第599話

 そして全て話し終わってからというもの。その日は彼がやっと気を利かせて「気にしない」の一言で済ませて抱き寄せてもう一回戦。

 彼女の目から光が少し減っていたし、彼はそれに気付いていたけれど半年の間は今まで通りかなほぼほぼ。

 でも、その日からだね彼女の奉仕の仕方が変わったのは。

 どう変わったって言われると具体例を出すのは字面的に憚れるんだけど。

 ん~。簡単に言えば一般寄りのもしてくれるようになった……かな。

 所謂子作り以外もしてくれるってこと。道具は嫌がるけど……あーほら。あれよ。最後の最後で子供ができないようにする行動ってあるじゃない? あれとか、最初から上でとかその少し下の柔らかいとこを使って最後までしてくれるようになったって感じ。

 今までの彼女は子供ができないとわかっていても子作りに固執してたからしてくれなかったけれど。

 今はできるだけ捨てられたくなくてその為の行為をしてるって感じ。

 だから、まぁ今までよりも純粋には楽しめてないね。

 捨てられたくない。もっと長く使われたい。その一心での奉仕。

 行為に夢中になることはほとんどなくなって。彼が楽しめているかしか考えられない。

 もちろん子作りしてくれたら否が応にも体が反応してしまうけれど。でも、彼が楽しめてるかが第一。

 ねぇ。それって男性からしたらどうなんだろうね? 幸せかな? 気持ちいいのかな?

 彼の場合はちゃんと幸せではあるし、好きなことをもっとさせてくれるししてくれるんだから悦いに決まってる。

 でも罪悪感もあるんだよ。彼女が楽しめなくなってるのはあからさまだから。

 かといって不安を覆せるなにかを今すぐ用意できるってわけでもなかったからさ。彼、半年間お仕事辛くても頑張ったんだよね。覆すための物を用意する費用のために。生活費は彼女が出しちゃうからお給料丸々自分の手元に入るから他人よりマシだけどさ。それでも半年分ほとんど使わずに残してるんだよねー。

 で、昼はそういった感じで真面目に働いて、夜は彼女の不安を和らげるために思いっきり求めて。奉仕させて。受け止めて。

 昼は仕事で体を酷使。

 彼女も彼の疲労がわかるからマッサージ。ついでにそのまま営みへ。

 あるよねー。そういうシチュのコンテンツ。ナニとは言わないけど。

 それで半年分のお給料さ。何に使ったと思う?

 まぁ大体わかるよね。彼女を安心させるための物って言えばさ。言葉とセットで贈るじゃない。

「あの……俺が死ぬまで一緒にいてくれないっすか」

「――――はいっ」

 結婚指輪とプロポーズの言葉だよ。

 ザ・相場だね。

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