第388話

 初戦は一年生による激闘が繰り広げられ、加えてA組とE組でも互角の戦いができることが証明されてしまった。

 そのあとすぐにAとEの組み合わせがあった場合。

 しかもそれが格差が酷い二年三年の上級生で組まれた場合。

 悲惨な結果になり、惨めな思いをさせることになるのは必定。

 だから、一ヶ所マッチングしたらしばらくはズラしたほうが他の生徒には優しいのだが……。

「なのになぁ~んですぐ組むかね?」

 とある部室で作業中に嘆く声をあげるのが一人。

(((またか)))

 今日一日だけでも五回は聞かされてるもので、他の部員たちはまたかと思いつつも相手は部長なので答えていく。

「仕方ないですよ部長。決まっちゃんたんですから」

「というかそんなに嫌なら断れば良かったのに。参加表明した自業自得じゃないですか」

「そういうわけにいくまいて皆の衆。他のクラスメイトからの圧がすんごいんだから圧が。皆のところも似たようなものでしょう?」

「「「……」」」

 部長ともう一人以外は選抜対象外なので必然的に圧をかけた全員が顔を背ける。

 そんな部員たちを部長は白けた目で見ていく。

「ほぉらやっぱり。皆圧かけてるんだぁ~。いーけないんだーいけないんだー。部長にチクってやろ」

「「「そらあんたじゃい」」」

 総ツッコミを受けてもなんのその。

 そもそもツッコミが来るのを見越した発言なので堪えるわけもない。

「まぁでも。皆の言う通り決まったもんは仕方ないし。せめて同学年のはやるよ」

「さっすが部長。かっくぃ~」

「我々はそんな部長の背中に憧れていますよ」

「心から尊敬し惚れる一歩手前です」

「皆……おべっか言う前に手を動かさんかい手を」

「「「あんたが一番作業滞ってんだよ(怒)」」」

「それはそう。それじゃ嘆くのはここまでにして、やるかぁ!」

 気を取り直して縫製に入る面々。

 時代は代わり服もほとんどオートマチックで作れるようにはなったが、それは企業の話。

 学生の身分の彼女たちはまだまだ手作業に頼らざるを得ない。

 けれど熱心な彼女たちは自らの欲望を満たすために一心不乱に縫い進めていく。

 ……ただ一人を除いて。

(あ~やっぱ鬱だわぁ~。初戦がリリオさんとか運悪すぎてハゲそう)

 被服部からリーグ戦に出るのは二名。

 幽霊部員の天良寺才と、部長である久茂井佐子だけだ。

 そして、その久茂井佐子の初戦の相手の名は王酉おうとり里桜りお

 三年A組。現学園トップである。

(たまたまなんだろうけど。初戦AとEの組み合わせ多発させんな運営ボケカスぅ~)

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