第559話
「うわ、すげ」
「映画みたいだなぁ!」
外まで来ると見えるのは校門前に止まってるリムジン。別名大女様用護送車。
いや別に悪いことしてるわけではないんだけど、字面的に護りながら送らないといけない人だからね。そう呼ばれてるみたいよ。送迎車とかでも良いと思うんだけどそれには理由があって。
「えっと……あれが……そうだよな?」
「うん。たぶん
「いつもあんなん乗ってんの? あんたも」
「いや、正直この目で見るのも初めて。大女様も普段はもっと小さい車で送迎されてるからそれと、一応言っとくと本家はそれなりに派手だったりお金使うとこには使ってるけど私ん家は一般家庭と大差ないから。習い事とかは本家からお金出してもらえるけど。それ以外は普通だから」
「へ、へー」
という感じの理由で夕美斗ちゃんすら見たことないっていうね。
そらそうでしょ。移動するだけならいらねぇもんこんななっがくて面倒な車。目立つし。デカいならミニバスとかマイクロバスで良いよね。
「ちょ、ちょっとごめん。親戚に聞きたいことがあるからメッセージ送るね」
「……どうぞ」
『なんでリムジンなの?』
『金持ちアピール』
『なぜ?』
『色々と考えた結果』
『説明を求めてるんですけど』
『美人局と勘違いさせないことと。私的には不本意だが大女様とこれから長い付き合いをするならば金が目的になっても良いという理由。体と金二つが目的ならより縛りやすいでしょう? ついでに半端な金持ちだと騙して端金とってやるかーとなるが、超大金持ちなら下手なことをしたらわかってんだろうなってなると思った結果これになった』
(な、なんちゅーこと考えて……。やっぱり雪日姉さん頭のネジ飛んでないかな? 飛んでるか。でなければこんな愉快に想像膨らませられないよね)
辛辣なことを考えつつ、とりあえず答えは得ることはできたと。
得てしまったと。
そしたらば。
「じゃ、じゃあ行こうか?」
「超気が進まないんだけど」
注目の的だもんねー。そりゃ近づきたくないでしょうよ。
「……気持ちはわかる。でももう来ちゃってるし。天良寺君も会いたいでしょ?」
「まぁ……うん……少しだけさっきよりもさらに嫌寄りになったけど……辛うじてまだ……う~ん……」
「良いから行こうぜ! 才の良い
「テメェ他人事だと――あ~……」
抗議しようとしたところで友人に引きずられていく彼。フィジカルで勝てないことはわかってるのでされるがまま。
「……………………ま、いいか」
夕美斗ちゃんは一瞬引きずるのはどうかと声をかけようと思ったけれど。ごねられるのも面倒だと思ってソッと止めようとした手を下ろし、後に続く。
……一応彼らから十歩ほど後ろから。
彼女も彼女でリムジンなんていう色物に先陣切って近づくのは勇気がいるってことだね。
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