第9章 戦闘
第45話 戦闘準備
朝。
昨日ファナからもらったサンドイッチをゆっくり味わって食べる。
朝食も用意してあるようだが俺はこれがいい。
具に入っているバリケンのリエットは最初は俺がファナに教えたレシピ。
でもその後のファナの工夫で最初より大分美味しくなっている。
豆ペーストと一緒に食べると絶品だ。
身支度をして集合場所の遺跡前まで出向く。
既にかなりの人数が集まっていた。
槍だの色々武装を準備している者もいる。
というか俺みたいな普段着装備無しはごく少数。
ほとんどは色々それっぽい装備を着込んでいる。
あれは効果があるのだろうか。
ゲーム側の知識があまり無い俺にはわからない。
「よう、遅かったな」
ジョンは既に来ていた。
奴もフル装備組だ。
魔法戦士用らしい漆黒の革鎧上下に籠手、ブーツと一通り装備している。
「サクヤは装備それでいいのか。何も準備していないように見えるんだが」
「身軽な方が楽だ。敵の攻撃など『当たらなければどうということはない』」
「その台詞は縁起が悪いぞ。後で『火力が違いすぎる!』と驚く羽目になりそうだからな」
奴は正常運転の模様だ。
「それで実は俺達の方からサクヤに頼みがある。
敵が停滞している谷間は現在魔の気が充満していてあまりいい環境じゃねえ。そこで攻撃前に何人かで
その担当をサクヤに頼みたい」
なるほど。
確かにそれは必要だ。
「いいだろう。でも何故俺に頼むんだ?」
「サクヤ以外にも8人程頼んでいる。俺自身も浄化に参加する予定だ。
ただ浄化作業が必要とわかってもだ。ゲームのランカー狙いで功績点を稼ぎたいような戦闘バカはこういった作業はやりたがらねえ。戦闘で使える魔力が減るからな。だから戦闘バカじゃなくてこの世界を楽しむ方を目的としている感じの奴中心に頼んでいる訳だ」
「なるほど。苦労しているな、ジョンも」
「俺の目的は獣人さん達をもふる事だからな」
この辺はケモナー、目的意識にブレが無い。
「じゃあ後は現場で説明する。頼むな」
そう言ってジョンは全員の前の方へ。
「さて、そろそろ揃ったようだから説明するぞ。敵はここから健脚で10分程度南に行った場所にある谷間に停滞している。谷間の下側と囲む尾根の途中まではこっちの結界線を張ってあるが中はとんでも無い状況だ。
とりあえず到着したら何人かで浄化魔法をかけて魔の気を浄化する。その後ドカンと一発風魔法で合図する。
そこからは自由だ。それぞれ大魔法使い以上の称号持ちだから指示なんてする必要も無いだろう。功績点を稼ぎまくれ。ただ他人の妨害はするなよ。以上だ」
うーむ、なかなかやるな、ジョン。
実は社員という事は無いだろうか。
でもあのケモナーは地のような気もするけれどな。
まあとりあえずありがたくジョンの作戦に乗ることにしよう。
「この街道沿い10分のところに小さな小屋がある。谷間の入口で結界線を張っている連中が使っている小屋だ。そこが次の集合地点だ。じゃ行くぞ」
そんな訳で各自健脚で移動を開始する。
俺もぶつからない程度に間をあけて走り出した。
走り出してすぐ気づく。
以前谷間の廃村に向かった時と同じだ。
感じる確かな違和感。
おそらくこの違和感の理由は生物の少なさだけではない。
俺自身の感覚が魔の気とやらを感じているのだ。
そしてその強さはかつて谷間の廃村で感じたものとは比べられない位大きい。
生ある者なら近づきたいと思えないような嫌な感じの冷たさを感じる。
それが近づいてくるのがわかる。
あっさりと集合地点らしい場所に到着した。
小屋そのものの中には気配は無い。
戦闘前に退避したのだろうか。
ジョンが手招きしている。
近づいてみると見覚えある顔がもう1人いた。
ローサだ。
俺とは違って赤く染めた革鎧一式に魔法使い用のロッドまで装備している。
「ローサも完全装備なんだな」
「当り前でしょ。ボス相手の戦闘にそんな普段着装備で来る方がおかしいわよ」
「生憎戦闘用の装備は持っていないしな」
「何なら貸しましょうか」
「慣れていない物をいきなり使うのはやめておくよ」
なんて挨拶をした後、ジョンから俺やローサを含む8人程に説明が入る。
「この8人、俺を入れて9人は全員賢者レベルの魔法使いだ。この8人で浄化魔法をかける。まずは一番下の位置から俺が
浄化効果がある程度生き渡ったら俺が風魔法で突撃の合図を鳴らす。あとは自由にやってくれ」
「ポジションはどうする?」
「これから説明する。俺の位置がこの小屋の裏側100m先だ。そこから結界線の白いロープが張ってある。それに沿って進んでくれ。所々に赤い結び目があるからそこが呪文をかける目印だ。
まずはここから見て右側。手前から見て最初がマナ、2番目がバルガス、3番目がマヌエル、4番目がローサ。
左側が手前から順にケビン、リラール、アドリアン、サクヤだ。
これから10分後に浄化を始める。それじゃ頼む」
移動開始だ。
小屋の裏側からまっすぐ行くと確かにロープが張ってあった。
俺は左側4番目だよな。
念のため健脚で走りつつ自分の場所へ。
ロープの向こうはもう見なくても空気の重さがわかる状態だ。
それに危険な感じのピリピリした感触まである。
中は相当とんでもない事になっているだろう。
北征軍が全滅しているというのは確かなようだ。
この中で通常の人間が生きていけるとはとても思えない。
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