第412話
と、まぁ順調にE組が快進撃を続ける中。唯一才だけは試合でまともに戦ってはいない。故に、まともな映像も公開されることもない。
……一般には。
「んふふふ。
某国のホテルの一室で、ひたすら非公開の試合映像ループしながら眺める白髪に白みがかった瞳を持つ男が一人。
映像はかなり壊れていてほんの十数秒足らずしかなく、ハッキリ言ってなにが映っているかわからない。
けれど男は何時間も何時間も見続けている。
「可憐だ。それにこの白さ。私に近い力を持っている。んふふ。一方的に破棄などと嘗めた真似をしてくれる輩を見てやろうと思ったら……。これはまた運命的だ」
音もなく。動きもなく。熱と高密度のマナにより数十秒しかデータが残らなかったにも関わらず。男を魅了する一人の少女の映像。
そう。男はずっと才と御伽の試合の一部。中止してからの映像を見ている。
コロナの姿を……眺めている。
「っと。そろそろあちらに戻そうか」
男は呟くと、今度は画像に切り替える。
学園所有のデータバンクから無理を言って取り寄せた一つの画像。コロナの画像に。
試合開始前のコロナの顔がアップされた動画の一枚の切り抜きだ。
「んふふふふふ。やはりこちらの姿も可憐だな。
人に近い契約者はある程度の身体データは取られる。
といっても、試合動画からの算出ではあるけれど。現代の科学力ならば正確な値も割り出せよう。
「身長は137ほど。140未満は固い。150以下ならば喜ばしいと思ってたがここまでとは行幸。バストも84と悪くない。実に悪くない」
目を細めてコロナの胸を凝視する。
この男の趣味は少しばかり特殊だ。
まず最低条件として自分より15以上若くないと性的対象にならない。ちなみに彼は38才。
そしてこれも最低条件。豊満なバストでないと目に入れる気にもならない。
最後に、これはできればで良いのだが。先も口にしたように低身長であること。150以下が理想。
けれど目の前には理想を越える理想がいる。理想の異性が映っている。
絵じゃない。空想じゃない。実物とは言い難いが実在する。
「んふ。んふふふふ。んふふふふふふっ」
ならば昂っても致し方ない。
だが一番彼を昂らせる理由は――。
「んふふふふふふふふ! んふふふふふふふふふふ!」
コロナが白いこと。より白くなったこと。白い炎を使っていること。
現代において白とは神の色。神誓魔法を使う人間は総じて白くなる。
そしてこの男――クレマン・デュアメルはその己にもある力に固執している。
だから昂ってしまう。好みの女が固執している力を持っていたらどうしても。
しかも、このクレマンという男。近々日本に行って才に落とし前をつけるつもりだった。
けれど内容はまだ決めていなかったのだけれど。コロナの存在を知ってからは特に迷うこともなく決めてしまった。決めてしまえたんだ。
「
卑しい笑み。垂れかける唾液。そして膨らむ下半身。
悪とは言えない。彼はただ自分の持つ権利を行使するだけなのだから。
異常性癖者とも言えない。体型の趣味は人それぞれだし、コロナは人間単位で言えば二十歳。成人済みなのだから。第一に低身長が好みであって幼児が好みというわけじゃないのだから。
……まぁ、自分より15は下でないと性的対象にならないというのは少々擁護しがたいけれど。
なんにせよ。才も。コロナも。厄介な男に目をつけられたことには変わらない。
(まぁ、まずはイベントが終わってからでないと発てないがね。あの小娘め。面倒な
ふととある女性の顔が浮かぶとすぐに萎えてしまう。
ふわふわの金髪で、アラサーだけど落ち着きのない。レックスと恐れられてる魔帝の女。
(ふん。この場にいなくても癪に障る。あ~やめようやめよう。あんな女の顔よりも……そうだ。また明日あのガキの試合があったはず。もしかしたら
目の前のコロナの画像を見ながら思いを馳せる。
彼の機嫌は海原よりも気まぐれに波打つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます