第366話

「きゃあああああああああ!? なんか可愛いの増えてるううううううう!?」

「うるっさい!」

「あだ!?」

 昼になり、コロナと灰音を回収して伊鶴たちに合流すると伊鶴が叫ぶ。

 当然ながら多美にしばかれるまでがワンセット。

「いやだってさ!? うぼ!?」

「話はご飯取り行ってから」

「う、うっす……」



「それで? 詳しく聞かせてもらおうか」

 全員自分の食事を準備し終え、さぁ食べようって時に伊鶴から待ったがかかる。

 あのよ……。これ説明しなきゃダメか?

「新しい契約者。以上。いただきます」

「「「いただきまーす」」」

「じゃ、なーい!」

 伊鶴以外の連中はそんなこったろうと思ったと言わんばかりに食べ始める。

 飯に手をつけてないのは伊鶴だけだ。

「どこで! どう! 連れてきたか言えよぉ~! そんなポンポン可愛い契約者増やしやがってよぉ! コツ教えろよバーロー!」

 そんなこと言われても。

 俺も別に意図して増やしてるわけじゃないぞ?

 リリンは通過儀礼。ロッテは流れ。コロナは縁があったからか干渉されてだし。

 カナラ……はバレてないけど。こいつも縁が引き寄せた感じ。

 灰音もハイネから卵もらってそれが孵ったみたいなもんだからな~。

 どれもこれも別に俺が積極的に喚び出したんじゃない。ほぼほぼ事故だそ。

「別に良いじゃないか。才は出会うべくして彼女たちと出会ったんだよ」

「そうね。あんたにも運命の出会いがあったでしょ? ハウがいるじゃん。ハウが」

「そうだけど! そうなんだけど! さっちゃんばっかり釈然としないんだって!」

 お前の気持ちとかすこずるどうでも良いんだけど。

 とか言ったらまたヒートアップするんだろうなぁ……。

 仕方ない。ここは人柱を立てようじゃないか。

「ほらこれ持ってて良いから落ち着け」

「え」

 そう言って差し出したるは灰音。

 お前のお目当てはこいつだろ?

 だったらこいつを差し出せば解決するわけだ。

 灰音も物分かりは良いし、喜んで伊鶴に抱かれにいくだろう。

「あぶぅ~……」

 不満そうに見つめてるが気にしない。

 別に良いだろ。

 俺に雑に扱われたりコロナに噛まれるよか伊鶴のが大事にしてくれるさ。

 なんなら向こうの子になっちゃいなさい。

「一応赤ん坊だから。気を付けろよ?」

「う、うん……うん……」

 いつもの威勢はどこへやら。おずおずと手を伸ばして灰音を受けとる。

「あう~。きゃっきゃ♪」

「お、おうふ……」

 伊鶴にしては珍しく。緊張した面持ちで灰音を優しく抱えてる。

 灰音もサービスが良いみたいで顔ペタペタ触ったり適度にちょっかいかけてるわ。

 その調子で伊鶴を抑え込んでおけ。

 俺はその隙にコロナの世話を――。

「はぐはぐ」

 って思ったら勝手に食ってる。

 お、お前、いつの間になにも言わずとも一人で食べれるように……。

 灰音という妹? ができたせいかな?

 なんにしても喜ばしい成長だ。このまますくすく育てよ。

「にゃーにゃー。ん」

「……はいはい」

 と思った矢先に汚れた口を拭けと仰せか。

 はぁ……。まぁ良いけど。一つだけ言わせてほしい。

「上げて落とすのは今後控えるようにしてくれよ?」

「ん? んー!」

 こいつぁ返事だけは良いんだから。返事だけは。

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