第555話
「ふ~ん? なにそのお姫様みたいな人。なんで大事にされてんの? 叔母ってことはそこそこ年いってるようだけど?」
「う~ん。お姫様というより女王様のが近いけどね。いや、皇太后かな?」
「Wow」
「マジで?」
「大マジでそれくらいは特別な人だよ。だから冬休みちょっと遊んだだけの君のことも顧客情報から調べるし気にする。国に例えたら一番の要人で、うちの実家はそこそこ古いしそこそこお金持ちだからやれちゃうってのもあるけど」
(今一部強調してしゃべったよな? それに目も一瞬キツくなってたような……。やっぱ正確にナニをしたかわかってるってこと……だよな)
圧をかけられ、冷や汗は止まず。けれど咎めるためには来てないだろうってこともわかって喉が詰まることはなくなりなんとか食事は続けられるようになった様子。
そして、彼女の方も今までの彼を観察して気づいたことがあるみたい。
(う~ん。強気に見える口調だけど私の語気に気づくくらい臆病で隠してるようだけど緊張もしてるっぽい? 根は暗くて気弱な雰囲気。となるとやっぱり寝ぼけてやらかしたって言われた方がしっくりくるかも。探りはもう入れなくて良いかな。ちゃんと本題に入ったほうがよさそ。ついでに私情も挟みたい)
鋭っ。魔法とかそういうのがないのにこっちのほうが察し良くないこの子?
う~ん……改めて見ると……やっぱり調整ミスってる? 邪魔されながらだし仕方ないけれど。お互い様だし尚仕方なし。
「だから天良寺君。うちの大女様の相手してくれてありがとう。大女様も君のことは気に入ったご様子でね。とても楽しい
「そ、そうっすか。それはよかったっす」
「ところで個人的に聞きたいことが二つあるんだけど」
「な、なに? ですか?」
「そう緊張しないで。本当に実家とはあまり関係ないことだから。……片方は」
(なんだよその言い方……。そのお家が関わってるほうめちゃめちゃ怖くなるじゃんか……!)
身構えざるを得ない言い方に背中ビショビショ。マジで風邪引くぜ? このとき一月だもの。
「じゃあまず私が気になってることなんだけど……」
「お、おう……」
「大女様の御尊顔を存じてると聞きまして」
「……?」
「顔、見たんでしょ?」
「ま、まぁ……」
「ど、どんなだった!?」
「ぅぉ!?」
「ふぁ……っ! じ!」
身を乗り出してこられちゃビックリもする。ついでにお隣も驚いてる。
ふぁっじってなんぞやという方に軽く補足すると、『く』じゃマズいからとっさに『じ』に変えたわけ。ほら、男子だけならともかく女子の前なのでね。
「ご、ごめん。でも私も見たことなくて……」
はしたなかったと反省しつつ座り直し、口元を隠しながら彼の様子をうかがう。
彼は彼でなんで気になるか不思議に思いつつ、そういえば自分をブスとか言ってたしお面をつけてることを思い出して勝手に質問の理由に納得。
その上で。
(どう答えたらいんだろ? あの人身内にも自分の顔隠してたんだし。ここで言っていいものか……)
(あ……。聞いてるんだ……)
唸りつつ悩んでる彼を見て、夕美斗ちゃんは彼女の面について知っていることを察したみたい。
だから半ば諦めるんだけど。
「えっと……あんたの顔をやや丸顔にして、もっと目を大きくした上で半目にしたような顔……かなぁ?」
「え……」
彼から答えを聞けてビックリお目目もぱっちりってね。
「じゃ、じゃああの……大女様のお顔って……その……」
「俺からするととんでもない美人」
「そ、そうなんだ……」
そう。それが聞きたかったんだよね。ブスかどうかをさ。
それで、少なくとも目の前の彼女が気に入った男からすれば好みの見た目ではあることを知れて嬉しそう。
(そっか。じゃあ大おばあちゃんが大袈裟なだけたったんだ。それに、このぶんなら次の問いの心配はなさそう)
「ありがと。じゃあ二つ目。本家からだけど」
「お、おう」
「大女様のこと、どう思ってる?」
「――――」
(……ん? あ、あれ?)
する側は無問題と思っていても、された側はピシリと固まってしまった。
どうやら、お互いまだまだ認識のズレがあるようだね。
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