第406話

「坊!」

 お。外に出たら早速カナラが駆け寄ってきた。

 そういえば外で待機して備えてたんだったっけか。

 心配そうな面して俺の腕の中で寝てるコロナを見てるよ。

「ころちゃんは?」

「もう心配ねぇよ」

 肉体面はリリンの血が細胞レベルで変質させていってるし、存在なかみも俺たちが現在進行形で管理してるからな。

 このまま続けてればいずれは良くなっていくはず。

 コロナが対応できなかった理由の一つが内臓の損傷。それも脳みそまでかなりヤられてたからったのもありそうなんだよ。

 だから脳みそも直って、かつ俺たちに近づけばマナの扱い方もわかってくるはず。

 今でもある程度はできてるけど、足りない。現に溢れさせた結果がアレだし。

 ともかく、コロナはきっともう安全だろう。

 って旨をカナラに伝えると――。

「ほうか。なら良かった。ほんまに……良かった……」

 涙目になって胸を撫で下ろしちゃってまぁ。

 カナラは母性が強いから特に子供っぽいコロナが心配だったんだろう。

 ……あれ? ところで母性といえば。

「そういやロッテは?」

 リリンは駆けつけて、そんときカナラが外で控えてるのは聞いたけど。ロッテの話は聞いてない。

 あいつ今なにやってんの?

「アレは自宅待機」

「……なんで?」

 リリンが出張るような結構深刻な事件だったんですけど?

「アレは膂力はともかくマナの扱いはからっきしだからな。まぁ一つだけ特技はあるが」

 あの空気抵抗やらを緩める程度の歪曲か。

 そんであとは身体能力にモノ言わせて分身っていう荒業。

 すごいんだけど、たしかにそれ以外のマナの使い方は見たことがないな……。

「今回はいても意味がないのでな。言い含めて置いてきた」

「って、言い方から察するについてこようとはしてたんだな?」

「ほんに心苦しかったんよ? ろぅちゃんが一等ころちゃんのこと大事にしてはったし……」

 てか一番世話してるのがあいつ。

 目立たないとこで仕事してくれる縁の下の力持ち。

 それなのにお留守番とかさすがに可哀想だな。

「じゃあ早く帰って安心させてやんなきゃな」

「そうね」

「珍しく狼狽えていたしな……いや、珍しくはないか」

 そうね。あいつは叩けば響くタイプだから頻繁に俺にいじられては良いリアクションしてるよ。

 だから別に帰ったときカナラみたく胸を撫で下ろしても別に驚きは――。



「うぉぉおぉぉぉおおぉぉおっ! ころなぁぁぁあ! よがっだぁ! ぶじでよがっだぁ!!!」

 び、ビックリしたぁ!?

 顔面汗と涙と鼻水とヨダレでビショビショどころかデロデロじゃねぇか!

「お、おいお前ど、どうしたよマジで」

「ら、らって……。ごろなのげはいがわっで……。いそいでいごうどじだらりりんがぐんなっで……」

「お、おう。まずは泣き止んでほしいな?」

 ほとんど小学生みたいになってんぞお前。見た目高身長お姉さんだから違和感半端ないって。

「ほら、お鼻ちーんしよな?」

「ぶびぃぃぃぃい!」

 と、ここでカナラがなだめに入ったか。

 いやぁ良かった。お前がいてくれて。

 俺一人だったらもう小一時間対応に困ってたかもしんない。

 リリンとかもういつものごとく食い物取り出してるし。

 あのよ。お前が来んなって言ったからロッテちゃんは泣いてるんです。ちゃんと謝んなさい! 先生怒りますよ!?

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