第579話
「はぁ~……」
放課後。結局あれから返事はあるにはあったけれど、かいつまんで言えば保留にされちゃった。
だから彼は今日一日やきもきもんもんとしてたわけなのだけれど。
実は今、大変なことになってるんだよねぇ。
「大女様。そういえば昨夜の相談なんですが」
「……………………ハッ!? 返事しとらん! あっかーーーーーん!!!」
「あぁいえ、返事は私がしときました。保留にしておいたんで大丈夫ですよ」
「ほ、ほんま? う、うち既読無視とか初めてしてもうたんやけど。き、嫌われたりせぇへん?」
「では今度お詫びにキスの一つでもすれば良いと思いますよ。男なんてそんなんで大体のことは許してくれますよ。まして思春期男子なんてチョロいもんです」
「ほ、ほうかなぁ~? ほうかなぁ~?」
(あぁ可愛い。でも声音をあのガキが出させてると思うとムカつく)
自分から振って焚き付けたくせに。
「で、私個人的に考えたんですが。今からお宅にうかがって説明などいかがかと」
「へ?」
「今ならお父さんは仕事でもお母さんはいらっしゃいますでしょ? 彼女うんぬんはお母さんがおっしゃったようですし、彼がいたら大女様暴走しかねないのでいないうちに解決をと」
「そ、そういうことなら……うん。ええんかな?」
「いいんです。では行きましょ。今回は短い
「長いの目立つし、迷惑かかるやんな。それでええよ」
「ではそのように」
ということで。レッツゴーしたわけ。
「は~……………………い」
インターホンが鳴ったので誰が来たのかチェック。
言葉が詰まったのは……まぁ、うん。二人のうち一人はスーツの女性で普通なのだけれど、もう片方が鬼の仮面をつけた着物の人がいたから。
お察しの通りあの二人。
(え、なに。新手の宗教?)
そう思うのもわかる。わかるよ。鬼の面つけた着物の女とか怖いよね。うんうん。
「すみません。
(は~……面倒なのが来ちゃ――って、和宮内さんって確か)
その時、
いつの日だったか、夫がその名を口にしていたことを思い出したのだ……っ! つってな。
「す、すみません! ど、どうぞ!」
「「……?」」
「では、失礼します」
慌てた様子で迎えられ不思議に思うも、用があるのは変わらないのでそのまま招かれる。
「い、今お茶を入れるのでどうぞおくつろぎください~……」
「お構いなく」
「そんなそんな……! 少々お待ちください」
「では、お言葉に甘えて。大女様、こちらへどうぞ」
「うん。ありがと」
(随分緊張なされてるし、ここは彼女の落ち着く時間も取った方がいいか)
さすがに大人な雪日ちゃん。空気読んで椅子に座って待つことに。
で、お茶を入れている間に考える時間ができたのは良いんだけれど。
(お、大女様ってなに!? 様呼びだからお偉いさんなのはわかるけど……! あぁもう! あの人ったらなんで重役が来るって言ってくれなかったの!?)
そりゃその旦那さんも知らないからね。湯沸かしてる間にスマホいじってるとこ悪いけども。
(と、とにかくおもてなししなきゃ……。もしかしたら私の粗相であの人がクビになっちゃりするかもだもの!)
良い感じに緊張してきてるねぇ。可哀想。
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