第310話
結嶺をなだめ、帰らせたは良いんだが……。
あの男をどう止めるかが問題だな。
さてさて。どうしたものか――。
「才君」
「ん?」
案を練りつつ廊下を歩いてると夕美斗が話しかけてくる。
そういやもう当番が交代してる時間か。
つまり、今カナラは手が離せない。やったぜ。一人でゆっくり考えられる可能性が高いぞ。
「ちょっと相談というか……頼みがあるんだが……良いかな?」
「……」
前言撤回。一人では無理そう。
「で、話って?」
とりあえず俺の部屋に連れ込むことに。いかがわしい意味ではなく。単に人がいないとこに来たかっただけ。
さっき囲まれたもんでちょっと疲れたんだよ……。だから女連れ込むの許してくれ。どうせリリンとロッテとコロナもいるし。一人増えたとこで大差ないだろ。
さて、わざわざ俺を訪ねてきたってことは結構厄介な問題だろうと推測するんだが。いったい何用だお前は。
「明日の午後までに……私を強くしてほしい……劇的な程に……」
「はぁ~?」
予想外というかなんというか。結構な無理難題を言ってきてないかお前。
俺なら手段を選ばなきゃ可能ではあるけど、普通の人間だと無理だろ~……。
「無理は承知してる……。でもあの子に勝つには無理をしなくちゃいけないんだ……」
「あの子? 誰?」
「妹だ」
お前も妹関連か……。
そういや前にチラッと因縁があるようなことを聞いたような聞いてないような?
少なくとも詳しい内容は知らないから変わらねぇけど。
「とりあえずもう少し詳しくだな……」
「さっき妹と会って、明日の午後試合をすることになった」
……いやなんだよその急展開。全然説明足りねぇよ。
ただ……。
「つまり相手が強いんだけど鍛える時間がないからドーピングがしたいみたいな感じか」
「……言い方は悪いが大体あってる」
で、そんなことを俺に相談した理由は俺がちょくちょく人間離れした成長をしてるからなんだろうな。
夕美斗よ。もしそう考えてるなら大きな勘違いだ。
俺は人間離れした成長をしてるんじゃなくて人間やめてんだわ。だからこんなに強くなれたんだよ。
つまり俺と同じ方法とか考えてるなら――。
「悪いけど、俺はお前の期待にそえないぞ」
「そ、そこをなんとか!」
「無理なものは無理」
「無理は承知! だから頼む!」
「……」
俺断ってるよね? 日本語通じてんのかこいつ?
「お前……いい加減諦め――」
「まぁそう言うな」
いたちごっこを端で聞いて嫌気が差したのかリリンが割って入ってくる。
なんだよ。お前なんか解決策あんのかよ。
「あいつの所に連れてってやれば良いだろう。あいつなら対して変わらぬまま弄くり回すだろうよ」
「おい……それって……」
その言い回しで誰か察したよ。
俺の知る一般人が一番関わっちゃいけない生物ナンバーワンなんだが?
あの人のとこに行って一晩で強くなりたいとか言ったら人間やめ人間になるんじゃないだろうか。
「そ、その人に会えば一晩で強くしてもらえるのか!?」
「過程はともかく結果は出るだろうな」
「じゃ、じゃあ是非に紹介してほしい!」
希望を見つけたキラキラした目で見つめるんじゃない。良い人だけどイカれてんだからよあの人。
「頼む!」
「……はぁ。わかったよ」
「……! ありがとう!」
礼なんて言うなよ。
単にお前がしつこくてあの人に丸投げするだけなんだから。
お前が頼んだんだから人間やめさせられても後で俺に文句言うなよ?
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