第258話


「コイツはまた……」

「なんっつーモンを持ち帰ってきたんだ」


ダイバとシーズルの二人が見上げる先に立っている……いや、のは…………複数の多重塔。京都で私が昼寝で使っていた東寺の五重塔が現存する多重塔の中で一番高いことで有名だが、それよりも多い七重塔。その分、高さがある。それより低いものの九重塔があったり、八角の多重塔まである。そのせいで、隣に並んでいる十五メートル弱の阿弥陀如来坐像の方が小さく見えるのは致し方ないだろう。

とはいえ、先に阿弥陀如来坐像をだしたから、二人には口をポカーンと開けて驚かれたが……


「『あみだにょらいざぞう』ってなんだ?」

「阿弥陀如来、ていう神様? が座っている姿、らしいよ」

「『ななじゅうのとう』? 屋根が七つあるからか?」


鑑定の魔導具を持っている人たちがお互いに情報を出し合っている。魔導具によって鑑定に差がでるのは、製作者の技量によって変わるから。逆にお守りアミュレットの鑑定が一定なのは、あとからまとめて付与するからだ。

私のアミュレットはポンタくん特製。どんな魔導具より高性能なのは、すでに知られている。

商人に「譲ってくれ!」と頼まれたけど断った。私も商人で職人で冒険者だからね。聖魔師テイマーは特別職だから、私の中では別枠。まあ、アミュレットを欲しがった商人は断られてすぐに諦めた。同業者に迷惑をかけることはご法度だし、アミュレットは複数の効果が付与されている。少なくても三種類、多いと無限大。ポンタくんのアミュレットには十八種類の効果が付与されている。最大限まで達していないため、追加で付与してもらえるらしい。フィシスさんとシェリアさんの二人がオーラムさんの代わりに作ってくれたアミュレットに付与されたのは十三種類。冒険者として必要と思われる機能がほとんど。やはり、王都周辺で起きた魔物の異常行動があったから、身を守るための効果がほとんど。ダンジョンの崩壊などで埋もれないよう、緊急脱出ベイルアウトの機能が付与されたため、許容範囲がいっぱいになってしまったらしい。



他の人たちも外に出てきて、やはり口をポカーンと開けて見上げていた。ダンジョン都市シティの中にいても見えるらしい。一番大きい塔でも百メートルを超えているから。そんな『見たこともない建造物』が現れれば驚くのは当然。そして、近くで見ようとでてきて……言葉を失ったらしい。

そして、そんな連中を見た風の妖精が砂まじりの風を使って、服や口の中に砂を入れるというイタズラをして遊んでいる。ここはダンジョン都市シティの外。荒野にでるのに、布で口を覆うなどの対策をしないから……


「エミリア、コイツはどれだけある? というか、妖精を止めろ。話ができん」

「ふうちゃん、遊ぶならアッチの人たちと遊んで」

《 はあい 》


風の妖精は右手をあげて返事をすると、他の人たち相手に風を送った。



「風に消音効果がついているな?」

「聞き耳たてられても……迷惑だけど害意がなければ問題ないからね」

「ああ、エミリアがイヤな思いするだけだな」

「うん。ということで……なに?」


ダイバを見上げると、彼らは塔に目を向けたまま話を続けた。


「あれはいくつある?」

「塔のこと? あれは九基。像が大小様々で八百三十三体」

「埋もれていた、と言っていたな」

「地面の下深くにね」

「……そんなもん、エミリアや地の妖精以外に見つからなかったはずだ」


埋もれていたルートが正規とは違うと言ってもいいが言わない。そんな私をチラリと見たダイバは、今度は三メートルの千手観音立像に目を向けた。


「コイツはなんだ?」

「千手観音菩薩立像。四十本の手があって、一つの手で二十五の世界を救うことができるんだって」

「あっちは?」

「弥勒菩薩半跏思惟はんかしい像。『慈悲から生まれた』菩薩様で、『将来どのようにして人々を救ったらいいか思い悩んでいる姿』だって」

「……へえ。賢いな」

「でしょ〜」


ダイバに頭を撫でられて、私は嬉しくなった。

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