遥か高みの召喚魔帝

第290話

「す、すごい……。あ、あれ、ふ、フランク・ブルーノだろ？」

「さっきアレクサンドラ・ロキシーも歩いてたし、学園長は刃羽霧紅緒だし……。魔帝いすぎだろ……」

「どうなってんだこの学園……」

　いや本当にね。

　世界的要人が三人も集まってるってどないやねん。

　しかも見るからに全員普段から護衛とかつけないし。

　そりゃ世界最強戦力だから必要ないのもわかるけども。

「はっはっは！　すまないね目立ってしまって」

「いや、こいつらがいるからあんま変わらないですよ。むしろあんたがいるお陰で良い虫除けになってるよ」

「あんたって……。天良寺君少しは気を遣っていただいても……」

「私自身は虫（ノミ）に悩まされてるけどなあっはっは！」

「……はぁ～」

　俺らがお互い軽口を叩いてるのを見てため息をこぼすジュリアナ。

　おいおい。別に落ち込むようなことじゃないだろ？　仲良さげな感じで良いじゃんか。

　ま、俺も怒らないのわかってて失礼な口叩いてたからそもそも空気悪くなることはねぇよ。

　……それより。

「今どこ向かってるんだ？」

「……っ」

　先導するジュリアナに訪ねると、一瞬体をビクリと硬直させた。

　普通の人間なら見逃す程度のラグだけど、あいにくと今お前の近くにいるのは人間じゃないぞー。二つの意味で。

「なんだいジュリ。言ってなかったのかい？　僕たちはこれから――」

「さぁ、急ぎましょう！」

　遮るな。今の絶対わざとだろ。

「あ、なるほど。サプライズか」

　違うぞゴリラ。こいつはただ隠してるだけだ。

　サプライズなんて他人を喜ばせる意図は絶対にない。

　だって今そいつ冷や汗かいてるからな！

「どこに向かってんだよ」

「時間は待ってはくれないので！」

「会話をしろよ」

「……」

　無視はやめろって。ちょっと傷ついたわ。

　んのやろぉ……。テメェがそのつもりなら俺にも考えがあるぞ。

「あ、コロナあそこに屋台が見えるぞー。食い物があるぞー。お前腹減ってたろ。なんか買ってどっかで座りながらゆっくり食うかぁ～」

「え！？」

「……！　えっぷし！」

　くしゃみで返事すな。

「はらはら。はいころちゃん。お鼻ちーんしてぇ～」

　おいどっから出したそのハンカチ。チラッと煙が見えたぞおい。

「……！」

　ゴリラが目見開いて驚いてんじゃねぇか。

　お前追求されたときちゃんと言い訳できるんだろうな？

「ぶぶー！」

　っておいコロナ。きったねぇ音立ててんじゃないよ。もう少しおしとやかに鼻かめ。

　無理なことはわかってるけどな！

　って、んなことはどうでも良い。

　別にコロナの腹を満たすのが目的でも、鼻水を拭くのが目的でもない。

　いや、鼻水は率先して処理してほしいところだが。

　ともかくとして、俺はジュリアナの目的地を聞きたいだけ。

　大体の目星はついてるけど、一応本人の口から聞いておきたい。

「……え、A組の訓練場です」

「……はぁ」

　わかっていたけど、実際聞くと萎えるな。その場所。

　お前、俺が行くの嫌がったからってこんな面倒なことしやがって。　

「……食い物買っていくから奢れよ」

「……はい」

　せめてこれくらいしてもらわないと割りに合わねぇ。

　破産させてやるから覚悟しときやがれ。