第474話

「あれま、煙魔母えんマッマったらあっさり暴露してくれちゃってまぁ~。お茶目でかーわいい」

 なんもしなくても可愛いからお茶目かますのやめてもらえねぇかな? 元々うめぇもんにマヨぶっかけるくらいには余計だからよ。

「よいしょっと」

「ぉぉぅ……」

 コロナがぶるるっと震えると、もう隠れても意味ないもんで灰音がコロナの背中から這いずり出てきたわ。

 お陰でコロナの着物は着崩れちまうし灰音も着物着てたみたいでこいつのも崩れちまってる。

 ……視界誤魔化せるのに何故そこに入ってたお前?

「直してくれ父よ」

「うるさい。まずあっちなんとかしろ」

「えー」

 もう灰音は隠れてない。そして俺に寄りかかってたコロナの背中から出てきたわけだから必然というべきか俺の膝の上にいる。からの父呼び。

 隠れてないってことは結嶺にも見えてるわけで。

「やっぱりあのときのは聞き間違いではなかったと? いや本当艶眞さんに聞いて良かったです正直に答えてくれたので」

 だから俺には尋ねなかったんだなお前。

 ところでなんで急に箸を手に持ったか説明してほしいんだよね。

 まぁ、投げるんだろうけど。

「……ッ」

 案の定やりやがった。行儀悪いぞ。

 先端がちゃんとこっち向いててしかも真っ直ぐ目に飛んでくるところはさすがと我が妹ながら称賛しつつ。その程度の速度じゃああっさりキャッチでき――。

「……!? はぐっ!」

 急に加速して取ろうとした指をすり抜けてきたのは驚いたけど、なんとか口でキャッチできて一安心。

 い、いや、驚きはしたもののカラクリはわかってる。

 あいつ……空間短縮かけてタイミングずらしてきやがった……!

ほ、ほまへあぶないだろお、お前危ないだろ!?」

 マナを感知できる俺だから惨事に至らなかっただけで普通の人間なら目やられてるからな!? そこんとこわかってんの!?

「兄様ならこのくらいなんとかするとわかってますから」

「……全幅の信頼どうも」

 妹にそこまで信じてもらえて嬉しいよ。だからって箸を目に向かって投げるのは頂けねぇからなお前ぇ?

「全幅はありませんよ今のところ。その子の説明次第です」

 さいですか。それじゃあ頑張って言い訳しないとですね。

「ほにゅ?」

 こんの灰音クソガキ……ぶってんじゃねぇぞこの野郎。お前のせいでいらない言い訳考えることになったんだぞ!

「あ~……。えぇ~っと~……。坊、もしかして言ったらあかんやつやった?」

「……そうね」

 カナラに口止めしなかったらどちらにせよこうなってただろうね。

 結局、俺の浅はかさがいけなかったんだ。色々な意味で。

「あむあむ……んく。ちょーど良い機会だしそいつをこっちに引き入れたら良いんじゃないか? なぁ? 煙魔」

「は、はぁ。そう……やね。私もそれがええと思うわ。結嶺ちゃんなら紅緒あのこからも声かかったと思うし」

「「……?」」

 リリンとカナラはなんの話をしてんだろ?

 とりあえずわかったような面してる灰音はあとでとっちめてやる。

 幼児虐待なんぼのもんじゃい。

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