第533話

(……………………良い夢見たなぁ~)

 目は開けず。けれど意識は覚醒した彼がまず思ったのは昨夜の出来事への感想。

 この思考から夢と思ってるのは明らかだけど。はてさて、このあとどうなるやら。

「……あれ?」

 今は朝方。午前四時。違和感を覚えて目を開くと、知らない部屋に疑問を浮かべる。

 旅行に来ているのはわかるけれど、その上で泊まってる部屋じゃないなってことね。

(違う部屋……だよな? 俺しかいないし。やたら広いし)

 襖から差し込む光で部屋の中は少しだけ見えるものの。襖の向こう側へはまだ意識が向かない。

 というのも。

(てか、なんかダルいな……。喉もめっちゃ渇いた。腰と膝も痛ぇし、なによりアソコが痛ぇ。寝てるときぶつけたか?)

 そりゃダルいだろうねぇ。全力で八回戦だもん。

 そりゃ喉も渇くだろうねぇ。そのあと風呂入ってんだもん。

 そりゃ痛いだろうねぇ。覆い被さってなりふり構わずあんだけ振れば。

 アソコに関しては運が悪ければ断裂とか、道からの出血もあり得るから痛い程度で済んで良かったと思うよ。

 毎日一回とかなら健康にも良いんだけれど。一日で複数は負担になるんだよ人間は。ライオンとかハーレムを作る動物ならまだしもね。

 って感じで寝起きかつ昨夜のアレが影響して頭が回ってないのさ。

 ヤり過ぎでバカになることはほぼほぼないんだけど、水分足りないと脳が縮んだりするからそっちが影響してるだろうさ。

(とりあえず……どうしよ……。起きた方が……良いよな。部屋に戻らないとだし――)

「目ぇ覚めた? ほんならこっちおいで」

「……!?」

 突然襖の向こうから声をかけられてビクリと体を震わせる。

 しかもその声が女性で、日波ははでも結嶺おさななじみでもないならば驚きもひとしお。

(だ、誰だ……? こんな声知らな……いや、聞いたことあるような……あ)

 ここで彼は気づく。夢の中にいた美女と声が似てることに。

 まぁ、同一人物なんだけれどね。彼は知る由もないけど。

(ま、まさか……。俺、とんでもないことやらかしたりして……る? い、いやまだどっからどこまでが夢かもわかんないし……。あ、あれだ! 寝ぼけて廊下とかで寝てるところを助けてくれたーとかもあり得るかもだし。…………………………そういうの全部含めて確かめないと)

 体を起こして襖に手をかける。

「……ごくり」

 生唾を飲み、冷や汗を垂らして襖を開けるとそこには――。

「あ、おはよ。よう眠れた?」

「――――」

 お猪口を持って振り返る鬼がいた。

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