第373話
「国境に関する報告は以上だ」
ダイバの言葉にヘインジルは眉間に皺を寄せた。今は報告会、『差し障りのない表向きの報告』だけがダイバの口から伝えられた。
「……驚いた。そうか、確かに妖精たちの言う通り魔物の国のままでは周囲に悪影響を与えるな」
「神はそれで自然浄化も兼ねて植物に変えたか」
《 鉱石も自然浄化するよ。限界まで浄化すれば魔石になるんだ 》
「だから、ダンジョンという封鎖された中でも空気が浄化されているわけか」
「そういえば、魔物が多いダンジョンには魔石が多く見つかるな」
「逆に、採集のダンジョンには魔物がいないよね」
私の言葉にみんなが驚く。
「でないのか?」
「でないよ。だから冒険者は避けるんでしょ?」
「まあ、採集だから冒険者には嫌われるよな」
「植物採集のダンジョンは特に鬱蒼としてるからね。そうなると火魔法は効果が下がるんだ。水属性に特化した地属性のダンジョンだからね」
私の言葉に、ダンジョンとは縁のない人たちが不思議そうな表情を見せた。
「植物のダンジョンだから地属性はわかります。ですがそこに何故水属性加わるのですか?」
「お前らなあ、……勉強不足は笑われるぞ」
「はあ、すみません」
ぜんぜん恥じてない様子の職員の顔に、ダイバが呆れたように息を吐き出す。
「お前ら全員、今すぐ植物の本を読んでこい。ヘインジル、こいつら戻してもいいだろ?」
「そうですね、報告会は以上で終了です。ここからは農園の話になります。外で待っている人たちと交代してください」
どことなく嫌々という感じで職員たちはでていった。
「アイツら
そういいながら入ってきたのは情報部のメッシュ。その後ろから農園の管理者たちや職人ギルドのギルド長たちが入ってきた。
「あれ? ヘインジル、商人ギルドは不参加?」
「いえ、今はギルド長の私が都長をしているので、ギルドからは事務長が参加します」
「あ、遅れてき、た……」
私の声にダイバとヘインジル、そして近くに座っていたメッシュが遅れてはいってきた商人ギルドの事務長に目を向ける。
「あ、まだ始まっていませんよね」
「始める気はねえな」
ダイバの言葉に全員が事務長に目を向けた。
《 どうする? 》
「いいよ、このままで。どうせ結界張るんだから」
私と光の妖精との会話で誰もが頷いた。
「じゃあ、ドアを閉めろ。報告会を始めるぞ」
「あ、はい」
ダイバの言葉に事務長が返事をしてドアを閉めて鍵をかけた。これで会議室の内部に結界が張られて室内の魔導具が停止した。その上で、光の妖精が室内を一周して結界を強化させた。
ぱあんっという高めの音がして、事務長が手にしていたペンが砕け散った。
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