第374話
「売店って商人ギルドの管轄だよね」
「……はい」
「情報も商品だよね」
「…………」
「だ・よ・ね?」
「……はい」
「庁舎内に潜れたのをいいことに、盗聴や盗撮の魔導具を組み込んだ文具を売ったんだね」
「……」
「いい加減に黙秘をやめてくれない? 素直に罪を認めないと痛い思いをするだけだよ」
私の言葉にニヤリと笑った商人だったが、仲間だった職員たちが調査なしでリリンのストレス解消になっている姿をみて青ざめた。
「あっ! もしかしてさっき笑ったのって拷問に屈しないってことだった? 残念だけど、リリンのこれは罰でも何でもないから。ここは神の眷属がつくった
「俺は何度か預けられた連中をみたけどな。あそこに時間の概念はない。そして……冗談抜きで『死んだ方がマシ』だと思うぞ。死ねないけどな」
「あ、ま、待って……。話す、だから」
「残念だったな。手おくれなんだ」
ダイバにすり寄るように、まるで救いを求めるように。青白い顔で必死になっている。しかし、ダイバの言葉に反応したのは職員だけではない。……足下が小さく揺れた。
「ねえ、ダイバ。そいつって『話す』といいながらその先をいわないね」
「口先だけってことだ」
ここで自供すればよかったのに、それをしなかった。
「商人ギルド所属のアンタがしでかした行為がギルド長のヘインジルに迷惑をかけているってわかってるよね。それでも謝罪はしないし……」
奴隷管理部の職員の言葉にハッと顔を上げたけど、すでに手おくれ。
「彼らはわかっていなかったんですね」
「ああ。今まで一度も成功していない事実とその理由を」
ヘインジルとダイバの言葉に脳が働いていないのか、仲間の誰かを探しているのか。周囲を見回したが目的の相手が見つからなかったようだ。ここにいるのは自分だけ。壁に叩きつけられていた仲間たちももういない。
リリンは飽きたのか気が済んだのかわからないが、すでに職員たちを手放していた。連中はすでに地上から存在自体が消えている。アラクネがお迎えにきたのだ。
「もういらないか?」
ダイバの言葉にヘインジルが黙って頷く。事務長はずっと俯いて震えていた。友人だと思っていた者に裏切られたのだ。深く傷付いただろう。……と思っていた。
「以前の騒動以降、庁舎内は妖精たちが監視している。それを忘れたのか。一度も盗聴や盗撮が成功しないのは、その妖精たちが無害化しているからだ。すでに証拠品として提出されて厳重管理されている。すでに調査は済んでいたんだ。入手ルートがわからないから泳がしていたけど……。愚かすぎるキミたちを捕まえたことで、妖精たちが調べてきてくれたよ」
そう、彼は笑いを堪えていただけだ。その様子に友人は信じられないという表情をみせた。
「さっきのはまだ持ち込んだばかりだったから、無害化できていなかったらしいな。今のお前たちの盗撮目的は
「私の範囲からでてもムダだよ」
私の言葉に『信じられない』という表情をみせる。
「だって、ここは『火の神の眷属の
やっとダンジョン
…………だから、すでに手おくれなんだ。
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