第541話

「はぁ……はぁ……」

 彼女の頭の左右に手をついて、幾度目かを終えた頃。

 本来数時間、数日、数週間、数ヵ月とかけて消費していくはずのをこの二日どころか数十分を二日にかいで果て尽くし、彼は満身創痍。

 息は当然荒いし、汗は大量に吹き出てるし、腰も尻もアレにも痛みが走り、頭の奥がチリチリと熱くなっている。正直もう限界だろうね。いや、よくもったほうだよ。

(ま、マジでヤバイ。まだまだできそうな気もするけどこれ以上やったら死にそ……。でも、このまま死ねたらすげぇ幸せかも)

 血迷った考えが頭をよぎるも、諸々全ては彼女次第。

 なので続けるか否か伺い立てるように目を合わせていると。

「お疲れさま。よう頑張ったね」

「は、はい……ぁ」

 優しく頬を撫でながらお許しが出る。

 まだ続ける覚悟はしていたものの、いざ終わりでも良いと言われると緊張の糸も切れる。

 彼の突っ張っていた手から力が抜けて、彼女に完全に体を預けてしまう。

「ぁ、す、すみません。すぐどきま――」

 早々に気づいてどこうとするも、彼女は背中と頭に手を回して抱きしめる。

 そして、優しく撫でながら耳元で――。

「うちはこのままが良いな」

「~~~~~~」

 こんなことを囁かれたら萎んだモノも張りを取り戻すというもの。

 まぁあっちは全く萎えちゃいないんだけれど。だって未だ……だし。

 さて、ともかくとして。彼女がのしかかられたままがご所望とあらば。彼も従うしかなく。されるがなすがまま。頭を撫でられる。

「~♪」

「……あ~。えっと~……」

「ん~?」

 けれど二分と持たず。気まずさに声が漏れる。

 心地は良いのだけど女性経験がほとんどないからね。仕方ない。

「あ~その……」

「どうしたの?」

 特に話す内容なんて決めていないのに声を漏らしてしまったものの、彼女が返事をしてしまっては続けないとという気持ちが出てくるが。

(え、えっと……。なんか、なんか言わなきゃ……)

「お、お姉さんはこういうこと慣れてるんですか? す、すごい誘い上手だったっていうか。落ち着いてる感じですけど」

 咄嗟に出たのがこれ。きっかけというか始まりで襲った男が聞くのかこれ。そんな内容ね。

 普通は呆れるものだけど、彼女はとっても寛容なので答えてくれる。

「ん~。慣れてるように見える? そら不思議やねぇ。男とこんなんしたことないんやけど」

「……え?」

「せやから初めてよ? 坊が」

「……」

 このとき、彼は改めて夢だと思っていた記憶を呼び起こす。

(そ、そういえば赤いのが散っていたような……ってことはつまり)

 文字通り蕾を裂いて花弁を散らしたってね。

 彼女を満足させたことに彼も満足感を覚えていたけれど。再び罪悪感が沸き上がり。

「あ」

 ガバっと体を勢いよく起こして、彼女に向かって土下座の姿勢。

「ほ、本当にすみませんでした!」

 急に離れてしまい少し寂しそうに唇を尖らせる彼女を余所に、彼は二日連続で平謝りするのであったー。

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