第477話

「なんにせよ、だ」

 灰音の話題から早く離れたいのかな。ちょっと強めの語気になってる。

 話題を変えたいのは俺も同意。

「そういったことをお偉いさんとやらは隠しているし、他にも色々と隠している。都合が悪いんだろうな」

「……都合とは?」

「そこまではまだわからんが、紅緒も探りをいれてるよ。療養が済めばアレクサンドラも加わるだろ。アレは同時期進化シンクロニシティを諸に感じたようだし、何故だかと感じていたようだしな」

「シンクロニシティ? そうしなきゃって……」

人類ひとちくしょうの中でも一部空間歪曲が使えたろう? それが突如使用者が増えたそうだ。つまり、貴様らは生物の進化の真っ只中にいるわけだ。結嶺よ。お前は恐らくその同時期進化シンクロニシティの先駆け。あの頃にはもう動いていたんだな。正確にはもっと前からだが」

「……」

「そして、貴様らをより強く。より先へ進化すすませようとしている上位知的生命体と、それを阻む対抗上位概念体がいるんだが」

「ちょっと待った」

「あん?」

 急に話でかくなりすぎてない? ちょっとついていけなくなってきたんだけど?

「まったく……」

 って顔から察してくれたようでなにより。

「ようは紅緒と政府は対立しているってことだよ。裏でな。紅緒と政府の上にそれぞれ黒幕もいるが、そいつらはとりあえずどうでもいい。そのうち顔も出すだろ」

「……そう、か」

 ってことはもうリリンたちは会ってるんだろうな。その黒幕さんと。俺の知らないところで。

 まったくいつのまにそんな話が進んでるんだよ……。

「で、だ。軽く触れた程度だが、これらの話を聞いて貴様はどうする?」

「私……ですか?」

「紅緒につくか、政府につくか。人間をやめさせた我らにつくか、才の居場所たる召喚魔法への差別を促す政府につくかだよ」

「……」

「先も話した通り、召喚魔法というのはリスクもあるがリターンもデカい。それを応用しての貴様の能力の向上も見込める。が、政府につくならば貴様ならば安泰だろうよ。一番の厄介者は消えているしな」

「そう……でしょうね」

 一番の厄介者。親父のことだな。

 たしかにあの親父もいなくなって、すでにそれなりのポストが用意されてる結嶺なら今のまま過ごしていれば将来は約束されてるだろうね。

 俺からすればこのまま平穏に過ごしてほしいところではあるけど。

「愚問ですね。リリンさん」

「ほう? 答えは決まっていると」

「えぇ」

「え? マジで?」

「マジ。ですよ」

 表情を見るに、たしかに悩みを抱えてるようには見えない。

 それでいて、吹っ切れたような。そんなニュアンスを感じる。

「私にとって一番大事なのは家族あにですから。また離れるようなことにはなりたくありません。それに、政府あちらについてもこれ以上がないのならそっちのが困りますから」

「だろうな。あくまで平和なままなら未来は決まったも同然。しかし、近年中には荒れるだろうよ」

「それは紅緒学園長と政府が敵対するからですか?」

「……いんや。その上のヤツらが動くだろうからだ」

「そうですか。なら尚更力をつけれるほうにいかざるを得ませんね」

「じゃあ紅緒にはそう伝えておこう。一人良いのが加わったとな。今年あたりからは頻繁にそれと顔を合わせられるぞ」

「それは良いことを聞きました」

 俺を抜きにしてトントン拍子に話が進む……。

「ということで兄様。少々気は早いですけど、来年度からよろしくお願いします」

「あ、うん。よろしく」

 他に気の利いたことを言いたいのは山々なんだけど。

 あいにくと今の俺にそんな余裕なんてあるはずもなく。

 というか、あとでリリンとカナラから色々聞き出さないと。

 ……答えてくれっかなぁ~。

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