第272話


今回、私が『聖魔師テイマーになりたい聖魔士』に絡まれたことが発端で他国も巻き込み、この国の王都と他国の王城を完全に崩壊させて終結した。聖魔士くずれは、何も知らない人たちに魔物として討伐された。


『死後、人の姿に戻れた彼は人間として埋葬された』


情報部からのニュースでそのことを知った。

聖魔士くずれは討伐されても人には戻れない。そして魔物として解体される。彼はまだ早い段階で使役していた神獣たちののろいを断ち切ることができた。そのため、変態は止められなかったが自我は残された。


「檻から出してくれ」

「檻から出たらどうする?」

に、そして兄や姉たちに報復する」


彼の話ではジュールが廃嫡されて聖魔士となったのには、妹の存在がある。妹を含めた王族の女性は外交の道具になる。


「ミスリアは他国に住む聖魔師テイマーに差し出されることになった。国同士の話であって、聖魔師テイマー自身には話が通っていなかった」

「……まって。たしかその聖魔師テイマーは妻子持ちじゃなかった? 私、会ったことがあるよ。優しい奥さんで、あったときは妊婦さんだった。もう生まれているはずだから子供は三人のはず」

「ああ、知っていましたか。彼は妻子と別れてミスリアと結婚してコルスターナに移り住むように強要したのです」


それが一昨年の話らしい。

ミスリアはその結婚を望んではいなかった。愛する家族と引き離して自分と結婚させる見返りはないと理解していたのだ。しかし両国に見返りはあったのだ。



聖魔師テイマーために混乱が絶えない国。それは一方的に悪いことではないはずだったのに、国の方は利益は自分たちの評価でトラブルは聖魔師テイマーのせいだと信じ込んだ。

今まで聖魔師テイマーを住まわせてやっていたんだから。最後くらいは国のためにその身を捧げろ。

そのために妻子を殺そうとした。

それが決定打。妖精の加護を得ているのは聖魔師テイマーのみではない。妖精たちに保護された聖魔師テイマーたち一家は無事に国を脱出した。そして妖精たちの反逆を受けたその国は聖魔師テイマーを取り逃した。

ミスリアは結婚を免れた。だが、安心もしていられなかった。もう一人聖魔師テイマーが残っている。しかし、自分が聖魔師テイマーになれば ミスリアは解放される。そう約束されていた。


「騙されていたんだ」


ミスリアを兄として守ろうとするジュールを邪魔で追い出されたらしい。


「ケンカして多数の人々を殺したって理由で国外追放になったんじゃないの?」

「それは俺たちが国から離れる口実で作られたものだ」

「それでミスリアは母親と追放になったらしいが?」

「……追放? いや、あいつは恋仲だった騎士と結婚したはずだ」


それがミスリアの代わりにジュールが聖魔師テイマーを国に連れて行く交換条件になっていた。その約束が反故にされて、ミスリアと母親が別の町で暮らしていたことは知らないようだった。

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