第271話


この世界には死霊使いネクロマンサーと呼ばれる職業がある。殺人の被害者の身体に使役している死霊スピリットを入れることで『殺された状況を魔石に記録する』ので、大抵の国の裁判所には最低でも二人はいる。貴族が罪を逃れるために代理人を立てたり、金を積んで揉み消されるのを避けるためだ。審神者さにわ同様、高給で待遇はいい。


「けど、死霊使いネクロマンサー奴隷化した死体ゾンビは関係ないよね? ……まさか」

死霊使いネクロマンサーには、くずれとかはぐれはいないから 》


私の言葉を遮るように地の妖精にツッコミを入れられた。


「じゃあ、奴隷化した死体ゾンビってなに?」

奴隷化した死体ゾンビというのはね、この死体に使役している魔物や動物の魂をいれる 》

「そういえば『死隊したい』という軍団が現れたらしいって情報部のニュースで聞いたけど」

《 ……うん。あれは奴隷化した死体ゾンビを使った軍団だよ 》

「やだなぁ。ああいうのは嫌いなんだよ」


まだ、スケルトンなら平気だ。ダンジョンにもでてくるけど、保健室にある完全な骨格標本だからだ。……アレが靴を履いて武器を持って、集団で襲ってくる。風魔法で倒せるから平気だけど、魔法を使うのもいる。


「死んだ後の方が攻撃魔法を使い放題になってないか?」


そう思っていたが、魔物全集には『アンデッドの一種。奴隷化した死体ゾンビではない』とあった。たしかに魔物なんだな、と思うことがあった。……自己があるから、行動が一律ではない。ただ闇雲に突っ込んでくるスケルトンもいれば、学習して攻撃態勢を変えてくるスケルトンもいる。攻撃魔法も使ってくるし、補助魔法を使うスケルトンすらいる。


「こんなのありえねぇ〜!」


そう叫んだのは、倒したスケルトンを放置して第二陣と接戦していたら、バラバラになったスケルトンが復活したからだ。中には二体がくっついて強化した個体まで現れた。大きさは頭ひとつ分大きいくらいだ。……弱点が風魔法なのは変わらないが。


《 大丈夫。この国には近寄れないよ 》

「なんで?」

《 神獣がいるからね、それも四体も。奴隷化した死体ゾンビにとって、自分たちを昇天させる神獣は天敵ともいえるんだよ 》

「…………救いを求めて寄ってくる、という可能性は?」

《 それは大丈夫。神獣の領域テリトリーに入ったと同時に昇天するから 》

「神獣の領域テリトリーって神域と同等?」

《 アンデッド系にとってはね 》


ここは『精霊以上の存在に見捨てられた大陸』だ。妖精たちも一部を残してほかの大陸へ渡っていった。そのため、ダンジョン都市シティ以外では通常の常識は通用しない。……無秩序が彼らの常識だからこそ、ダンジョン都市シティでトラブルが起き、その結果、独立した地区になった。


《 これからは、神獣たちの存在が守護になる 》

「……魔導具で作れないかな」

《 それはムリ 》

《 排除系でガマンして 》


みんなも私が何を望んでいるのか気付いている。そう、絡まれたくないだけだ。普通の人でもそう思うのだから、私は特にそう思う。

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