第546話
そして一週間が過ぎて。冬休みも明けた今日この頃。
授業と授業の合間に机に突っ伏している生徒が一人。
「……はぁ~」
鬱そうにため息をつくのはもちろん彼。
何故憂鬱なのか。なんならやつれ気味なのか。
それは休みが明けちゃったからじゃないんだよね~。
もったいぶってもアレだから……おっと。
「おいおいなんだよさっちゃんよぉ。ずいぶん景気悪そうじゃんか」
「あ?」
あらら。間が悪い。私の方にだけど。ま、良いけどさ。
さて、彼に声をかけたのはちょっと派手な見た目の女の子。
オレンジに近い明るめの茶髪に黒と白のメッシュ。ピンで少しだけ髪を留めていて、制服を着崩してるこの子の名前は――。
「
そ。
前の席の机に座って、椅子に足を置いてとーってもお行儀の悪いギャルだよ。
これが他人の席だったらダメだけど。あいにくと他人ではないんだよね普段そこに座ってるのは――。
ま、伊鶴ちゃんの席でもないけど。
「あ!」
お手洗いから戻ってきた本来その席に座ってる子が戻ってきたね。
「ちょっと伊鶴ちゃん! せめて上履き脱いでよ! 汚いなぁもう!」
髪の色素は薄く、肌の色素は濃い。黒縁メガネをかけて髪はおさげにしてまとめてるのにクラスの中、はては学年でも目立つ風貌のこの子は。
「よっすタミー。立派なの出た?」
でも彼女。超優等生だよ。生徒会入ってるし。来年には会長に立候補する予定ってくらいね。
まぁ、幼馴染みの伊鶴ちゃんのせいで変な目で見られることも多々あるけど。それを覆すくらい頑張ってるよ。
「……デリカシーって言葉知ってる?」
「デリカシーって生理現象に必要かえ?」
「必要です!」
「うるっさ。声荒げないでよ~。生理現象だけに生理? それとも便秘?」
「貴女に対するストレスよ! 第一こんな短時間にできるかぁ!」
「そらそうか」
授業の合間で足せる用なんて小さい方だけだよ。
それかよっぽど腹筋強い人とか?
でも無理して出すと痔とかになるからあんまり力んじゃダメなんだよねー。
と、そんなことは置いといてと。
「とにかくどいて」
「はいはい。で、さっちゃんはどうしたんだい?」
「別になんでもない」
「んなこたぁないっしょ。冬休み嫌なことあった? ん? 話してみ? それともなにも聞かずにこのあてしのナイスバデーで慰めてやろうか?」
「……ハン」
確かにスタイルは悪くない。身長の割りに胸も出てるしね。
けど、彼は極上を知ってしまっているのでなびくはずもなく。そもそも普段からこの絡みなので本気にするわけもないってね。
「は、鼻で笑いやがったなこの童貞が!」
「大声で変なこと言わないでよっ! それも教室で!」
ここまではいつも通り。でも、そのあとの反応が違う。
「……言ってろ」
「ん? え、ちょっと……」
それを彼女が見逃すはずもない。こっちでも勘は良いんだよ。この子。
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