第32話


昨夜はグッスリ眠れたからか、結構いい値段だったベッドがお値段以上に柔らかく寝心地が良かったせいか、5時にはスッキリと目覚めることが出来ました。

今のうちに、簡単な料理でストックを増やしておこうと、キッチンへ向かいました。

キノコのバターソテーや、エビやキノコのオーブン焼き。かに玉も大量に作って、一部を天津飯にしてみました。エビやキノコのアヒージョも作ってみました。

この世界に『たこ焼きの鉄板』がありましたが、これは『明石焼き』に近いたまご料理に使われる業務用だそうです。普通の家庭では熱くて火傷をすると言われました。確かにこれを鍋のように手で持てば火傷をするでしょう。「コンロに置いてつかいますから」と約束して、やっと購入させてもらえました。業務用のため、窪みは30個もありました。はい。これでたこ焼きも大量に作成。露店で茹でダコの足を購入しておいて良かったです。その横では、フライパンでお好み焼きを作成中。残念ながら中華そばがなかったため、大阪のお好み焼きです。この世界に麺類がないのではなく、職人ギルドにある製麺所みたいなお店が定休日だっただけです。ポンタくんに頼めば、代理購入してくれるでしょう。ですが、自分の目で見てから購入したいのです。今の騒動が落ち着いたら、またお店に行ってみましょう。


そして、料理が完成する度にレシピの登録手続きをしています。かに玉と天津飯は『別物べつもの』として登録になりました。そして、牛乳に漬け込んでいたレバーを使ってニラレバ炒めを作って、下味に漬けた一口大のトリの肉で大量のから揚げと竜田揚げを作った所で、『今朝のクッキング教室』は終了です。

これだけ収納ボックスにあれば、いつでも食べたい時に食べられます。昨夜、疲れた身体で料理をしていたらさらに疲れていたな、と思ったので、今日は朝から作っておきました。


・・・ニラレバ炒めも、から揚げも、竜田揚げもレシピ登録しました。今までは素揚げに近かったのでしょうか?それとも下味や臭み取りなどの下処理をしてこなかったのでしょうか?

もちろん、ミリィさんたちと宿にはレシピが届くようにして、宿には使用料の免除もしました。

昨日、宿には大量にお肉が届いたのですから、しっかり消費してもらいましょう。

キッチンを片付けていると、メールとプレゼントが届いていました。

『お姉ちゃん。おはよ!朝ごはんだよ。食べたらそのまま送って。僕が洗うからね。気をつけて行ってらっしゃい』の文面とともに、モーニングが届けられました。

メールはマーレンくんからですね。テーブルに並べて朝食を頂きました。

トーストに目玉焼き。牛乳にオニオンスープ。サラダには蒸したトリの肉がほぐして入っていました。調味料として塩もあります。サラダに使うためでしょう。それと塩分補給も兼ねて。

食器をトレーに乗せて『ごちそうさま。では行ってきます。マーレンくんも頑張って』とメールしました。


ウォークインクローゼットに入り、冒険者用の服に着替えます。それだけで気持ちが切り替わりました。

テントの入り口でカバンを肩から掛けて、編み上げブーツを履いて、テント内を振り返ります。今日も無事に此処へ帰ってきましょう。そのためには、安全第一です。


「行ってきます」



私は外へ出ると、テントを収納ボックスにしまって、結界石も回収しました。


広場を出ると、すでにフロアには魔物が戻っていました。その魔物たちは、一ヶ所に固まっています。『探知レーダー』を使って確認すると、フロアにいたのは・・・



「エリーさん!」


思わず通話を開いてしまいました。エリーさんは、すぐに「エアちゃん。おはよう」と応答してくれたので、思わず名前を叫んでしまいました。


「なに?どうしたの?エアちゃん」


「二階に人が倒れてて、魔物たちに襲われてます!」


「すぐ行くわ!」


エリーさんと会話しながらでも、広場前から真っ直ぐ土魔法で乾いた道を作り、剣を装備して魔物たちに駆け寄りました。道を作ったため、会話で私に気付いていた魔物たちの一部が襲いかかってきました。しかし、人が倒れている以上、魔法は使えません。昨日同様、雷属性を剣に纏わせて、魔物に斬りかかりました。たとえ倒せなくても、帯電した魔物は水の上に落ちて、勝手に感電死していきます。


