第257話


無事に正規ルートに戻った私たちは、そのままテントを張り休んだ。そして翌日もテントで過ごすことにした。


《 エミリア。明日は仏様と遊んでいい? 》

「……遊ぶの?」

《 うん。エミリアの持ってた本みたいに磨いてあげるの 》


本……電子書籍のことだ。タブレットにダウンロードしていた旅行雑誌を昨日みんなで見た。お堂の中で一条の光の中で神々しく輝く仏像や大仏を見た妖精たちは、その御姿に魅了されていた。


《 こんなにキレイな姿なのに…… 》

《 なんで? なんでこんなにキレイな仏様なのに…… 》

《 こんな誰もこないダンジョンの、それも地面深くに埋められるくらい『悪いこと』したの? 》

《 酷いよ……。『エミリアの世界の神様』なのに、こんな酷いことして。それでエミリアたちを何十人もさらってきて…… 》

《 エミリアたちの世界をなんだと思ってるの 》

《 大事にしてあげる。エミリアのことも、仏様のことも 》

《 うん。みんなで守ってあげる。この世界に連れてこられたエミリアも、エミリアの世界のものたちも 》


妖精たちは私にしがみついて、私以上にいかり、私よりも傷つき、私の分まで泣いてくれる。おかげで、私の心は落ち着いて、少しずつ前を向いて生きていけるようになった。


「でも、私はみんなに出会えた。ずっと一人で生きていくしかないって、誰も信じられないって思っていた。そんな私がみんなと出会って、みんなと楽しく過ごして、一緒に冒険もできるようになった。私が生きているって信じて、こんな端っこの大陸まで探しにきてくれたミリィさんに出会えた。私の記憶がないことを知って、もう一度最初から関係を築こうとしてくれるミリィさんやエリーさんたちと出会えた。記憶がない私を受け入れてくれたダンジョン都市シティのみんなに出会えた。私は、驚くほどたくさんの優しい人たちに出会えた。……だから、私はシアワセだよ。気持ちも、ココロも」


あのときに女神がみせた夢の通りなら、『あの子』もこの世界のどこかで生まれ変わった。今度は、きっとシアワセな一生を送るだろう。

みんなと抱き合いながら、今はそう言える。だって、この世界にきたとき、私の心は混乱していた。気をゆるめたら、すべての人たちにいかりの矛先を向けて、世界中の人たちを滅ぼしていただろう。いま思い返しても、私はそれほど危険な精神状態だった。

白虎の首に抱きついて顔をうずめる。みんなに可愛がられてサラサラな体毛に癒される。


《 エミリア、大丈夫? 》

《 無理していない? 》

「大丈夫。みんなが一緒だから。……ひとりぼっちじゃないから」

《 独りにしない 》

《 いつも一緒だよ 》

「うん。ありがとう」


知ってるよ。独りにならないよう、私が王都へ行ったときも涙石の中に全員が入ったままだったことを。息をひそめて隠れて、ピピン以外は外がわからないようにしていたから心配してくれていたことも。

ダイバたちも、私が聖魔師テイマーじゃなく普通の冒険者だったとしても、今のように見守ってくれただろう。


《 エミリア。今の私がいるのは、エミリアと出会えたからだよ 》

《 うん。私が今こうしていられるのは、エミリアがみつけて助けてくれたから 》

《 ありがとう、エミリア 》


水と火の妖精が私に抱きついてお礼を言ってくれる。

火の妖精が仮死状態で睡眠薬の液が入ったビン詰めで売られていたのも、で死ぬ直前まで使われて仮死状態になったからだ。


「おあいこ、だね」

《 うん! 》


私の言葉に、二人は笑顔で頷いた。

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