第482話

「って、冷静に考えてやっぱりおかしくないですか?」

「そうだな」

 そっか~冷静になって気づいちゃったかぁ~。でも時はすでにお寿司なんだよ。

「まずですね……」

「うんうん」

「ふうーにこっち見ないでください!」

「あぶぶぶぶぶ」

 冷静になっての行動が人を沈めるってどういうことよ?

 苦しかないし、見られたくない気持ちもわかるけど、普通に人としてどうかと思うぞおい。

「ぷはっ」

「ぷぅぁ~……」

 顔をあげてまず見えたのは双丘コロナ。犬かきをやめて背泳ぎに――。

「あぶぶぶぶぶ」

「どこ見てるんですかっ。相手が子供だからって遠慮なしに!」

 いや兄だからって遠慮なしに沈める方はどうなの?

 てか、コロナに関しては今さらだし。さっきとか普通に洗ってたろうがよ。一切隠さずさ。

「ぷはっ」

「クハハハハ。仲のよろしいことで」

「微笑ましいねぇ~」

「そう見えるかお前ら?」

 ただただ俺が沈められてるだけなんだけど? 一般的な感性を考えたら一概に理不尽とは言えなくとも。やっちゃダメだからねこれ。

「まったく。本当に兄様は変わられましたね。色々な意味で」

「すんごい含みを感じる言い方だな?」

「含んでますから」

 でしょうね。

「クーハッハ。我が父よ。さすがに叔母上には強く出れないようだな~?」

「仕方ないだろう。身内とはそういうものだ」

 あっちはあっちでまるで親子のようにしつつ子役はなめた面して親役はしゃーないって顔を――。

「あぶぶぶぶぶ」

「だから不躾に女性の体を見ない! 普段どうしてるか知りませんけどね!」

 じゃあそのあたり確認してから沈めてくれねぇかな?

 安易に自分を正しいと思っちゃダメだぞ~。

「ぷはっ。結嶺お前ねぇ~……」

「なんですか? 言いたいことでも?」

「……いや、良いです」

 ここで俺が言い負かしたところでだし。結嶺の考えはある意味で普通だし。なにより俺お兄ちゃんなので。年長者として務めってことで引いてやるさ。

「内心言い訳してるのが見え見えだな。そんなに妹相手はやりづらいか?」

「お前んとこと違って複雑な家庭なもんで」

「こっち基準なら我らのが複雑と思うがね。躊躇いもなく娘を孕まそうとするのは異常だろう? こちらでは普通。兄弟姉妹で日常的に席を奪い合うのもな――お? 良いことを思い付いた」

 な~んかいやらしい顔をしながら立ち上が――。

「あぶぶぶぶぶ」

「だから見ない!」

「ぷはっ! いや、リリンは別に良くね?」

 もうヤってる仲だし。

「教育に悪いので」

「いや別にあいつらは……」

「なにか?」

「いや別になんでも」

 ここで言い負かしても以下略。

「クハハ。まぁ貴様らはそのまま戯れてるといい。我は少しの間行くところができた。まぁ数分で終わる用事だがな」

 って言ってゲートに消えていきやがった。

 ……全裸のまま行くのかよ。

「……ほな、私たちも出よか? 久々の兄妹水入らずお楽しみに」

「なるほど。そういうことなら。ほら行くぞコロナ」

「や~」

「コロ姉よ。夜一緒に寝るのをおねだりしやすくするためにも一旦引いといたほうが良いかもだよ?」

「むぅ~」

「ん? いやそれはちょっと」

「だったら私たちも上がりま――」

「というわけでごゆるりと」

 ……いっちまった。

「「……」」

 この状況、どうするよ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る