第375話


みなさまに残念な報告があります。


「改まっていうな!」


私が報告しようとしたらダイバに口を塞がれた。


「だいたい、ってなんだよ! お前は!」

「おいおい、なんなんだよ」

「おい、ダイバ。詳しく話せ」

「その前にエミリアを離せ」


そりゃあわかんないよね。ということで、私が自分のお腹を手でポコンと、『妊娠』のジェスチャーをした。もちろんそれでわかる人は多い。


「妊娠! 妊娠したのか!」

「なに! エミリアさんが妊娠しただと!」

「まさかダイバの子か⁉︎」

「違うわ〜‼︎」


いやいや、皆さんわかっててダイバをからかっているね。


「ううん、ダイバの子だよ」

「こら、エミリア! 誤解されるようなことをいうな!」


一度離されたダイバの手が私の口を塞ぐ。


「ダイバ、エミリアを妊娠させたのか? 避妊はどうした」

「まて、メッシュ! あーもう、『アゴールが昨日妊娠していることがわかった』。これでいいかー!」


ダイバがヤケになってアゴールの妊娠を発表した。

パチパチパチ〜と手を叩くと、みんなからも拍手が上がった。


「ということで、アゴールは本日不参加で〜す。お仕事も無理しない程度の仕事量になりま〜す。今日は元々お休みで〜す」


私の言葉にダイバが「ああ」とやっと報告会を始める前に私が報告した理由に気付いた。


「それでまた現場ダンジョンに入れないから庁舎の方で事務を頼むことになる」

「了解、了解」

「今は手伝いをする妖精たちもいるからな。前よりは働きやすいだろ」


みんなのいうとおり、いまは妖精たちがいる。じつは妖精たちはお手伝いが楽しいらしい。書類をピラピラさせながら「誰かこいつを〇〇まで持っていってくれないか」というと、ヒョイッと持っていくらしい。


「最初は書類だけが移動していて驚いたけどな。今は慣れた」

「……慣れたんだ」

「ああ、書類と小さい菓子を置いておくと菓子の皿が叩かれるんだぜ。だから『ドコドコに持っていってくれるか?』って聞くと運んでいってくれる。菓子は戻ってから食ってるぞ」


完全に餌付けしているんだな。


「たまに返事も持って帰ってくる」

「おかげでわざわざ持っていく必要がないから仕事が捗るぞ」

「たまに空になったコップに飲み物が入ってる」

「ただなあ……。何か不愉快なことがあるのかわからんが、飲み物じゃないものを入れられる奴もいるんだ」

「ああ、この前はペンが入ってて飲めなくなっていたな」

「鼻にささっていたけどな」


それはおかしい。妖精たちは理由なく、そんなことをしない。……飲み物に何か入っていたのか。


「誰だ、それ」

「ああ、財務課のレイドンだ」


ダイバの言葉に妖精たちの被害者がわかった。あとで財務課にいる妖精たちに理由を聞いてこよう。そう思っていたら、庁舎担当の水の妖精が隠れていたテーブルの下から顔を出した。


《 財務課のレイドンって、赤茶色の髪のー? 》

「え? 知ってるの?」

《 うん、聞いてるよ。ここに連れてきたらわかるよ 》

「ああ、じゃあ俺が連れてくる」

《 一緒にいくー 》


事情を知ってそうな水の妖精が一緒についていった。

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