「エアちゃん!」


「エアさん!」


やはり一階の広場で夜を明かしていたのでしょう。エリーさんとキッカさんの声が聞こえましたが、見ることは出来ません。まだ魔物がたくさんいるのです。


「エアちゃん!離れて!」


「ダメだ!エリー!エアさんが魔法を使わないのは、彼処あそこに人が倒れてるからだ!どうなってるか此方から分からない以上、魔法は使うな」


「チッ」


エリーさんの舌打ちが聞こえました。その間も、魔物たちを一閃で倒していきます。

どのくらい過ぎたでしょうか。「エアさん!」というキッカさんの声が近くで聞こえて「代わります!下がってください」と言われて、目の前の魔物に剣をひとぎして下がりました。

同時に、とんっと背後に柔らかいものが当たり、「エアちゃん。お疲れさま。あとはキッカに任せて大丈夫よ」と、エリーさんに抱きしめられました。


「エリー・・・さん」


剣を収納ボックスにしまって、エリーさんに抱きつきました。


「エリーさん・・・あの人・・・」


「大丈夫よ。エアちゃんが、魔物の注意を引きつけてくれたから・・・。ほら。よく見て。顔が見えてるでしょ」


エリーさんに言われて倒れている人を見ると、男性が恐怖で固まった表情で此方を見ています。たくさんの魔物に向かっていった私に、怯えているのでしょうか。


「エアちゃん。落ち着いて。まずは『エアちゃんが倒した分の魔物』を回収しましょ」


エリーさんに言われて頷くと『収納』を開始しました。そのままにしていては、他の魔物が隠れていて、終わったと思って気を抜いた頃に襲ってくる可能性もあります。

魔物は『倒した人』に収納の権限があります。パーティでなければ、他の人が収納出来ない仕組みになっています。それは、今みたいな戦闘中に別の冒険者やパーティが盗むのを防ぐためです。ちなみに、所持数などの問題で放置した場合、100時間経つと『所有権の放棄』となり、誰でも拾うことが可能になるそうです。

これで、今残っているのはすべてキッカさんの分です。


「エアちゃん。彼処に人が倒れているの、どうして分かったの?広場からでは死角になってるでしょ?」


「魔物が一ヶ所に集まっていたから・・・探知魔法で確認したら、人が倒れてて・・・」


「そう。よく見つけてくれたわ」


エリーさんが力強く抱きしめて、背中を撫でてくれます。それだけで、少しずつ気持ちが落ち着いていきました。

魔物に襲われた人が生きていた。・・・間に合った。

そのことに、やっと感情が追いついたようで、涙が溢れ出すと共に改めて身体が震えてきて、エリーさんにしがみつくと、何も言わずに背中を撫で続けてくれました。



「エリー!コイツで終わりだ!・・・これで、もういないか?」


「エアちゃん。どう?」


「・・・いません。いえ。階段の近くにいたけど、三階へ逃げていきました」


「それは後でエアちゃんが倒せばいいわね」


安全を確認すると、キッカさんは剣を鞘にしまって、倒れている男性に回復魔法を掛けています。エリーさんに支えられながら、身体を起こして座り込んでいる男性に近付くと、ギョッとした表情を向けられてしまいました。


「・・・エリー」


「・・・こんな所に『隠れていた』のか」


この男性は、エリーさんの知り合いなのでしょうか?


