第569話

「あ~、そういえばなんですけど」

「はい?」

 おっぱいガン見から声をかけられて動揺していたのを誤魔化すように会話を続けようと試みる彼。

 彼女からでなく、彼からアクションを起こしたね。

 ま、普通に気になってたことを聞くだけなんだけどさ。

「なんで……その……敬語なんすか?」

 いきなり言葉遣いが変わったのが気になってたってことね。

 そりゃあ最初は年上のおば……おねえさん的な感じが急に下手したてに来たら違和感はあるね。

 シてる時は彼も指摘しなかったんだけど、そのことについては。

(プレイ的なのかと思ってたけど、ずっとなのはちょっと……)

 ということだから。うん。一時的かなってね。

 が、終わってからずーっとそういうことも仕事に含まれる侍女の如くしているものだからそら気になるよね。

「嫌……ですか?」

「嫌ってわけじゃ……ただ……その……居心地が……」

「そう……ですか……」

(ぅ……。なんか悪いことしてる気分……)

 ややしょんぼりする彼女に罪悪感が芽生えるのは良いんだけどさ。君、もっと凄いことしてるんだから些細とは思えんか? 思えんな。小心者ちっちぇものね。

 これが寝ぼけたときとそうでないときの感度の違いだーね。

 さて、話を戻して。彼としては少なくとも普段は敬語はあまりしないでほしいという気持ち。

 彼女としては彼に付き従いたい願望をお持ち。

 でも彼女は彼に嫌な思いをさせるのが一番嫌。だからここは引く。

「わかり……ううん。わかった。ほんならは控えるね」

「あ、そうしていただけると」

 ま、ワガママは一つ、必ず突き通すつもりだけどね。彼女。

「じゃあ、ほういうことなら、少しだけ積極的になっても良いかな?」

 切り替えマッハ彼女は彼を背もたれにしてた体勢から横向きに。側頭部が右の鎖骨に乗る形になったね。

「ぉ、ぉぉぅ……」

 そうすることで腕でこう……寄せる感じになりましてな。そらに横向きになったから谷間がガッツリ目に入るわけですわ。

「ごくり」

「はら?」

 文字通り垂涎モノの光景。であれば男の子は……ねぇ~。仕方ないね。

「最後にもっかいしはりますか?」

「いや、さすがにもう……」

「ほうですか。残念」

 と、言いつつ彼女わかっててやってるからねこれ。断られるのはわかってた。

 加えて優位になるようなことをしたのはやっぱね。母性のほうに切り替えたからかな。

(ま、これはこれでええし)

 深くはないにしても触れ合ってはいるからね。十二分に幸福。

 だから今日のところはこれで終わっても良いと思ってたんだけれど。

「で、でも……そうっすね……」

「……?」

「き、キスだけ……とか」

「――――」

 あは~。肌の触れ合い以上を諦めてたところに粘膜接触を求められたら滾っちまうねぇ~。抑えるのが大変だぁ。

「あ、でもええの? だってさっき……」

「い、良いっすよ別に。自分のだし。それ以上に花菜さんとその……したいし」

「~~~~~~っ。は、はい……」

 なんで彼女が躊躇したかは……察しておくれ。

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