第365話
「今日は大事な連絡事項がある」
いつものようにホームルームまで適当にすごし、ホームルームもいつも通り適当に片付けるのかなと思ったら、どうやら今日は特別な何かがある様子。
あ、いや、いつも厳しい面だったわ。
「12月より、各クラスから五人選抜してのリーグ戦がある。代わりに演習は来年度までない。五名を除き、すでに実技の成績はつけられてると思え」
にわかにざわつく教室内。
そりゃそうだろう。普通成績が決まるのは12月が過ぎてからか、遅くとも3月あたり。それがもう決まってると言われたら驚きもする。
しかも、このクラスのヤツらは大半がサボったり棄権をしまくってる。見ずとも散々な結果は明白だ。
「な、なんでこの時期にはもう成績が決まるって教えてくれなかったんですか!?」
「そ、そうですよ! こんなに早く決まるなら私たちだって……」
「だって? だってなんだ? E組の時点でほとんど諦めて、鼓舞してやっても一部を除き一週間も持たなかったお前らが頑張ったとでも? バカが。してこなかった分際で文句垂れるな。時間の無駄だ」
小咲野先生は一度言葉を切って、全員を見渡す。
その目は少しばかり、いつもより厳しい。
「良いかこの愚か者共。魔法師になりたいと思ってこの学園に来たのはお前らだ。しかも落ちこぼれの恥知らずと世間で言われてる召喚魔法師でも良いと妥協したのもお前らだ。そして、落ちこぼれの中のさらに落ちこぼれであるE組に決まって諦めたのもお前ら。生き残る術を教えてやってもサボったのもお前ら。目に見えて結果を出したヤツらがいても怠り続けたのもお前らだ。全部自分達で決めたことだろう? 今更ガタガタうるさいんだよ。後悔なんて一人でしてろ。文句は自分に言え。無駄に時間を食ってやってきた人間の邪魔をするな。うっとうしい」
「「「……」」」
教室内で文句を言おうとするヤツはもういない。
そもそも初日以来まともに文句を言えた人間もそういないけどな。
だって、先生の言ってること筋が通ってるからな。
それに先生は怖い。その怖い先生に図星を指されて口答えができるほど肝が据わってる人間がこのクラスにいるとは思えないわ。
「もう意見のある者はいないな? いても後にしろ。続ける。リーグ戦はA~Eグループに分かれて試合をする。そこでは上級生とも戦えるから勉強するには良い機会だ。それになにより。良い成績を残すか、上手くアピールできれば――クラス替えも検討される」
「「「!!?」」」
今度はまた別の驚きだ。
てか俺も驚いた。
だって、一度そのクラスになったら移動なんてないと思ってたし。
仮に、Aクラスになれたなら少しは明るい将来も見えてくるかもしれないんだ。そら落ちこぼれのE組連中からしたら喉から手が出るほどほしい権利だろう。
「ほう~。なかなかおもろそ……ん? あれ? でも五人?」
伊鶴が呟く。何か疑問に思ってるようだ。
察するに、いつ面が六人だから誰が選ばれてるのか気になってるんだろう。
ふむ。たしかに俺もちょっと気になるかも。
「参加者はAリーグに天良寺」
と、どうやら俺たちの疑問もすぐに解決してくれるようだ。
「Bリーグに賀古治」
「よっしゃ!」
「Cリーグに和宮内」
「……はい」
「Dリーグにパンサー」
「イエス!」
「Eリーグに宍戸司」
「あ、はーい」
カナラは省かれてるか。
まぁこいつは最初から対象外らしいから不思議じゃない。
となると、いつもの面子からはぶられたのは八千葉ってことになるのか。
「以上。今ならまだ棄権も受け付けるが? 一応補欠も決めてあるが、参加しない場合は早めに言え」
いやいや。いつ面どころか他のクラスの連中も含めてこんな機会を逃すヤツがいるわけ。
「先生。私は辞退させていただきたい」
と思ってたんだけど。いた。いたわ。
しかも超意外なヤツが早々にリタイア。
八千葉がやめるとかならまだわかる。なんだかんだ消極的なヤツだし。
でも最初こそ不調だったけど、壁を越えてからはめちゃめちゃ積極的だった夕美斗がやめるのは意外すぎる。
俺だけじゃなく、夕美斗の性格を知る人間全員が驚いて目が飛び出しそうだ。
……ミケに至っては落ちそうだからもしもの時のために影使えるようにして備えといてやろう。
「良いのか? 和宮内」
「はい。今回のリーグ戦。私は辞退します」
今一度確認する先生にハッキリと答える。
その言葉には、一切の迷いも感じられなかった。
「そうか。ではEリーグに
「うぇ!? あ、えっと……は、はい……」
改めて選ばれたことに未だ驚いてる八千葉。
たぶんだけど、お前以外は当然の流れだと思ってるぞ。
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