「アルニス・・・。いや、アルファニコス。お前は王都に連行して守備隊に預ける。・・・エアちゃん。コイツは傷つき倒れた仲間を置き去りにしたんだよ」


「エアさんが見つけた一階の奥。彼処にいたのが、治療もされずに荷物をすべて奪われて置き去りにされた、この男の仲間でした。・・・そしてこの男は『北部守備隊』だった男です」


「あの『土の壁』は、コイツが張ったものだ。中の人は衰弱してたけど無事だった。エアちゃんが気付かなかったら、あと数日で死んでいた」


「・・・何故、あの壁に気付いた。あれは簡単に気付けないハズだ」


男性は、私に目を向けてきました。その目はすでに諦めに近い、弱々しい『眼力めぢから』です。


「フィシスさんが言ってくれたんです。『一階か二階の広場で休むのよ』って。でも一階に広場がありませんでした。フィシスさんが、『ない場所で休め』なんて言うはずがありません」


「フィシスが勘違いしたと思わなかったのか」


フィシスさんを知っているような言い方ですね。エリーさんたちも知っている人みたいですし。


「もし勘違いなら、その場にいたエリーさんたちが訂正しているはずです。それで壁に触れたら、わずかに魔法が掛かっていました。魔法は効かなかったけど・・・試しに中に声を掛けてみたら、微かに人が動く気配がしたから、エリーさんに連絡しました」


「エアさんは『土魔法』が使える。その彼女が『壁の向こうに人がいる』と言うんだ。魔法が効かなくても、オレたちには腕力がある。広場まで人力で穴を掘って行ったんだ」


「アルニス。お前は壁の異変それを感じ取って、慌てて此処まで戻ってきたんだろ。・・・他の仲間はどうした?」


下に向けて探知レーダーで調べてみると、すぐ近くに人の気配がありました。


「四階・・・の、広場に、たくさんの人たちがいます。・・・何、を・・・え?」


「エアちゃん?」


「エアさん?一体なにが?」


心配したエリーさんとキッカさんが、私の顔を覗き込みました。


「その人たち・・・女の人たちを」


「まて!アルニス!お前らは『男パーティ』だったはずだ!」


「落ち着け、キッカ。・・・『そういうこと』だ」


キッカさんが、いかりで座り込んでいる男性の胸ぐらを左手で掴んで持ち上げたのを、エリーさんが止めました。キッカさんの右手は握りこぶしを作っています。


「・・・エアちゃん。広場に戻ってフィシスに連絡してくれる?私が『女性の手が必要だ』と言っていると伝えれば分かるはずよ」


「はい。分かりました。・・・この道、残したままの方がいいですか?」


そう。広場から真っ直ぐ伸びた道は、私が作ったものです。


「そうね。今はまだ残しててくれる?」


「分かりました。では連絡してきます」


「うん。お願いね。キッカ。私たちは上に残ってる連中と『今後』の話をするわよ」


「ああ。分かった」


私は自分の作った道を通って広場に戻ると、フィシスさんに通話を開きました。


「エアちゃん?どうしたの?何かあった?」


「なになに?エアちゃん?」


「えっ!エアちゃ〜ん!」


「だからミリィ。エアちゃんは『迷宮の中』だから大声は禁止よ」


変わらない皆さんの声に、ホッと安心しました。


「それで、エアちゃん。メールじゃなく直接通話してきたって事は何かあったの?」


「・・・エリーさんからの伝言です。『女性の手が必要だ』。それだけで分かると言われました」


「そう。それでエリーは?」


「いま、キッカさんや他の人たちと一緒に、今後の話をしています」


「そう。・・・此方は準備が整い次第、出発するわ。何階に行けばいい?」


「えっと・・・。たぶん四階、です」


「え?エアちゃん。どういうこと?」


私の言葉にフィシスさんたちは戸惑っています。私たちが、救助の必要な人たちをすでに保護したと思っていたのでしょうか?


