第540話
「じゃ、私は適当に時間潰しにいくから」
「……悪い」
「いいよ別に。おこづかいもくれたしね」
日中はそれなりに観光を楽しみつつ。時間を潰せそうなところを見つけた協力者と旅館の玄関に来ている二人。
今は二十時だけれど、治安の悪い国にも慣れているし、なにより表向きは彼がついてるから夜の外出も許されてるんだよね。
実際は出かけるのは彼女一人だけど。
「私は近くのカラオケに行ってるから。終わったらチャット入れといて。あと、長くても一時間くらいで話済ませてきてよ?」
「……わかってる」
「なんでちょっとどもったの……」
そりゃ男女の営み。それも複数ラウンドとなればねぇ? 一時間は短いさ。
ま、彼は夢では三、四回したなーくらいの感覚だけど。実際八回してるしなーっていう。
ふふ。実際の回数を聞いてたまげる彼が楽しみだぁ。
「まぁ良いけど。話、こじれたときも呼んで良いから。それじゃ、いってきまーす」
「お、おう。いってら」
そして夜の街へ消えていく。
その後、彼女の姿を見る者はいない――ってこともなく。普通にヒトカラして帰ってくる。
ちなみに年齢確認もされなかったよ。外国人に見られたのと……というか見られるように英語と片言で話したからね。発育も良いからあっさりとカラオケ店に入れたよ。
さて、協力者のほうの彼女は無難に時間を潰してくれていると。そうなればあとは彼だけだね。
「うし……いくか……」
気合を入れて、約束の場所へってね。
「ほんまに来たんやね」
「は、はい……」
「入り」
「お、お邪魔します……」
面をつける彼女に招かれて、部屋に入る。
緊張でカチコチ。そしてこれからすることを考えてあそ――んんっ。さすがに品がないか。
「ほんなら早速しよか。おいで?」
「ん……っく」
そう言って襖を開けると、寝室には布団が用意されていて。
彼女は面を捨て、浴衣をはだけさせながら布団へ誘う。
彼は喉を鳴らしながら布団まで近づいていく。
「し、失礼します」
けど、すぐに彼女に手をかけるわけでもなく。布団の上で相対しながら正座。
「ん~? どないしたん?」
「……っ!」
布団に手をついて前屈みになり、顔を覗いてくる。
でも、目は合わない。だってはだけてるんだもの。男の子なら目はそこに行くよね。
(ぶ、ブラしてない……)
ってことは直に見えているね。良かったね。良いモノ拝めて。
でも、眺めるだけで終われないよ。
彼女は彼の視線にも、緊張にも、動機にも、期待にも気づいてるんだから。
(ほんまにこの子は……本気でうちに感じてるんやね……)
寝ぼけてないからこそわかる純度の高い感情。
それに気づいた彼女もにわかに昂り、濡れて、盛る。
「……わかった」
「え、ちょ、ちょ……!?」
肩に手をかけて、畳んでいた足の腿とふくらはぎの隙間に手を入れて無理矢理布団に仰向けになるよう彼を寝かす。
そして、被さるように体を重ねて。両の手を頬に添える。
「どうしたらええかわからんのやろ? せやから少しだけその気にやる手伝いはしたるってだけ。年長者やしね。童の世話はせんと」
「……あ、ありがとう……ございます」
「ふふ。ええ子」
慈愛の帯びた眼差しと。温もりを携えた唇で解かされていく。
次第に緊張よりも欲望が秤を傾けるようになり、彼女の望む結果が訪れる。
昨夜よりも激しい一時を。彼は彼女に与えることができたとさ。
え? 詳細?
いや~それは……。
また別の機会で……ね?
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