第339話
家の中に入ると、目に入るのは外観と変わらないと言うか相も変わらずというべきか。これといって何もないな。
ホコリとかはないけど。それ以外の手入れのされていない廊下。ヒビのある窓が数毎。よくわからん骨董品もチラホラ。
元々古い家で、先祖代々色々手は加えてきたらしいけど。今のご当主様がアレだから寂れる一方のようで。
でも、なんだろうな。昔より寂れてるつっても、ほとんど変わってない。
だからなんだろうな。懐かしく感じる。こんな良い思い出なんて欠片もない家でも。懐かしい。
……肉体レベルを人間に戻してるせいかな?
いけないいけない。こんな気持ちを抱えてたらいくら俺でも躊躇しちまう。これから俺は――。
――この家も。
とある部屋の前。ここに来るのは……初めてだな。
たぶん母さんも入ったことないと思う。結嶺なら……ありそう。なんだかんだ期待されてたし。
この部屋はある意味俺たちにとって特別な場所。でも俺は意識的にここを避けていた。ここにすんでるときから。
最初は入れてほしいと思ってたかもしれない。でも、すぐにそんな気持ちは消えてたろうな。
だってここは親父の仕事部屋だから。
あんなのと関わる時間なんて。可能性なんて。少ない方が良いだろ?
ま、今は自分から会いに行こうとしてるんですけどねぇー。
ってことで。おじゃま~。
「……!? なんだ!? 誰だお前は!? どうやって入った!?」
ドアを開けて中に入ると、驚いたんだろう。勢い良く立ち上がって不審者を見るような顔で大声を張り上げる。
デスクの上には大昔の魔法書。手にはペン。復元でもしてたのか?
顔を見てみると、心なしかシワが増えてるかも。あんま覚えてないし。年月を考えりゃそらそうだろって感じたけど。
でも、さすがに驚いたな。
相変わらずの高圧的な人間だとか。ドアを開けた瞬間大声を上げられたからじゃない。
俺の顔を見て。ハッキリ言ったからだよ。誰だお前はってな。
反射で言ったのかもしれないし、大分背も伸びたからわからなかったってのもあるかもしれない。
でもさ? きっちり顔を見て誰って言われ。この男の性格を考えると……な。そもそも覚えてないんだろうなって。結論に至るわな。
まぁ、一応確認してやるけど。
「天良寺才。あんたの息子だよ。忘れたか?」
「……?
はい決定。感動的な再会とかそういうの期待してなかったし。変わってないんだろうなぁ~とは思ってたけどここまでとはって感じ。
完全にいらないね。情も。手加減も。
「あークソ! どいつもこいつもクソの役にも立たん! いらぬことを思い出させやがってこの不審者! さっさと素性を明かせ!」
安心しろクソ親父。今日をもってそのイライラから解放してやるよ。
その代わり、廃れた余生を送るか。プライドが許さず自害するかになるだろうがな。
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