1年生 11月+α

第311話

「「~~~~~~~~っ!」」

「あははははははは! 苦しいかい!? だろうねだろうね! 存在の融解と混合と解離を繰り返してるんだ! 苦しいのは必然だよ!」

「……」

 薄暗い屋敷のさらに薄暗い部屋の中で声になってない悲鳴を上げる女子と馬。笑いながら二人の存在をぐちゃぐちゃにかき回すマッドウィッチ。そしてそれを呆れ面で眺める俺。

 何故こんなことになっているのか。話は数分前に遡る。

 ほわほわほわわ~ん。



「私を明日までに強くしてください!」

「うん良いよ」

「承諾早いな。悩んでくださいよ」

 開口一番土下座と共に強くしてくれもおかしいけど瞬時に承るのもおかしいよ。

「え? だって強くなりたいんだよね?」

「はい」

「もちろん明日までってことは手段選ばなくても良いんだよね? 普通無理なんだから無茶しないとだし」

「もちろんです!」

「じゃあ問題ないじゃないか。そこな僕ちゃんは何か文句があるのかい? 当人達が良いと言ってるのにたかだか仲介役の君が」

 そう言われるとなんも言い返せないけどさ……。

 まぁ元々任せようとは思ってたし。夕美斗も止めたところで聞かないだろうし。

 連れてきた時点でやることなんて決まってる。

「ないですよ。ないない。ありません~」

「ならわざわざ突っかからなくても良いじゃないか」

「あんた相手だと素直に頼みたくないんですよ」

「おや? それは好意を持った異性に意地悪しちゃう的な男子のアレかな?」

「ぶん殴ってやろうか」

冗談ジョークだよ冗談ジョーク。そう怒らないでよ。か弱いおばちゃんなんだから」

 どこがか弱いんだよ……。

 前まではとんでも変人止まりだったけど、学園長を肌で感じてからあんたの存在の重厚さもわかるようになってんだからな?

 なんなら学園長並みにヤバイ戦闘力あるんじゃねぇのあんた。

「さてさて。無駄話はこのくらいにしようか。明日までってことは時間がないわけで。ちゃっちゃと取り掛からないと回復の時間が取れなくなる」

 つまり回復を要する何かをするってことですねわかる。

 夕美斗も気づいたのか冷や汗垂らしてるよ。

「……言っとくけど。もう逃げられないぞ」

「わ、わかってる。覚悟はできてる」

 あ、そ。じゃあ甘んじてくたばってこい。



「まずこれから君らに起こることは控え目に言って拷問。言葉を選ばなきゃ生き地獄になるわけなんだけど」

 部屋を移動し、夕美斗の契約者ニスニルを喚ばせてこれからやることの説明を始めるネスさん。

 言葉選んでも選ばなくてもどっちも同じ意味じゃねぇか。

 ようは死にかけるか死にたくなることするってことだろ。

「まぁ簡単に言えば君と契約者の魂を溶かしては混ぜて離しては戻すをループさせるわけなんだけど」

「は、はぁ……」

「これを意識を残したまま意識に感覚として刻まれながらやるんだけど」

「え」

「これが恐らく五体を引き裂かれて、それでも神経が繋がってて、混ぜられるのを繰り返すわけで」

「……」

「ま、常人の精神力なら死ぬよね普通。うん」

「……」

 言葉が出ねぇ。

 脅しでもなんでもなく拷問じゃねぇか。

 俺が前にやった時でさえキツかったけど。その比じゃねぇぞ。

 ……だけど、その分――。

「安心してよ。消費するのは二人分の精神力だし。私がショック死しないよう調整するし。結果も超短期でついてくる。君も召喚魔法師の端くれならわかるだろう? 存在を混ぜるってことがどれだけの結果をもたらすか」

「……!?」

 夕美斗は恐らく伊鶴のアレを思い出してるな?

 なんつったかな……限界同調オーバーシンクロだっけ?

 アレができるようになれば確かに今の夕美斗とは一線を画すどこの騒ぎじゃないな。それこそ強さの次元が変わる。

「今だと簡易融合とでも言われてるかな? 二つの存在を完全に一つとなる手前。99%を限界値として曖昧にし、同じモノになる反則技――存在イグザステンス融合フュージョン。これから君が会得する技術さ」

「存在の……融合……」

 これから地獄を見ることがわかっているのに、光を見たような面だな。

 その光が消えないと良いな。下手すらなくなるぞ。目から永久にな。

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