「まだ・・・二階です。その・・・ちょっと、私もよく分からなくて・・・ごめんなさい」


「あっ!別にエアちゃんのせいじゃないから心配しないで」


「大丈夫よ。その事はエリーに聞くから。それでエアちゃんは昨日、二階に泊まったのね?」


「はい。・・・あの、昨日、一階の広場に泊まれなかったので」


「ああ。エアちゃんはその事、何か聞いてる?」


「詳しいことは特に。ですが、キッカさんの話では『広場まで掘った』と」


「遅くまで掛かったのかしら?エリーからは何も連絡来てないわね」


「私、酷いことしちゃった・・・」


昨日遅くまで作業してたエリーさんを、朝早くに叩き起こしてしまいました。


「なーに、気にしちゃってるの?この子は」


背後から声が聞こえて、抱きしめられました。


「そうですよ、エアさん。あれだけの魔物を剣一本で立ち向かってくれたから、アルニスは生きていますし、『いま起きている被害』を知ることが出来ました」


「でも、昨日遅くまで作業してたのでしょ?疲れてるのに・・・」


「それほど遅いわけではないわ。日付が変わる頃には、保護した相手の回復もある程度は終わって寝てたわよ」


「それにエアさんが連絡くれたときは、すでに起きていました。大体、守備隊にいた頃は、2日3日の徹夜は当たり前でしたから。それより、暴走しがちな隊長たちを押さえ込む方が、何よりも重労働でした!」


「ちょっとキッカ!エアちゃんに余計なこと言わないで!」


「失礼ね。私は暴走しなかったわよ。・・・時々しか」


「フィシス隊長。もうボケですか?曲がるのは『お肌と性格』だけにして下さい。確かにミリィ隊長は一番暴走していましたが、二番手はフィシス隊長。貴女ですよ?」


「ダレの何が曲がってるですってー?!」


「フィシス隊長の、鼻とお肌と性格と根性です」


「ちょっと。キッカ!」


「そろそろ、腰と背中も曲がり始めましたか?」


二人のやり取りが楽しくて、思わずクスクスと笑っていたら、エリーさんから「さあ。そろそろ動きましょう」と言われました。


「さっきの人は?」


「拘束して、上の広場で残る待機組に預けたわ。残りはフィシスたちが入るときに合流して降りてくるから、私たちは先に四階に行くわよ。エアちゃんの『食材集め』を横取りする気はないから」


「さっきも十分食材を分けて貰ったので、今夜の夕食になりますね」


「あ!昨日、私の泊まってる宿に冒険者さんが来て、私から預かったと言ってコッコの肉やたまごを置いていったそうだけど・・・キッカさんたちですよね?」


「ええ。我々はコッコと戦ってみたかっただけですので」


「宿のみんなも喜んでいました。ありがとうございます」


「大丈夫だ。キッカたちは、しっかり自分たちの分は残したから」


「それを昨日、しっかり食べたのは誰です?」


「保護した奴の状態が良かったからな。たまご粥にした」


「貴女も食べましたよね?肉を」


「エアちゃーん。キッカの奴、私を除け者にして自分たちだけでトリの肉を食うつもりだったんだよ」


「何、人聞きの悪いことを言っているんですか!」


「大丈夫ですよ。キッカさんは、何も言わなくても分けてくれますよ。だって、宿に肉やたまごを届けてくれたんですから」


私の言葉にエリーさんとキッカさんは動きを止めたあと、「やっぱりエアちゃんはいい子なんだから〜!」と笑いながら抱きしめて来ました。キッカさんは苦笑いしています。


「さあ。此方コッチの準備は済んだわ。今から馬車で其方そちらへ向かうからお願いね」


「分かった。じゃあ、私たちも行きましょ」


「はい。フィシスさん。階段まで『道』を作っておきますので、その道を通って来てください」


そう言って通話を切ると、私たちは広場を出ました。そのまま、魔物たちまで伸ばした道を消し、下の階へ続く階段の前から上の階へ続く入り口まで、新たな道を繋ぎました。


「これなら、シェリルさんたちも真っ直ぐ来られますよね?四階の人たちを保護したあとも、最短で戻れますし」


「そうね。・・・その道に何か仕掛けをしたの?」


「はい。明後日の午前中まで、この道が残るように。12時を過ぎたら、この道に使った土は元の場所に戻ります」


「そんな事が出来るの?」


「形状の維持を時間で制限しました。これなら、此処へ来て『もとに戻す』必要はありませんから」


「そうね。私たちは状況によっては明日まで掛かるから。道を戻すためにエアちゃんがずっと付きっきりで私たちといるより、エアちゃんには自分の時間を有効に使ってくれると、私たちも気にしなくて済むからいいわ」


