第439話

「じゃ、まぁ~行くか。どこ行くか知らねぇけど」

「あ、うん。まずは電車乗らなあかんのよそれから――」

 へぇ~。結構遠出するんだな。

 文句があるわけじゃないけどね。そも誘った俺が無計画なわけだし。ここで文句はさすがに……な。

「それじゃあ改めて行く……前に。ほら」

「へ?」

「手」

「……う、うん」

 そんなおずおず握っちゃって。普段添い寝だってしてるのに今さら手繋ぐのそんな緊張するもんかね。

 まぁ、俺は俺で喜ぶのわかっててやってんだけどさ。視線は集めるだろうけどそこはそれ。打算もあるわけよ。

「へへ……♪」

 とびっきりの美人がこんなに嬉しそうにしてるのに水差そうなんてのはそういないだろうからな。いるとしても相当なバカだけだろうよ。

「ふへ……ふへへ……。ぼ~んのおてて~……♪」

「……」

 ……いつもなら結構受けというか。来てから対応することのが多いんだけど。今回は注意しとくかね。

 周りの人間の動きくらいならちょっと意識すればわかるし。カナラに近づくようなら特にあからさまだろうしな。

 感知次第即影で邪魔するだけの簡単なお仕事だわ。

 ってことでしゅっぱーつ。



 あっという間に目的地についちまった。

 よくよく考えたら行き先も特に人が集まるとこでもないし向かう人間もいないわけだから当たり前か。

 電車内で俺も調べたけど地元にはそこそこ知られてる穴場って感じだったし。実際来てみると寂れてるわけじゃないけどかといってごみごみしてない良い塩梅バランスの場所。

 もしも都心とかだったら……うん。絶対酷いことになってたな。

 久茂井先輩。ナイスチョイスっす。ここなら俺でもカナラのご機嫌取りやすそう!

「お~てて~♪ お~てて~♪ ふふふ♪」

 おっと。すでに上機嫌だった。

 電車内でもずーっと静かに一時間飽きることなく俺の手ニギニギしてたけども。

 てかよ。

「もう電車降りたんだからしゃべっても良いだろ」

「……はっ!? ほうか!」

「気づくの遅ぇよ。どんだけ夢中になってたんだよ。そんな大したもんでもないだろうに」

「そ、そないなことあらへんよ。それに、どんなか~より。誰のかの~のかがよっぽど大事やし」

 なる……ほど?

 つまりどんな面とかでも中身が大事的なやつか。

 ふむ。だがあえて言わせてもらうと。俺はカナラの性格も顔も体もついでに匂いも好きだから贅沢を言わせてもらえればフルセットでお願いしたい。どれか欠けるのは個人的にごめん被る。

「あ、でも坊の手があかんとかそういうわけやないよ? すべすべやしふにふにやし。やのに骨はしっかりしてはって男らしゅう感じが……ええんよ」

 ってことはお前も俺と同じで誰かのとか中身とかじゃ満足できないわけだ。

 なら許す!

 ……なにを?

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