別になれる」

「長老に力を借りるのは子供たちだけよ」

「じゃあ、フレイズが望んでいない女性になったのは」

「ダイバたちと同じ、『成人になったら性別を選べない』と思い込んでだろう」

「しかし、一緒にいる長老は誰だ? 女性の長老のようだし、両性具有の性別固定もできるようだが……」

「性別を変える気がなければ、そのまま成人を迎えればいい。性別を変えたいなら、成人になった日にだけだ。『これから自分は男性や女性で生きていく』と」

「……それだけ?」

「そう、その日一日に宣言するだけだ。誰かに聞かせることも必要はない。そして翌日から少しずつその性に身体が変わっていく。両性を持っているからな。片方に染まっていくだけだ」


両性具有の話は、コルデさんたち大人なら誰でも知っていることらしい。それが知られていないのか、それとも……


「彼らといる女性長老たちが、わざと戦力を削っているってことだよね」

「エミリアもそう考えたか」


ダイバの言葉に私は頷いてから紅茶に口をつける。


「男になれば戦力になる。それは死ぬ可能性が上がる。しかし、女性では戦力にはなりにくい。逆に人質にされて秘密がもれる。……そういうことね?」


アゴールの言葉の最後は、私とダイバに向けられたものだ。それに頷くと、コルデさんたちは自分たちの思い当たる女性たちの名を何人かあげていった。


「火龍、私が潜りにいくのはあり?」

〈おすすめできん〉

「じゃあ、火龍はその竜人たちの里に行ける?」

〈……どういうことじゃ?〉

「火龍でしょ。火の神の眷属でしょ。『ダイバたちとは違う竜人たち』には崇めるべき存在じゃないの?」

「あ! 龍になるってことで、私たちより偉いと思っている!」

「そう、そこにら?」

〈しかし、女性長老たち個人には会えないと思うぞ〉

《 それだったら任せて! 》


妖精たちが胸を叩く。竜人に妖精たちの姿が見えないのはダイバたちで確認済みだ。


《 みんなは手紙を書いて。それを私が持っていく。私はくらやみの妖精。荷物なら空間魔法で運べる 》

「クラちゃん、これは難しいよ」

《 でも、空間魔法が使えるようになったのは私だけ。だから、エミリアお願い。やらせて 》

《 一緒に行く。バレないように届けるには、幻覚が使える私が一緒に行ったほうがいい 》


くらやみの妖精に続けて水の妖精も、危険だと理解しながら手をあげた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る