第458話

「じゃ、そういうことでその辺りの管理は紅緒に任せさせてもらうよ」

「……わかりました。……はぁ」

 ため息をつく紅緒。元々たくさんの仕事を抱えている人物なのでため息の一つでもつきたくなるだろう。

 そんな紅緒を見て、アノンは一肌脱ぐことにする。

「上手くやれば私が掌握しきれていない上層部による情報操作もなんとかできるから。アレはシステムの影響だろうね。私の召喚魔法テコ入れに対する処置ってとこか」

「……! そう……ですか。そういう」

 召喚魔法師への冷遇。世間からの不当な評価を長年嘆いていた紅緒からすればようやく巡ってきたイメージ改善の機会といったところ。これはやる気を出さざるを得ない。

「あ、ついでにあっちもどうにかしてもらおうかな? あれはむしろオーガスタの管轄だろうけど」

「私かい?」

 今度はネスに向き直るアノン。そして口にされた言葉は確かにネスの琴線に触れる内容モノ

「数十年前から政府は秘密裏に色んな生物を混ぜはじめてね。簡単に言えば合成獣キメラを作る実験かな。君の研究資料の一部から派生したんだよ。これに関してはたぶん私とシステム両方の影響からの暴走バグだ。ま、どうでも良いから放置しているけど」

「へぇ……! それはそれは!」

「……」

 目をかっぴらいて俄然興味が出てきたネスに対し、紅緒はなにか考えている様子。

「どうしたんだい紅緒レディ? なにか気に障ることでもあったのかい?」

「……いえ、今はあまりないんですが、数年前まで召喚魔法師が失踪する事件もありまして。まさかな……と」

「さすが勘が良いね。それは政府手動だよ。今は

「……!? そう、ですか……」

「何せもう完成してしまったからね。今は実用実験と、人外の回収がメインだよ」

「……」

 元々政府に対して良い感情はなかった。けれど敵対するつもりがあったわけではない。

 色々と働きかけてまともになってくれたら良いと、そう思っていた。

 でも、今の話が本当だとしたら。政府は未来ある子供から全てを奪ったことになる。それは、紅緒にとって越えてはいけない一線。

 それを越えられたら、代わりの場所を用意するだけじゃ収まりがつかない。

 だから――。

「あとで……その話を詳しくお願いします……」

「良いだろう」

 だから紅緒は、完全に解体することを望む。

 現政府を。

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