第378話

「相変わらず嫌いですか? この目。と言っても、最近また色が落ちましたけど。やっぱり彼の影響ですかね?」

「あぁ。だが奴以外にも種として先に進む者が増えてきたことも関係してるだろう。この星の人間のほとんどが程度の差はあれど強くなっていると思って良い」

「まぁ私は目の色落ち以外変わってませんけどね」

「よく言う」

「事実ですよ」

(お前とあんなに深く混ざったというのに。誤魔化せるわけないだろ。いやそもそもお前は他のとは決定的に異質だが)

 セッコは八千葉が特異な存在だと知っている。

 力はともかく。希少さで言えば神誓魔法師以上に特別な存在だと。

 むしろ、八千葉よりもよくわかっているくらいだ。

「この目のせいでたくさん目立ってきたし。少しは落ち着きたいです」

「だったらやめるなり負けるなりしたら良い。演技は得意だろう?」

「演技が得意なんて思ったことはありませんよ。あと約束があるので目立つこと自体は諦めてます」

「夕美斗の時、あまり驚いてなかったように思うが?」

「皆と同じくらいは驚いてましたよ。ただ夕美斗ちゃんは積極性があるし。天良寺くんも私たちと一緒にいるからちょっと深く首を突っ込んでもおかしくないかなぁ~と思ったけど」

「たしかにあいつのせいでお前たち全員が上の次元に行きつつあるな。それは種としては良いことだろう。お前たちがお前たちという種を押し上げる存在となる。ハハ。露見すればこの上なく目立つな」

「やってくれましたねぇ! 天良寺くん!」

 再び八千葉は枕に顔を埋めて唸り始める。

 自分からこうなるよう誘導したとはいえまたこの光景が始まると冷たい目を向けるセッコ。

 見たくないなら言わなきゃ良かったのに。

「しかし、つくづくあいつはイカれてるな。知り合いも含めて」

「……私のこと、バレてますよね。絶対」

「当然。俺たちの中をいじくったのはあの女だからな。それに、終わった後お前を見る目が変わっていた。もし、また会うことになったら警戒しとくと良い」

「……私たちのせいで人類が進化っていうかネスさんのせいで変わってると言えるのではこれ」

 八千葉の言うことは的を射ている。

 ネスは何度も才たちに手助けという名の介入をし、人間をやめさせるきっかけを作った人間と言っても良い。

 しかしながら彼女は夕美斗の変質を抑え、八千葉たちを人間に納まる程度の変化しか与えていない。

 パッと見マッドサイエンティストだがまだ人の心があるのかもしれない。

 ……それか、また別の思惑が――。

「考えても仕方ないですけどね。私、ちょっと目の色がおかしいだけの一般人ですし。あ、あと召喚魔法師の中じゃちょっとマナの扱いが上手いかも」

「才やジュリアナや夕美斗に比べたらまだまだだけどな 」

「一人除いて人間じゃないのと比べないでください」

「夕美斗とそんな変わらないだろうお前。むしろ、なだけお前のが希有だ」

「色とマナの感覚がちょっと人と違うだけですよ。正直、魔法師としての才能はあまりないです」

「マナの質が並みだからな。もしマナに影響があれば――」

「やめてください。そんなもしかしてが起きてたら本当に目立っちゃう!」

(そういう問題じゃないだろう。それにそのもしかしてが起き始めてること。気づいているだろうに)

 八千葉はマナに少しだけ敏感だ。

 だから当然わかっている。

 自分のマナの密度が上がっていることを。 

(警戒しろと言ったが、もう既に手を加えられてるかもな)

 真実はわからない。

 しかし、不気味な魔女の顔を思い浮かべずにはいられないセッコであった。

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