「あ!別にエアさんを邪魔とか思っていません。ただ、エアさんに救助で手を借りてしまうと、攻略を中止して王都へ戻って頂く事になります。それでは我々も大変心苦しいので・・・」


エリーさんの言葉のフォローを、キッカさんがしています。エリーさんも「あ。言い方が悪かったわね」と気付いたようです。


「私は手伝わない方がいいですか?」


「そうね。あくまでエアちゃんは『偶然居合わせた冒険者』の方がいいわ。実際、このダンジョンにはエアちゃんが先に入ってたし。エアちゃんが二階で魔物に襲われていた人に気付いて助けようとして、私たちはあとから駆けつけたって所ね」


「それに、もしエアさんから手を借りてしまうと、『功労者』として王都やこの国から出られなくなります。・・・国に有益な存在を、国から出られないように叙爵じょしゃくさせて領地を与えるでしょう。エアさんのような女性の場合、叙爵後に別の貴族に『王命』で結婚させて幽閉飼い殺しにされます」


「冒険者なのに?」


「王族や貴族連中は、「冒険者になるのは金がないからだ。だったらカネをチラつかせれば飛びついてくるに決まっている。歯向かうなら『王命』で言うことを聞かせればいい」という考えなんです」


「私・・・お金ならたぶん王都の中央区に立派な屋敷が買えるくらい持っています。それに、自由に生きたいから『冒険者』なんだけど」


「冒険者には納税義務とかないからね。だったら『国民』にしてカネを搾り取る方がいい。貴族にして枯れた領地を与えれば、運が良ければ領地開拓されるだろうし、それに失敗しても、今まで通りに領民から搾り取ればいいという魂胆よ」


「・・・そんな王族や貴族。この国の人たちに必要なの?ただでさえ王都に『貧困層スラム』もあるのに。さらに増えるだけじゃない」


「上の連中は、それが分からないのよ」


私たちはそんな話をしながら、三階にも道を作って短時間で通り過ぎました。

三階に残り一段という位置で、探知レーダーで人がいないのを確認して、前日同様『静電気スタティック』の小さな球を落とすと、フロア全体に放電現象スパークが起きました。それが落ち着くまでは『収納』で水苔などの採取をし、安全が確認出来てから魔物を収納しました。

それから、フロア全体から土を集めて、下の階へ続く道を作りました。最初は地面を平らにしようと思ったのですが、湿度が高いため地面が濡れてしまいます。濡れると足を滑らせてしまう可能性があるので、周りより高い道で『乾燥』の魔法を掛けておきました。これなら、明後日まではもつでしょう。



「本当にエアさんは、状況を正しく読み解きますね」


「だから『ソロ』でもやっていけるのよ。逆に誰かが一緒では『足手まとい』にしかならないわ」


キッカさんとエリーさんが、私の『魔物討伐』と『採取方法』に感心してくれています。二人は特に初心者に対して「パーティを作れ」と言ってきたそうですが、私の『実戦』を目の当たりにして、私には逆にパーティは足手まといにしかならないと判断したそうです。今でも私をパーティに入れようと『パーティ申請書』がチラホラ来てるそうです。それを私が一つずつ断るより、『冒険者ギルド』が窓口で申請拒否をする方が良いと、エリーさんは考えているみたいです。

ちなみに、初心者をパーティに入れる理由の一つに『雑用係』があるそうです。住処アジトを持っているパーティは多くあり、下働きとして家で働かせるためと、ダンジョンに入るときの荷物持ち。もちろん無給。

エリーさんとキッカさんの話では、一階の奥に取り残されていた人も、そんな一人だったそうです。


「私・・・イヤです」


「当たり前でしょ。私たちもエアちゃんの実力は分かってるからね。パーティの申請はギルドが責任持って断るわよ」


「もし『なにか』言われた時は、我々の名前を出して下さい」


「良いのですか?」


「ええ。王都所属のパーティで、我々を知らない冒険者はいません。それでもしつこくエアさんに手を出してきたら・・・」


「私が遠慮なく叩き潰す」


「我々にも残して下さい」


私の後見人たちは、血の気が多いようです。

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