第312話
「「……」」
部屋のど真ん中でぶっ倒れてる生き物が二つ。
さっきまで悶え苦しんでたが今は沈黙を保ってるってことは……。
「終わりッスか?」
「一応はね。あとは回復後試すだけだね。相手は任せるよ」
「え~……」
「坊やが連れてきたんでしょうが。それくらいやんなよ」
「はいはい。わかってますよ~」
俺もこの人がやった改造手術でどれだけ夕美斗が強くなったか気になるしな。肌で直接感じるのも悪くないだろ。
ま、その前にまずは起きるのを待たなきゃなんだけどな。
ってことで時間もあることだし、知恵者に意見でも聞いてみるかな。
「ところで相談があるんですが」
「たった今終わったろ?」
「いや夕美斗じゃなく俺個人で」
「それはまた珍し……くはないか」
俺がマナを使えるようになったキッカケはあんただからな。
お陰でチート染みた強さになったよ。
ゆーて俺より強いチーターがいすぎて無双感皆無だけど。
「それで? 今度はどんな困り事だい? なんとなく察しはつくけど――」
「うちの親父がちょっと問題を起こしたっていうか。その相談に乗ってほしいんですけど」
「あ、全然違った」
「……」
当てが外れたなぁ~って顔するのは良いんだけどさ……。あんたがそんな顔したら俺が不安になるんだが?
え? また俺の知らないとこで俺の身におかしなことでも起こってるの?
「どうしたの? 続きをどうぞ」
……めちゃめちゃ気になるし聞きたいのは山々なんだが、今はとりあえず親父をなんとかする方法を優先しよう。
この件が終わったら問いただしてやるわい。
「親父ちょっとイカれてまして。性格がねじ曲がってて人格破綻してて自己中で選民意識もあって自分が優秀と勘違いしてるんですが。そんな男を屈服させる方法が知りたいんですけど」
「散々な言いようだね?」
「その程度には色々されてるんで」
今思えばほぼ虐待どころか普通に虐待だからなアレ。
「ふ~むぅ……。そういうプライドの高い人物は絶対に負けたくない類いの相手、状況、勝負のジャンルがあると思うんだよね? それを見つけたら良いんじゃない?」
「……ほう」
なるほど。じゃあその線で考えるとすると……。
相手はまぁ……役立たずの落ちこぼれの俺。これは問題なく用意できる。本人だし。
ジャンルは当然魔法だろうな。魔法の研究に没頭してる男だし。
あの男、成果は全然らしいけど自信は失ってないんだよなぁ~。面白いことに。
残るは状況だけど……これがピンと来ないな。
俺相手に魔法での勝負ってだけでよさそうな気もするけど……。他でもないネスさんの言うことだし、必要なんだろうが……。現状まったく浮かばない……。
「ん~……」
「曖昧な質問に曖昧に答えただけだし。そんな悩まなくても良いんじゃないかい? 人間相手であれば、今の坊やなら力ずくでどーとでもできるでしょう?」
「……法律ってご存じです? 力ずくで解決しようとしたらお巡りさんのお世話になるんすわ」
「あ、本当? 私がいた頃に治安維持組織なんてなかったからさ~」
嘘つけ。わからなかったらお巡りさんって単語=警察=治安維持組織って図式は成り立たないだろうが。明らかお巡りさんが何か分かって答えてんじゃんか。
「ま、ヒントは与えたつもりだよ。あとは自分で見つけて自分でなんとかしてどうぞ」
「……そうさせていただきます」
ちょっとボケかまされたけど、返事をもらっただけ良しとしよう。
……つかまずあの男が俺の話を聞くとは思えないから、交渉または勝負の場に立つ材料を集めないとじゃん。うっかりしてたわぁ~。
帰ったらその辺の根回しも始めよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます